iRONNA

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iRONNA(いろんな)とは、産経デジタルが運営するオピニオンサイトである。

概要

公式サイトによると「『iRONNA(いろんな)』(ironna.jp)は、オンライン、オフラインの世界に散らばるさまざまな意見、解説などをまとめ、ユーザーに寄稿や議論の場を提供する総合オピニオンサイト」であるとされている。

尊師の寄稿

唐澤貴洋が過去に4回寄稿している。なお、いずれの寄稿も教徒によって発見されている。

  • 2018年7月9日、『リアル殺人を厭わない「ネット弁慶」に突然変異などいない』を寄稿[1]
  • 2018年10月25日、『「防弾サーバー」がある限り、海賊版サイトへの法的追及は難しい』を寄稿[2]
  • 2019年2月12日、『「Twitterで炎上させようぜ」この手の私的制裁を止める方法はある』を寄稿[3]
  • 2019年3月20日、『刺激とカネ「なりたい職業」ユーチューバーのジレンマ』を寄稿[4]

iRONNAにおける尊師のプロフィール

iRONNAでは記事の執筆者のプロフィールページが設けられており、唐澤貴洋のプロフィールもこちら(魚拓)から確認する事ができる。

以下は、2019年3月20日現在のプロフィール。4回目の寄稿からは顔写真が追加された。

『弁護士』

唐澤貴洋

弁護士。早稲田大法科大学院修了。インターネット上の法律問題(名誉毀損・誹謗中傷への法的対応(投稿記事削除、投稿者の特定)など)を専門的に取り扱う。平成27年、法律事務所クロス(現法律事務所Steadiness)を設立。近著に『炎上弁護士』(日本実業出版社)。

事件 ネット社会 インターネット メディア 教育

リアル殺人を厭わない「ネット弁慶」に突然変異などいない

記事

唐澤貴洋(弁護士)

 6月24日、福岡市でインターネットセキュリティー会社社員の岡本顕一郎さんが、42歳の無職の男によって刺殺される痛ましい事件が起きた。岡本さんは「Hagex」(ハゲックス)のハンドルネームで、「Hagex-day.info」というブログを、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「はてなブックマーク」で開設していた。報道によると、容疑者の男はインターネット上で荒らし行為をしていた「低能先生」と呼ばれる人物だという。

    「おいネット弁慶卒業してきたぞ」
    「これが、どれだけ叩かれてもネットリンチをやめることがなく、俺と議論しておのれらの正当性を示すこともなく(まあネットリンチの正当化なんて無理だけどな)俺を『低能先生です』の一言でゲラゲラ笑いながら通報&封殺してきたお前らへの返答だ」
    「ただほぼ引きこもりの42歳」
    「これから近所の交番に自首して俺自身の責任をとってくるわ」

 はてなブックマークの匿名ブログ「匿名ダイアリー」には、低能先生と呼ばれる男の犯行声明とみられる上記のような文章が投稿されていた。この男は「動機」について、「通報&封殺」されたことにあると記していたのである。

    「低能先生という荒しがいる。はてなブックマークに出現し、IDコール利用して複数のユーザーに対して誹謗中傷を繰り返している」
    「低能先生からコールが来る度に、私ははてなに通報を行っている。当初は『私も含めて、他のユーザーに罵詈雑言を行っている人間です』と丁寧に理由を書いていた。が、最近では『低能先生です』と一言だけ書いて送っていた。その後低能アカウントは凍結される」(岡本さんのブログより)

 岡本さんは生前、低能先生による中傷行為を運営側に報告していることをブログで書いていた。つまり、低能先生と呼ばれる男は、はてなブックマークで荒らし行為をしていたことについて、通報されてアカウントを凍結されたことを逆恨みして犯行に及んだと理解できる。

 この事件について、インターネット上での争いが現実社会での殺人事件にまで発展してしまった点で、驚きをもって世間では受け取られている。果たして、これは特異な事件といえるのだろうか。

