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唐澤貴洋の裁判一覧/東京地方裁判所平成24年(ワ)第20187号

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全文

原告 A1
同法定代理人親権者父 A2
同法定代理人親権者母 A3
同訴訟代理人弁護士 唐澤貴洋
被告 ニフティ株式会社
同代表者代表取締役 A4
同訴訟代理人弁護士 荒木泉子 増原陽子

主文

1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。

2 訴訟費用は,被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

 主文と同じ。

第2 事案の概要

 本件は,原告が,氏名不詳者により,電気通信事業者である被告の提供するインターネット接続サービスを利用してされたウェブサイト上の電子掲示板への記事の投稿によって,名誉を毀損されたなどと主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき,上記記事に係る発信者情報の開示を求める事案である。

1 争いのない事実等

(1)原告(平成5年○月○○日生)は,平成24年4月にα大学に入学したものである(甲5)。

(2)被告は,電気通信事業を営む株式会社であり,利用者に対し,インターネット接続サービスの提供を行っているものである。

(3)URL(http://<以下略>)で表示されるウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)の電子掲示板(以下「本件掲示板」という。)における「α大学Part16」と題するスレッド(以下「本件スレッド」という。)に,氏名不詳者により,別紙情報目録の「投稿日時」欄記載の日時に,「レス番号」記載の番号で,「投稿記事内容」記載の記事(以下「本件記事」という。)が投稿された。本件掲示板は,誰もが匿名で,記事を投稿し,又はこれを閲覧することができるものである。

(4)原告は,本件ウェブサイトの管理者に対し、本件記事に係る発信者情報の開示を求める仮処分の申立てをしたところ,上記管理者から,同情報として,別紙情報目録の「IPアドレス」欄記載の情報が開示され,これにより,本件記事は,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して発信されたものであることが判明した。そこで,原告は,被告に対し,上記発信者情報の開示を求めて本件訴訟を提起した。

2 争点及び当事者の主張

 本件の主な争点は,〔1〕本件記事の投稿によって原告の権利が侵害されたことが明らかであり,原告において発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか否かである。争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおりである。 

(1)原告の主張  本件記事は,原告を「犯罪者」であると記載し,一般の閲覧者をもってその旨誤信させ,もって原告の社会的評価を低下させるものであり,原告の名誉を毀損するものである。この点,原告は,これまで犯罪者といわれるような問題行為を行ったことはなく,本件記事の内容は真実ではない上,公益を図る目的でされたものでないことも明らかであるから,違法性阻却事由も存在しない。したがって,本件記事の投稿により原告の権利が侵害されたことは明らかである。また,原告は,本件記事の発信者に対し,上記の名誉毀損を理由として損害賠償を求める意向を有しており,そのためには,被告が保有する発信者情報の開示を受ける必要があり,その開示を受けるべき正当な理由がある。

(2)被告の主張  本件記事には,原告と同名の人物の氏名が記載されているだけで,それ以外に当該人物の特定に資する情報は一切含まれていないから,一般読者の普通の注意と読み方を基準とした場合,本件記事が原告を対象としたものということはできない。したがって,本件記事が原告の名誉を毀損するものであることが明らかであるとはいえず,権利侵害の明白性は認められない上,その発信情報の開示を受ける必要もないから,開示を受けるべき正当な理由も認められない。

第3 当裁判所の判断

前記第2の1(3)によれば,本件記事は,「A1って犯罪者が入学するからよろしくやで~」との書き込みがされているものであり,
原告が犯罪者であるとの事実をその実名をもって摘示するものであり,原告の社会的評価を低下させるものであることは明らかである。
2 これに対し,被告は,前記のとおり,本件記事は,氏名以外に対象を特定する情報は含まれず,原告を対象とするものであることが明らかではないと主張する。
しかし,本件記事は,原告の実名を摘示するものであることは前記のとおりであり,かつ,「α大学Part16」という本件スレッドの題名の下で上記内容の記事が投稿されていることからすると,
本件記事の対象が同大学に入学した原告を指すものであることは明らかであり,被告の上記主張は採用できない。
3 以上によれば,本件記事の投稿によって原告の名誉が毀損されたものというべきである。
そして,原告は,本件記事に係る事実を否定しており,他に同事実が真実のものであり,又は発信者において真実であると信じるにつき相当の理由が存在したというべき事情は証拠上見当たらない上,
本件記事の投稿は,その表現内容や方法に照らし,およそ公益を図る目的でされたものでないことは明らかであって,違法阻却事由の存在をうかがわせる事情を認めることはできないから,
本件記事の投稿によって,原告の権利が侵害されたことは明らかである。
4 そして,原告は,本件記事を投稿した発信者に対し,名誉毀損を理由に損害賠償請求権を行使する意向を示しているところ,被告から当該発信者情報が開示されなければ,これを行使することができないから,同情報の開示を受ける必要があり,正当な理由があることは明らかである。
5 よって,原告の本件請求は,理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第42部

裁判官 井出弘隆

別紙 発信者情報目録

 別紙情報目録記載の投稿日時において,被告 が管理する同目録記載のIPアドレスを使用して,同目録記載の投稿用URLに対し通信を行った者についての次の情報
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス