恒心文庫:月と雲
本文
月は雲にすっかり隠され、近くの街灯もチラチラと明滅を繰り返すばかりである。
「怖がらないでいいナリよ」
小太りの男が低い声で囁く。
「お願いだからやめてください……」
それにこたえるように、制服をきた女の子がつぶやく。
男は何も言わず女の子のスカートをめくり、子どもらしいパンツに手をかける。
「お願い、お願いだから」
「黙るナリ」
乱雑とした車内に男の声が低く鋭く響く。制服は恐怖で小刻みに震えていた。
男はパンツを脱がせる。しかし、全部は脱がせないで女の子の足の先にかけ残す。
男は屹立したイチモツを女の子の入り口にあてがった。
「気持ちよくしてやるナリよ」
男は一気に挿入した。
「やっ……」
女の子は声にならない悲鳴をあげる
「今ここで悲鳴をあげたら誰かが気づくナリ。ここで気づかれてもいいナリか?」
そういうと男は笑い腰を動かし始めた。はじめはゆっくり、次第にはやく。
車内には男の息遣いだけが響く。
「い、いくナリよ!」
射精。収まりきらなかった大量の精子が溢れ出る。
「満足ナリか?」
不気味に笑みを浮かべると男は満足したのか服を着はじめた。
着替え終わると車から降りる。
「また頼むナリ、長谷川さん」
男はそう言って赤いマーチから離れ自分の車に乗り込み走り去る。
マーチの車内、女の子は制服を脱ぎいつもの服装に戻る。
彼は二重人格であった。
自分のことを女子中学生と思っている人格と、普通の父親としての人格が混在していた。
二つの人格が切り替わるのは彼の車の中であった。
切り替わりの恐怖に耐えるためにいろいろなものを車内に持ち込み、車内はいろいろなもので乱雑となっていた。
きっかけは彼の息子の事件であった。
自宅への嫌がらせが始まり次第に過激化していった。彼は自分を守るために、自分の自我を保つために女子中学生である自分を作り出した。
息子の弁護士にそのことが見つかり、レイプされるようにもなった。
二つの人格は記憶を共有することはない。だが、体の様子からおおよそのことは理解できていた。
だがもう何もできることはない。
彼は深くため息をつくと座席に深く身を沈め、ただ涙を流した。
いったい、誰が悪いのだろうか。小さくつぶやくが、きっとそれには答えはない。
雲が晴れた月の光が照らす彼の顔には涙と、小太りの男の精液とが流れていた。
(終了)