 私は弁護士として、ネット上の法的問題をよく取り扱っている。私自身、インターネット上のある誹謗(ひぼう)中傷事件の弁護をきっかけに、ネット上での誹謗中傷に始まり、殺害予告や爆破予告をされた経験がある。

 果ては、親族の墓にペンキをまかれる、事務所周辺にビラをまかれる、カッターナイフを送られるなど、現実でも無数の嫌がらせを受けた。

 
唐澤貴洋弁護士になりすましたツイッターの投稿。現在は閲覧できなくなっている(ツイッターより)

 現実社会での嫌がらせをしてきた犯人のうち、何人かについては刑事処分が下され、その人物像を私も知ることとなった。そこで見たのは、ネットにしか居場所がない人物の悲しみであった。

 私の身に起きた事件の犯人たちは、現実社会では無職だったり、学生であっても通学できていなかったりしていた。そうした他者から肯定的な評価を得る機会が少ない者が、インターネットで居場所を見つけていたのである。
 
 そういった者が、ネットでの反応が見たいがために、インターネットや、その延長線上の現実社会で、ネタを作ろうとして異常行動を起こした。ネタとなった行動をした者は、ネット上で無責任な称賛を受け、その賛辞をもって自分の存在を確認していたのである。

 彼らはネット上の無秩序の感覚に慣れ親しんでいるためか、ネタを作るためであれば、現実社会で違法と評価されることもいとわない。器物損壊、建造物侵入、窃盗、脅迫、恐喝、業務妨害…。実際、私が受けた行為はれっきとした犯罪だった。

 こうした犯罪が刑事事件として立件され、容疑者が逮捕されると、必然的に報道される場合がある。事件報道によって、ネット上に氏名が掲載されることになれば、事件報道は記事として拡散する力が強いために、半永久的に記事が残ることになる。

 現実社会で生きている人間からすれば、実社会で何ら関係ない第三者に嫌がらせをして、その行為を犯罪行為として罰せられるリスクを引き受けるということ自体、よく理解できないだろう。

 しかし、ネットでのコミュニケーションを通してでしか自己の存在確認ができない孤独な者にとって、ネットでの反応は欠かすことのできないレゾンデートル(存在意義)となっている。

 今回刺殺事件を起こした犯人の怒りの根拠は、はてなブックマークで「通報&封殺」されたことだ。この怒りは、たかだかネットで、特に、一部のブログサービスで発言できなくなっただけだと考えるのであれば、理解などできないだろう。

 
2018年6月、福岡市内の松本英光容疑者の自宅アパート

 インターネット上で居場所として見つけた空間で、アカウントがなくなり、発言もできなくなるということは、引きこもりで現実社会との関係が薄い犯人にとって、自分の存在理由にかかわる重大な事態と映ったのではないか。自らの犯行声明をネット上に投稿した行動からは、結局、自分の行為を伝えて評価を受ける場所がインターネットしかなかったからに他ならない。

 インターネットでの存在確保のために、現実社会で異常な行動に出てしまうという理路は、ネット空間での自己認識こそがリアルとなっている者の存在を知らなければ理解できない。自らに起こったことからも考えれば、このような孤独な環境にいる者は少なからずいるのではないかと、私は考えている。

 今回の事件は決して何か突然変異で起こっているわけではない。私は、インターネットが出現して人間社会に欠かすことができない存在として扱われるようになったことから、起こるべくして起こった事件であると考えている。

教徒からの評価

  • 所さん!大変ですよで見せたような「ネットでのコミュニケーションを通してでしか自己の存在確認ができない孤独な者」といった教徒へのレッテル貼りを相変わらず続けている愚かさが問われた。
  • これほどの大規模な炎上に至るまでの自身の行いを棚にあげて被害者アピールをする姿勢も上記のレッテル貼りとあわせて批判された。
  • レゾンデートルという語の使用がネタにされた。
  • 「必然的に報道される場合がある。 」など不自然な日本語に尊文要素を見出す教徒もいた。

