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恒心文庫:私の身体でいっぱいオナニーして

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

耳を打つ衣擦れの音。
その音を聞きながら、当職は唾をゴクリとのんだ。唾は硬くしこって乾いた喉にへばりついている。水が欲しいわけではない。ただ落ち着かないので、ひたすら唾を飲み込んでいるのだ。
薄暗い部屋。意識も視界も輪郭も、何もかもが曖昧になる空間に当職は佇んでいる。どれほどの時間が経ったのだろう。もはや時計の針は虚空を刻み、当職の意識を無意味に急かす。均等に鳴り響く時計の音の間を縫う様に、あるいは重なる様に、当職の心臓が脈を打つ。心臓と針が互いを追いかけ回していて、一向に心は落ち着かない。
そうしてただただ体を強張らせる当職を、まるで包み込むかの様に、その衣擦れの音は聞こえているのだ。
当職はぼんやりとした薄暗闇、自身の前方に広がるそこに、何か白いものを見ていた。暗闇の中でなお白く、しかし同時にその暗闇に溶けてしまいそうな、ぼんやりとした輪郭。それが身をくねらせて、細やかな繊維の擦れ合う音を奏でているのだ。
目を凝らせば見えてくる。熱が、吐息が、打ち震える肉が。当職はもはや唾を飲み込むのも、息をするのも忘れたまま、目を懸命に暗闇へと見開いていた。
それは洋だった。まるで年を重ねた樹木の様に静謐さをたたえるその様は、どこか浮世離れした印象を当職に与えていた。目も慣れない当職の目の前で、洋は自身の寝間着、それを柔く絞り込んでいる帯に手をかけた。
あ~れ~おだいかんさま~
暗闇の中、まるで天女の様に舞う父。ひらひらと舞う衣が、当職の鼻先を誘うかの様にかすめていく。
父の、かすれた、香の様な匂いがした。
気づけば、当職は歩いていた。まるで誘われるかの様に、夢見心地で、足先をつけては離していく。舞い踊る父、すがるように追いかける当職。そうしているうちにも父の寝間着ははだけ、やがてあらわになる裸体。その時、当職は追いついた。目が合う二人。抱き合う親子。ヒクつく肛門、ビクつくぺにす。ならばぶちこまねばなるまい。織姫と彦星の逢瀬など生ぬるい、引いてはひっくり返るアナルにほとばしるミルキーウェイ。当職の視界に無数の星が散る。天の川が全てを押し流していく。
溺れゆく二人は幸せだった。彼らの願いは聞き届けられたのだから。

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