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恒心文庫:かわいそうなからさわけ

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

「やめて、殴らないで殴らないで」
昼下がりの公園に、中年男の喚き声がこだまする。男は動物の形をしたバネ仕掛の遊具、そのパンダを模したものに腰掛けていた。背筋をピンと伸ばし、素晴らしい姿勢を保ったまま、しかしぶるぶると震えていた。
男は乳首をつねられていた。つままれ、ひねり上げられた乳首と共に男は引っ張り上げられているのだ。逃げようにも男は後ろ手に縛られ、腰も足もビニール紐でぐるぐる巻きに固定されている。男は脂汗を垂らしながら、自由な背筋だけでどうにか足掻いている。
しかしそれにも限界がある。どんなに加齢で弛んだ乳房を保持していようとも限界以上に伸びた乳首の端からは血が滴り、ミチミチと軋む音が耳を打つ。
声なき声を上げながら、中年は百面相を浮かべて悶える。その露出した肌は噴き出した脂汗でテラテラと日の光を映し出している。ビニール紐で縛り上げられた両の太ももはまるで照り焼きにされたボンレスハムの様に艶かしく蠢いている。
そのボンレスハムに、老婆が一人かぶりついている。腹巻一丁を身につけ、上下半身共に露出したその女は厚子である。蜘蛛の雌は交尾の際、雄を食らうと言うが、仮にも人である。だのに厚子は咀嚼する。噛みちぎった肉を喰らい血を飲み干し、黄色い脂肪を口の端からこぼしながら、厚子は不意に腰をあげた。何かが出てくる。何かの頭が。小さい無数の頭が、外に出ようと蠢いている。
ふと、厚子が足を振り上げる。先端をつねられて伸びた男の乳房、その側面に、足刀が突き刺さる。乳房が跳ねて乳首だけが残り、男は遅れて叫び出す。
あああああああああああああああああああああああああああああああ!!! !!!!!!!!
しばらくして力尽きた様に男は脱力する。その脱力し、柔らかくなった血肉を、女は繰り返し食らうのだ。いつしか雄がいなくなり、やがて雌だけとなった時、その子供はその雌を食らい、子供同士でもくらい合い、本当に強いものだけが残るのだという。
強者とはこどくなのだ。
だからその子に友達ができないのも、家のせいなのだという。

リンク

ここでは厚子が化け物のような姿となっている作品のみリンクを掲載する。この他にもメインとして登場している作品、叙述トリック物がある。

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