「防弾サーバー」がある限り、海賊版サイトへの法的追及は難しい

記事

唐澤貴洋(弁護士)

 10月15日、内閣府の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」の第9回会合が開催された。

 だが、ブロッキング賛成派と反対派の意見が平行線をたどり、両論併記の中間とりまとめすらできなかっただけでなく、次回開催予定が決まっていないなど、法制化の先行きについて見通しが立たない状態になっている。本稿では、ブロッキングの法制化の行方について私見を述べさせていただく。

 そもそも、なぜブロッキングが必要とされるのか。これは、権利侵害サイト「漫画村」「Anitube」「MioMio」における著作権侵害について、現在取り得る手段では有効に対応できないからだ。

 その際、インターネットサービスプロバイダ(ISP)がブロッキングを行うことにより、一般利用者の「通信の秘密」を侵害する危険性は存在するが、緊急避難(刑法第37条)という観点から、ブロッキングが通信事業者による電気通信事業法違反にならないとされている。

 そこで緊急避難の要件を検討すると、権利侵害サイトが著作権侵害をしていることについては、疑いはなく、誰でもアクセスし得る状態においては、「現在」の危難は存在している。そして、他に取り得るべき侵害性の少ない手段があるかどうかが検討される。

 
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)

 この点については最近、権利侵害サイトが利用していたコンテンツ配信ネットワーク(CDN)である「クラウドフレア」について法的手段を取れることから、ブロッキングに正当性がないとされている。

 これは、①クラウドフレアに対する米国における裁判手続きの利用により、漫画村についての利用契約者情報の開示に成功したこと、②クラウドフレアに対して、データを所蔵しているサーバー管理会社の情報開示及び同社に残る権利侵害記事のキャッシュデータの削除請求を命ずる仮処分決定が出たこと、を理由としている。これらの法的対応については、敬意を表したい。しかし、以下のような問題がいまだ残っている。

 ①については、米国の裁判手続きにはそれなりの費用がかかる。この費用を被害者に負担させること、そして他国の司法制度の利用まで求めることを含めているのか、議論されなくてはならない。

 それに、漫画村の利用者契約者情報として開示された住所は、部屋番号まで記載されていなかったとされている。これが意味するのは、クラウドフレアに記載する利用契約者情報として正確な居住地を記載しなくても有料サービスの利用契約ができるということであり、このような認識はすでにクラウドフレアを、悪意をもって利用する者にとって共有されていると考えるべきであろう。

 クラウドフレアについては無料サービスもあり、無料サービス利用においては、詳細な情報を要求されない。そして、CDNは米国を会社所在地としない会社も存在しており、クラウドフレアが必ずしもCDNの全てではない。

 一方②は、私の権利侵害を行うサイトについて、私自身がクラウドフレアに対して問い合わせを行い、ポルトガルや米国のサーバー管理会社を特定したことがあるが、サーバー管理会社によっては、削除請求を行っても全く対応されないことがあった。

 クラウドフレアがキャッシュデータを仮に削除したとしても、元のサーバー管理会社が「防弾サーバー」と呼ばれるサーバーを利用していれば、インターネット上には記事が公開されたままになる。「防弾サーバー」はデータの削除請求に一切応じないサーバーを指す。権利を侵害するサイトは、クラウドフレアが利用できなくなっても、結局防弾サーバーを利用するか、他のCDNを利用することで、法的追及を受けにくくすることが可能である。

 このように、私の経験や、現在置かれているインターネット環境から言えば、必ずしもクラウドフレアに対して法的手段を取ったことをもって、ブロッキングの法制化の必要がなくなったとか、緊急避難の要件を満たさなくなったというのは疑問である。

 
※画像はイメージ(ゲッティ・イメージズ)

