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====殺害予告をしてくる人々===
====殺害予告をしてくる人々====
私がインターネット上で誹謗中傷されるようになって数ヵ月が経っても、私への誹謗中傷・罵詈雑言は1日も止まることなく続いていた。ところが2012年の11月ごろから、毛色の違う投稿がインターネット掲示板になされるようになった。「殺害予告」である。
私がインターネット上で誹謗中傷されるようになって数ヵ月が経っても、私への誹謗中傷・罵詈雑言は1日も止まることなく続いていた。ところが2012年の11月ごろから、毛色の違う投稿がインターネット掲示板になされるようになった。「殺害予告」である。
殺害予告の投稿者Aは、当時高校生で、都内にある印刷会社経営者の息子であった。未成年であったため、父親に連絡を取ったところ、「息子がそのようなことをするはずがない」と回答された。
殺害予告の投稿者Aは、当時高校生で、都内にある印刷会社経営者の息子であった。未成年であったため、父親に連絡を取ったところ、「息子がそのようなことをするはずがない」と回答された。

2017年12月20日 (水) 00:00時点における版

炎上弁護士「私のもとに殺害予告が来るまで」(わたし - さつがいよこく - く - )とは「現代ビジネス(講談社)」上に唐澤貴洋によって寄稿 された一連の炎上に対する告白文である。

概要

プロフィール

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弁護士
唐澤 貴洋
TAKAHIRO KARASAWA

PERSON
インターネット上の法律問題への対応に特化した法律事務所クロスに所属。誹謗中傷の問題は、相談を含めて過去に数千件対応している。近時は、誹謗中傷の問題 について、被害者救済の観点から新たな法整備を主張している。

炎上弁護士が実名告白「私に殺害予告が来るまで」~男はオフィスに突然やってきた~

自宅を特定された日

2016年1月4日、38回目の誕生日を迎えたその日、自宅のポストに1通のレターパックが入っていた。嫌な予感がした。当時(今も)私は、とある理由で炎上していたのだ。 ネットで誹謗中傷を繰り返す人々(以下では、「ネット加害者」と呼ぶ)から、日々追われていた。「ついに、自宅を特定されたのか」目の前が真っ暗になった。 これまでも、実家の住所が晒されたり、街を歩いているところを盗撮されたりなどのプライバシー侵害やいやがらせを受けてきた。ついには、住むところさえも危険に晒されるようになったのかと絶望的な気持ちになった。 不安に駆られながら、インターネットで自分の名前を検索した。すると、私が住んでいるマンション名を誰かが掲示板に書き込んでいる。 しかし、部屋番号まではわからなかったようだ。たしかに、レターパックには部屋番号が書かれていない。おそらくいつも配達にくる郵便局員の人が、気を利かせて私のポストに入れてくれたのだろう。 レターパックは、配達記録が残るため、配達されたことが投函者にはわかる。そうなると私の住所に確信を持った不審者が、マンションにやってくるかもしれない。心臓の鼓動が早くなる。 「周りの人に迷惑だ。もうここにはいられない。今すぐ家を出よう」トランクに荷物を詰め、逃げるようにマンションを後にした。 部屋番号まではバレていないものの、いつマンションに不審者がやってくるかわからない。すぐに郵便局へ移転届を出し、ポストにガムテープを貼った。

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ひとまず、新居に引っ越すまではホテルに滞在することにした。その日は、眠ることができなかった。人生が走馬灯のごとく思い返された。 なぜ私の住所がバレたのか。インターネット上に分散している投稿を分析していくと、私が卒業した大学のOB名簿が情報源のようだ。大学には、その旨のクレームを入れたが、広報部署からの報告はなかった。 以前、私に対する殺害予告が同大学のIPアドレスからなされたこともあった。大学のWi-Fiから書き込んだのだろうか。このことも、同大学の広報部署に連絡をしたが、いまだに返事はない。

私が炎上したワケ

なぜ炎上したのか。私はもともと、弁護士としてインターネット上で誹謗中傷を受けている方の弁護を担当し、誹謗中傷記事の削除等を行ってきた。 2012年3月に「2ちゃんねる」に違法性のある書き込みの削除請求をしたところ、当時の掲示板の仕組みにより、私の名前が知られるところとなった。それをきっかけに私の行動がネット加害者に知られ、今度は私自身が誹謗中傷されるようになったのだ。 ネット加害者に知られた瞬間は今でも覚えている。まず、掲示板上で私の事務所のホームページやTwitterアカウントが探し当てられ、揶揄されだした。 当時、私の事務所は誹謗中傷・名誉毀損問題をメインの分野として仕事をしていたので、名誉毀損と関わりがある政治家、芸能人、著名人などをTwitterでフォローしていた。 そこで私がアイドルをフォローしていたことが問題視されていた。あいつはアイドルオタクだ、と。 アイドルオタクだと何がいけないのだろうか。ちなみに、私自身はアイドルについては詳しくない。私の趣味は映画鑑賞と本を読むことで、アイドルは専門外の話だった。にもかかわらず、ネット加害者は私が「ドルオタ」であるとのレッテルを貼り付けることで、ある種の高揚感を味わっているようだった。 私は、インターネット上でついた小さな火が炎となり、燃え上がりだしているのを見て、大変な恐怖を感じた。