 最後に、価値の大きい法益のために価値が小さい法益を害してもよいとする「法益権衡」の観点から述べたい。著作権は財産権であり、被害回復の可能性がある著作物が一度インターネット上で流通されてしまうことについて、被害回復が不可能となる児童の権利などと同様にできないとの見解がある(安心ネットづくり促進協議会 児童ポルノ対策作業部会「法的問題検討サブワーキング報告書」)。だから、すでにブロッキングされている児童ポルノと著作権侵害を同列にすることはできないとの主張がなされている。

 しかし、被害回復の可能性があるというが、インターネット上で一度著作権侵害がなされれば、著作物の複製・拡散は容易にできる。そして、財産的損害について被害回復が可能であるという議論も、権利侵害サイトにおいて権利侵害を受けた全著作権者の全損害が回復可能であるとするのは現実味がないと言わざるを得ない。加害者に資力があるかどうかや、強制執行できる財産が日本にあるかなども見据えた議論をすべきである。

 以上のように、ブロッキングの手段としての必要性については否定できないところがあり、いまだ議論の必要があるように思われる。今後も継続的に健全な議論が行われ、権利侵害が一刻も早くなくなることを期待するばかりである。

教徒からの評価

  • 「防弾サーバー」という語は大方は教徒が用いているものでカラケーから知識を得ていると指摘された。一般的には防弾サーバーとは呼ばず「防弾ホスティング」と呼ぶ。
  • 文中の「私の権利侵害を行うサイト」とは当Wikiやカラケーだと思われる。
  • 接続詞の「だから」を適切でないところに使うなどやはり日本語が変だという声があった。

「Twitterで炎上させようぜ」この手の私的制裁を止める方法はある

記事

唐澤貴洋(弁護士)

 東京都立町田総合高校の「教師暴行動画」がツイッターに投稿されたことに端を発して、インターネット上の「私的制裁」にまで発展し、問題となっている。本稿では、今回の炎上や私的制裁の是非について見解を述べたい。

 炎上の経緯を簡単に説明すると、同高の教師が廊下で男子生徒の顔を一発殴り、倒れ込んだところを引きずる様子を撮影した動画がツイッターに掲載され、テレビでも取り上げられて大きな反響が集まった。その後、「Twitterで炎上させようぜ」という声の入った同様の長い動画が改めて拡散されたことから、撮影者や暴行を受けた生徒が全て仕組んだことであるかのような言説が流布し、大炎上した。

 その間、暴行を受けた生徒や撮影者の名前、住所、電話番号だけでなく、家族の名前や勤務先と見られる情報が流出。写真投稿サイトのアカウントを特定されたことで、未成年である生徒の顔写真も拡散してしまった。さらには、関係生徒に対して「犯罪者」といった誹謗(ひぼう)中傷だけでなく、「退学させよう」「どう落とし前をつけるのか」「家族の勤務先に電話をしよう」などと私的制裁の「呼びかけ」まで連日ネット上で行われた。

 また、炎上が発生する過程では、まとめサイトにこの話題に関するスレッドが「乱立」した。まとめサイトでは、ユーザーが大手アドネットワークによるアフィリエイト(成果報酬型広告)を利用した収益を目指し、国内の大手ホスティング(レンタルサーバー)サービスを利用し運営されている。こうして、現在も続く炎上現象により、誹謗中傷及びプライバシー侵害の権利侵害が繰り返されたのである。

 まず、動画が掲載された経緯について、事実を確認した人はいるのか。実際に学校関係者に取材し、取材内容を精査した上でネット上に記事投稿した人がどれだけいるのか。

 上述の通り、暴行問題に対して、世間では「教師を炎上させようと、生徒側が全て仕組んだこと」という言説が、あたかも事実であるかのように受け取られている。炎上の原動力も、倫理感から来る反発やある種の正義感に基づいている。しかし、問われなければいけないのは、記事を投稿する側が動機とするものが果たして本当に真実なのかどうかであろう。
 
    
   ※写真はイメージです(ゲッティ・イメージズ)

 何よりも、生徒らの個人情報を流布すること自体、プライバシー侵害に当たり、法的責任を問われる行為である。生徒の顔写真を投稿する行為は、肖像権の侵害に当たる可能性がある。

 もちろん、生徒の家族の勤務先など個人情報の投稿もプライバシー侵害にあたる。さらに、私的制裁としてネットユーザーが行う勤務先へのいたずら電話行為は、威力業務妨害罪の成立の可能性がある。このように、炎上という現象の中では、違法行為が憂いなく行われているのである。

 炎上に加わっている側には、ある種の正義感に基づき、過激な行為に走ることに高揚感を覚えている側面はないか。しかし過激がゆえに、違法行為として法的責任を問われる可能性がある。違法行為が憂いなく高揚感をもって行われていることに、私は危機感を覚えずにはいられない。

 確かに、今回の事象に何らかの意見を持つことは自由である。だが、その意見の表明方法が、いつの間にか違法行為にまで踏み込んでいるとしたらどうだろうか。しかも、そのことが後々違法と問擬(もんぎ)される事態になったとしたら、それは投稿する側も本来望んでいないであろう。

 やはり、自らが今一度、炎上に関わることの意味や影響を冷静に捉え直す必要があるように思う。事実、私が過去に会った加害者は炎上に加担したことを後悔していた。

 炎上の過程の中では、当事者のみならず、その家族や関係者に対してまで権利侵害が行われる。その家族や関係者は、本来何ら関係がない。しかし、家族や関係者に関して調べ上げられ、関連するさまざまな情報が投稿されている現状を考えると、「一族郎党にも累が及ぶ」中世的な発想の持ち主か、とさえ思う。

 日本の法制度において、家族や関係者であることのみを理由として法的責任を問う法律は存在しない。法律で問われるのは、行為者に対する「個人責任」が原則である。監督責任を果たしていない場合や選挙犯罪における連座制など、行為者ではない者も法的責任が問われる場合もあるが、あくまで例外的だ。

 そもそも、今回の事象では、生徒らに対して民事上でも刑事上でも法的責任が問われているわけではない。であれば、「家族や関係者にも責任がある」といった言説は、あくまで心情面から発生する責任論でしかなく、家族や関係者に対する権利侵害を正当化するものではないのである。

 今回の炎上では、コンプライアンス(法令順守)に基づく経営が求められるはずの会員制交流サイト(SNS)やホスティングサービス、アドネットワークといった大手企業のサービスが利用され、生徒や関係者の権利侵害情報が流通している。権利侵害情報を投稿する人間が、最も悪質であることは言うまでもない。だからといって、さらにここで問われなければいかないのは、大手IT企業のサービスを利用して権利が侵害され続けている事実だ。

 今回の事件がネット上で炎上しているという事実を、ネットに毎日触れる者であれば知らない者はいない。むしろ、IT企業であるがゆえに、内部でこの問題について知っている者も当然いることであろう。現在進行形で権利侵害情報が流通していることを認識しているのであれば、各企業は広告停止や送信防止といった対応を、法的な検討に基づき行うべきではないか。
   
     
    ※写真はイメージです(ゲッティ・イメージズ)

 だいたい広告主にしても、権利侵害情報に対して広告費用を支払いたい企業などいないであろう。インターネット広告費が1兆円を超え、多くの企業がインターネット広告費を支出している中、企業の側にもネット広告の出稿先に対する厳格なチェックが求められている。

 過去には、ユーチューブ上で人種差別動画が投稿され、その動画で大手企業の広告が表示されている実態を英タイムズ紙が報じたことから、一部企業がユーチューブからの広告を引き上げたことがあった。日本では、まだ、この問題についてきちんと論じられていないところがある。今後企業におけるコンプライアンスの内容として、適正な広告出稿先かどうか精査することが求められていくと、私は考えている。