病む、完全に病む

これまで、炎上した弁護士はいない。弁護士というのは対外的な信用で仕事をする。炎上するということは、その信用が外形的に失われていくことを意味する。 私がターゲットにされたのは、当時一人で弱小事務所を運営していたことも関係があろう。立場の弱い人は、どんなに叩いても大丈夫なのだという考えが、ネット加害者にあったのだと思う。 その後、誹謗中傷は悪質を極め、私が犯罪者であるとか、詐欺師だとか、ありとあらゆる罵詈雑言がインターネット上でなされた。 同期の弁護士の中では、早くに独立していた私には、どうやったらお客様から仕事をいただけるのかを考えるのが最大の課題であった。そこで私が考えたのは、インターネットからの集客であった。しかし、炎上した結果、私の名前や事務所名で検索すると誹謗中傷が大量に表示されるようになり仕事が成り立たなくなった。

炎上すると完全に病む

炎上すると精神状態はどうなるのか。ネットで過剰に誹謗中傷をされると、インターネットで何を言われているのか、何が起こっているかが気になり、不安で眠れなくなる。 また、頻繁に悪夢を見るようになった。感情の起伏がなくなり、夜はアルコールがないと眠れない。当時、心療内科に行けば、なにかしらの診断がされたのではないかと思う。 また、「インターネットでの投稿を、周りの人が読んでいるのではないだろうか」、「外で私の悪口を書いている人に会うかもしれない」と周囲の目が気になり、人混みに出ることを極力避けるようになった。 ポイントカードを利用することもやめた。ポイントカードの作成時に、不用意に個人情報を外部に出せば、リスクコントロールできないと思ったからだ。後に、私と何ら関係のない同姓同名の方の住所がインターネット上に出たことがある。 その際の投稿では、「とある企業のデータベースで検索したところ」と書かれていた。企業のデータベースにおける情報管理がどこまで厳密にされているかの保証はない。 「炎上すると日常生活が完全に破壊される」——。弁護士として、初めて“被害者”側に回って感じたことだ。誹謗中傷はその後も止まることなく連日続いている。

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殺害予告をしてくる人々

私がインターネット上で誹謗中傷されるようになって数ヵ月が経っても、私への誹謗中傷・罵詈雑言は1日も止まることなく続いていた。ところが2012年の11月ごろから、毛色の違う投稿がインターネット掲示板になされるようになった。「殺害予告」である。 殺害予告の投稿者Aは、当時高校生で、都内にある印刷会社経営者の息子であった。未成年であったため、父親に連絡を取ったところ、「息子がそのようなことをするはずがない」と回答された。 Aは反省するどころか、私がAの自宅に送付した内容証明をインターネットに投稿し挑発を続けた。その後もAからの誹謗中傷は続いていた。親は、子供のインターネット上での振る舞いについて全く管理監督できていない。これは他の未成年の加害者にも共通していた。 Aの殺害予告がきっかけとなり、私に対する殺害予告が流行となってしまった。現実社会で目の前の人に殺害を予告するというのは、冗談を除けば、相当な胆力がなければできない。もちろん、刑事事件になる可能性もある。にもかかわらず、殺害予告が簡単にできてしまうのは、インターネットが事実上、無法地帯と化しているからである。 その後、多数の殺害予告が私に対してなされた。警察がある事件に関連して発表したときは、約95万件ということであった。 カッターナイフが送られてくることも複数回あった(なお、2016年11月29日に、私宛にカッターナイフを送付し殺害予告をした者については、別件で逮捕され、取り調べを受ける中で私に対しての犯行を自供し、1年8ヵ月の実刑判決が言い渡された)。 殺害予告をされるようになってから、生活はさらに一変した。

犯人を特定!しかし…

行動パターンが同じだと狙われやすいと考え、毎日、歩く道を変えた。後ろに人がいないか、常に気にするようになった。不審だと思う人物がいれば、目視し行動を確認した上で、先に行かせた。また、エレベーターでは、不審だと思った人物とは一緒に乗らないようにした。 殺害予告については、警察に相談をさせていただいた。警察には、その後10件以上も立件をしていただき、助けられた。だが、当時はまだインターネット上の投稿が犯罪になるという認識が薄かったと思う。 IPアドレスとは何か、どうすればインターネット上の犯人を特定できるのかを警察署で一生懸命伝えた。 殺害予告を受け始めて1年半がたった2014年5月、ようやく一人の逮捕者が出た。20歳の派遣社員の男性Bだ。彼とは、現実でもインターネット上でも一切関わったことがない。 なぜ、Bは何ら関係のない人間に対して殺害予告をしたのか。逮捕時の様子は報道され、Bの顔を見ることができたが、幼く寂しそうな眼をしていた。Bには、更生し、平和な生活を送ってほしいと強く願っている。