教徒からの評価

  • タイトルで「私的制裁を止める方法はある」と述べておきながら自分の炎上に何も解決を見出せていない姿が教徒の笑いを誘った。
  • かつてTwitter殺害予告していた臭芋を特定して親に謝罪させた嫌儲民に感謝の意を告げているのに、炎上に「家族や関係者は、本来何ら関係がない」などと発言する二枚舌が非難を受けた。
  • 「炎上や私的制裁の是非について見解を述べたい」で始まり、「企業」は「適正な広告出稿先かどうか精査することが求められていく」と結論を出すのは結局誰に向けての文なのかと疑問をもたれた。

刺激とカネ「なりたい職業」ユーチューバーのジレンマ

記事

唐澤貴洋(弁護士)

 ソニー生命が2017年に発表した「中高生が思い描く将来についての意識調査」の「中高生が将来なりたい職業」に、「動画投稿者」が男女ともにトップ10入りした。アンケートが示すように、YouTuber(ユーチューバー)や、ライブ配信アプリを利用する「17ライバー」といった動画配信を職業や生活の支えとする人々は、ここ数年で目立って多くなっている。

 そのためには動画への広告設置が必要だが、YouTube(ユーチューブ)では、配信者が「パートナープログラム」に参加して、動画再生回数など一定条件をクリアしなければならない。その広告動画の再生を通じて、初めて広告収入を得られるようになる。

 日本では、チャンネル登録者数が100万人を超えるユーチューバーが100を超えた。つまり、延べ1億人を超えるユーザーに対して、「トップユーチューバー」の影響力が及んでいるといえる。

 そのようなユーチューバーは影響力の大きさから「インフルエンサー」とも評されている。場合によっては、テレビを通して影響力を持っていた「芸能人」よりも、若年層からの認知度が高く、多大な影響力を与える者が出てきている。

 動画機材や企画構成、出演者、編集を自前で用意するという条件さえクリアできれば、ユーチューバーになれる可能性がある。ユーチューバーになっても、金を稼ぐには配信動画の質への是非や評価が求められるとはいえ、「芸能人」のようにどうすればなれるのかもわからない不透明な存在よりも、「なりたい職業」として認識されることも理解できないことではない。

 しかし、ユーチューバーの中には、再生数の増加に応じた広告収入の増加を求めて、違法や有害な動画を掲載する者が後を絶たない。名誉毀損(きそん)行為やプライバシー侵害行為、人々の不安をあおる陰謀論、卑猥(ひわい)な表現、事実に基づかないフェイクニュース、暴力表現と、内容を挙げればきりがない。

 果ては、動画の内容とユーチューブ上で表示されるサムネイル(縮小画像)の内容が異なるにもかかわらず、サムネイルで過激・過剰な表現を用いて視聴者を引き付けようとする、いわゆる「サムネイル詐欺」まである。

 また、既に多数の登録者数を獲得しているユーチューバーが、その影響力を利用して、マッチングサイトの広告、怪しげな金融商品や情報商材の広告、投資の勧誘広告を行っている事実も見受けられる。「ユーチューブでは何をやっても再生数さえ稼げればいい」という誤った風潮がまん延し、違法・有害なコンテンツがユーチューブ上で氾濫してしまったという現実が存在する。

 このような状況を生んだ要因の一つに、ユーチューブがテレビやラジオと異なり、放送基準の適用がないことが挙げられる。上記の動画は、既存のテレビやラジオでは到底放送することのできない内容である。事実、違法・有害動画の撮影中の行為で、刑事事件として立件された事例もあった。

 ユーチューブの運営側もこの手の批判を知ってか知らずか、最近は違法・有害動画対策として、コミュニティーガイドラインの厳格化を図っているようだ。実際、違法・有害動画を投稿して、アカウントを停止されたユーチューバーもいる。