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犯人はこう特定する

殺害予告犯Bが逮捕されてから、少しの間は殺害予告が収まった。しかし、ネット加害者は、次なる罪を犯した。爆破予告である。爆破予告は、私の事務所を爆破するというものから、私の名前を騙り(いわゆる「成りすまし」)、地方自治体等に爆破予告するというものまであった。 爆破予告も、連日続いた。爆破予告されたある日、事務所に行くと、事務所の入った建物の前に、東京キー局のテレビカメラのクルーがいた。犯行予告時刻に、私の事務所が爆破されないかを撮影するために来たとのことだった。 もし、本当に私の事務所が爆破されたとしたら、その爆風で影響を受けるであろう場所に、無防備にテレビカメラが設置されていた。 自ら死地に行く者はいない。つまり、彼らはニュースのネタとして素材を取りに来ていたのだ。その意図を感じた私は、テレビ局に抗議の電話を入れたが、犯行予告時刻を過ぎるまでテレビカメラが取り除かれることはなかった。 爆破予告犯の一人に青年Cがいた。彼を意識したのは、当初は殺害予告犯としてだった。 殺害予告犯Bが逮捕されて殺害予告が減っている中で、再び殺害予告がなされたので、私は犯人を特定すべく、動き出していた。

ようやく逮捕したものの

犯行予告等の権利侵害行為を行った犯人の身元を特定するのは、所在が海外であったり、技術的に難しいということを除けば、法律上は可能になっている。具体的には「プロバイダ責任制限法」という法律を利用する。 同法律では、権利侵害を受けた者が発信者を特定したい旨をプロバイダ(インターネット接続業者)に請求した場合、プロバイダは発信者に対して、発信者特定に役立つ情報(住所、氏名、メールアドレスなど)を請求者に公開していいかの照会をかける。 この法律にもとづき、私はプロバイダに発信者特定に役立つ情報を開示してほしいと請求をかけた。その結果、Cのもとへ意見照会がなされた。 するとCは、あろうことかこの意見照会を、インターネット上に公開したのだ。Cが晒した文書の中には、うかつにもCの名前が記載されている文書もあった。 その後のCの行動は異常を極めた。爆破予告を繰り返すだけでなく、深夜に私の事務所へやって来て、事務所が入っている建物に貼ってある住居表示板をはがすといった嫌がらせを行った。 さらにCは、自らテレビの取材を受け、顔半分をマスクで隠して露出を行うようになり、犯行を劇場化していった。 Cはその後ようやく逮捕された。Cが逮捕されるまでは、想像を絶する誹謗中傷・罵詈雑言が毎日されていたが、Cの逮捕後は一部収まった。 Cは刑事裁判で執行猶予付きの有罪判決(懲役2年半、保護観察付執行猶予4年)を受けることとなった。 しかし、執行猶予期間中に、埼玉のとある駅の公衆電話から地方自治体に対して同じく爆破予告を行い、再度逮捕され、再び有罪判決を受けることになった。 年末の埼玉県の閑散とした駅で、一人公衆電話にいたCを想像すると、とても悲しい気持ちになる。Cは、これから数年間服役することになる。Cの更生を心から願っている。

成りすましも後を絶たない

ある日、私の成りすましが自治体に対して爆破予告をしていたので、その自治体の警察官が突然事務所にやって来た。私は、私に対して今まで起こっていることをすべて説明し、これが悪質な嫌がらせであることを説明した。 その際、警察官からは「通信ログ」を提供してほしいとの申し出があった。それは、パソコンを提供することなのか、どのような方法で何のデータを提供することなのか、明確でないままの申し出であった。 私は「通信ログの提供の方法を明確に教えてもらえれば、協力のしようがあるが、現状だとどう協力すればいいかわからない」と述べて、お帰りいただいた。 このような申し出は、私の通信ログを調べる必要があると警察署が判断したということに他ならない。 捜査の初期で、多くの可能性を探る中の一つの手段にすぎないのであろうが、このような申し出は、ともすると、私が疑いの対象に入っているのではないかとの懸念を持たせるに至り、この種の捜査の難しさを感じた。 個々の警察署では、どのように捜査すればいいのか試行錯誤を続けているのだろう。 ここまで私の身に起きた炎上の実態を記してきた。後編では目に見えにくい炎上加害者の素顔を明かす。私が直接対峙した15歳の少年は、なぜ会ったこともない私に嫌がらせをしたのか。本人に直接話を聞いた。
(20日公開の後編につづく)

出典・註釈


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唐澤貴洋
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