 しかし、現在のユーチューブを見てみると、上記のような違法・有害コンテンツがいまだ多数存在しているのが現状である。たとえコミュニティーガイドラインが厳格化されても、ガイドライン通りに厳格運用される体制を整えていなければ、厳格化の意味がない。

 このごろ、テレビの視聴率低下とネット動画配信の隆盛に伴って「テレビがつまらない」という意見をよく目にする。テレビは、これまでのさまざまな経験をもとに培われてきた放送ルールに従い、多くの人に害なく見られるコンテンツを作ってきた。

 それゆえ、視聴者にとっては、表現としての刺激が物足りなく感じることもある。特に、違法・有害なコンテンツをネットで簡単に見ることができる現状の下では、テレビとの比較で、その物足りなさが際立ってしまっているところから生まれてきた表現であろう。

 その影響は広告費にも表れている。電通が発表した「2018年日本の広告費」によれば、地上波テレビの広告費が1兆7848億円で前年を下回った。一方で、インターネット広告費は1兆7589億円で5年連続の2桁成長を続け、地上波テレビの広告費に肉薄している。

 つまり、ネットでのコンテンツ配信が利益になるというのは、もう否定できない事実である。この事実を前提として、コンテンツ配信者にどのように適切な配信に対する基準や倫理を持ってもらうかが、今後さらに問われている。

 だが、個人・法人を含めコンテンツ配信者を統括するような団体は見られない。このような現状では、コンテンツ配信のウェブ・プラットホーム(基盤)を運営する事業者(プラットフォーマー)による「自主基準」を頼りにせざるをえない。

 しかし、プラットフォーマーにとっては、自主基準を厳しくした上で、その基準通りの運用を行えば、凡庸なコンテンツが増え、視聴者数や再生回数を稼ぐことができず、広告媒体としての価値の低下につながってしまう。自主基準の厳格化と企業収益の「緊張関係」をどう調節するかが、プラットフォーマーの「永遠の課題」となっていくのだろう。

 ネット配信の収益化で忘れていけないのが、広告主や広告代理店の存在だ。昨年問題となった、差別的言動を掲載したまとめサイトや、海賊版サイト「漫画村」に対しても、広告掲載を行ったのはあくまで広告代理店である。

 だが、このようなサイトで広告を掲載されることは、広告主からすれば本位ではないだろう。それでも、広告配信可能な媒体を抱えるアドネットワークサービスを利用して出稿している広告主において、自社広告がどこに掲載されているかを全て把握している企業がどれほどいるのか。

 アドネットワークは、広告配信可能な媒体を多く抱えることで、より多くのインターネット利用者にリーチすることが可能となり、広告主から報酬を受け取ることができる。プラットフォーマーと同じジレンマを抱えるアドネットワークに自主規制を求めることには、おのずと限界がある。

 だからこそ、広告主としては、自社のコンプライアンス(法令順守)に従った広告出稿先の選定、チェックを行うことが求められていく。違法なコンテンツに収益を提供し、権利侵害を拡大させるようなことは、当然企業倫理からして許されるものではないからだ。

 ユーチューバーを取り巻く問題は単に「流行り廃り」の話題ではない。根底には、コンテンツ配信の適正化と広告の問題が存在しており、今後も注視していかなければならない問題なのである。

教徒からの評価

  • 前回寄稿した記事と内容がほとんど変わり映えしないことから教徒の間では「中身が無くつまらない」とほとんど話題にもならなかった。
  • 文中で指摘されている「既に多数の登録者数を獲得しているユーチューバーが、その影響力を利用して、マッチングサイトの広告、怪しげな金融商品や情報商材の広告、投資の勧誘広告を行っている事実」については、自身が日刊サイゾーのインタビュー内で「唯一の癒やし」と公言しているYoutuber「ヒカル」及び「ラファエル」がまさに関与の疑いを持たれている行為[5]であるものの、そうした点については一切言及されていない。

註釈

外部リンク