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== 全文 ==
原告 A <br>
原告 A <br>
同訴訟代理人弁護士 唐澤貴洋 <br>
同訴訟代理人弁護士 唐澤貴洋 <br>
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2 訴訟費用は被告の負担とする。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
===事実及び理由===
====第1 請求====
 主文と同旨
====第2 事案の概要====
1 本件は,原告が,インターネット上の電子掲示板にされた匿名の書き込みによりその名誉が毀損され,人格権が侵害されたなどとして,当該書き込みをした者(以下「本件発信者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のために,本件発信者にインターネット接続サービスを提供した被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,本件発信者の氏名又は名称,住所及び電子メールアドレスの情報の開示を求める事案である。


=== 2 前提となる事実 ===
=== 2 前提となる事実 ===
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本件各書き込みがされた際に本件発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた者が被告であったことが判明した(甲4)。
本件各書き込みがされた際に本件発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた者が被告であったことが判明した(甲4)。


===3 争点及び当事者の主張===
====(1)原告====
ア 権利侵害の明白性について
(ア)本件各書き込みは,以下のとおり,いずれも,原告の名誉を毀損し,その名誉感情を侵害するものである。<br>
a 本件各書き込みは,いずれも,新光商会の経営者の一人である「C」に関する「煙草の煙は人の顔に吹っかけるは,人の額に拳を付き立てて,「俺は偉いんだ。俺を誰だと思ってんだ!!」それがここの挨拶かよ。」との記載(以下「本件記載〔1〕」という。)を含むものであるが,新光商会において「D」との読みの氏名を有する役員が原告のみであることからすれば,本件記載〔1〕は,一般の閲覧者をして,原告が通常の挨拶をすることができない異常な人間である旨誤信させ,原告の社会的評価を著しく低下させるものである。<br>
b 本件各書き込みは,いずれも,新光商会の経営者の一人である「C」に関する「バイトの女はナンパし放題。」との記載(以下「本件記載〔2〕」という。)を含むものであるが,これは,一般の閲覧者をして,原告が勤務時間中にバイトの女性を口説いており,そのために顧客から受けた仕事を適当にやっている旨誤信させ,原告の社会的評価を著しく低下させるものである。<br>
c 本件各書き込みは,いずれも,新光商会の経営者の一人である「C」に関する「クズ」,「最低のクズ」又は「最低のクズ野朗!!」との記載(以下「本件記載〔3〕」という。)を含むものであるが,これらは,原告が人間として価値がない最底辺の人間である旨を苛烈に表現するものであり,社会通念上許される限度を超えて原告を侮辱し,原告の人格権を違法に侵害するものである。
(イ)本件記載〔1〕及び本件記載〔2〕の各摘示事実の内容は,いずれも真実ではない。
(ウ)本件記載〔1〕及び本件記載〔2〕の各摘示事実は,いずれも,一中小企業である新光商会の役員の勤務状況に関する情報であり,公益の増進に資するものではない。また,本件各書き込みは,単に原告を誹謗中傷するそれらの表現方法からして,原告に対する積極的な加害意思の下に行われたものであることは明らかであり,公益目的を有するものとも認められない。
イ 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について
 原告は,本件発信者に対して不法行為による損害賠償請求権を行使するために,被告に対して本件発信者に係る別紙発信者情報目録記載の情報の開示を求めるものであるから,本件請求には正当な理由がある。
====(2)被告====
ア 権利侵害の明白性について
(ア)本件各書き込みについては,以下のとおり,いずれも,原告の名誉を毀損し,又はその名誉感情を侵害するものであることが明らかであるということはできない。 <br>
a 本件記載〔1〕は,「煙草の煙は人の顔に吹っかけるは,人の額に拳を付き立てて,「俺は偉いんだ。俺を誰だと思ってんだ!!」」との部分と「それがここの挨拶かよ。」との部分とを脈略なく記載するものであって,それらがどのような繋がりを有しているが判然としているものではなく,これを一般の閲覧者が原告が主張するような意味で理解することは困難であり,原告の権利を侵害する効果は乏しい。<br>
b 本件記載〔2〕は,「バイトの女はナンパし放題」との事実を摘示するにとどまり,「原告が顧客から受けた仕事を適当にやっている」旨の事実を摘示するものではないから,一般の閲覧者の普通の注意と読み方とを基準としても,それのみで「原告が顧客から受けた仕事を適当にやっている」旨の印象を抱かせるものではない。<br>
c 本件記載〔3〕は,本件投稿者がその個人的な雑感を述べることにより原告を批判したものであるにすぎず,その表現には日常生活において使用される言葉が用いられており,また,その内容もごく抽象的なものにとどまり,何ら具体的事実を摘示するものではなく,一般の閲覧者が原告に対して具体的印象を抱くとは考え難いものであるから,原告の権利を侵害する効果に乏しいものである。
(イ)本件各書き込みは,個人的な雑感を日常生活において使用される言葉により抽象的に表現したものにすぎず,これを閲覧した者に対して与えられる具体的情報も限られており,それによる原告の権利侵害の効果は乏しく,その違法性の程度は極めて軽微であるから,本件各書き込みについては,違法性阻却事由が存在するものというべきである。
イ 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について
 争う。
===第3 当裁判所の判断===
====1 権利侵害の明白性について====
(1)法4条1項に基づく発信者情報開示請求訴訟においては,被害者は,同項1号所定の要件である「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」について,当該侵害情報の流通によりその社会的評価が低下した等の権利の侵害に係る客観的事実についてはもとより,その侵害行為の違法性を阻却する事由の存在を窺わせる事情が存在しないことについても,その主張立証を要するものと解される。
(2)前記前提となる事実によれば,本件各書き込みは,いずれも,本件記載〔1〕を含むものであることが認められるところ,本件記載〔1〕によって摘示されている事実は,新光商会の経営者の一人である「C」がたばこの煙を人の顔に吹きかけ,人の額に拳を付き立てて「俺は偉いんだ。俺を誰だと思ってんだ」などと述べるというものであって,一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準とすれば,本件記載〔1〕中の「それがここの挨拶かよ。」との部分及び本件各書き込みのその余の部分と併せ読むことにより,新光商会の経営者の一人である「C」がその従業員らに対して日常的にその顔にたばこの煙を吹きかけたり,その額に拳を突き立てながら威圧的な言辞を浴びさせたりするという態度をとっているとの印象を抱かせるものであると認めることができる。そして,証拠(甲5から7まで)により,新光商会において「D」との読みの氏名を有する役員が原告のみであることが認められることからすれば、上記の印象を抱かせる本件記載〔1〕に係る上記摘示事実は,原告につきその品性,徳行等の人格的価値に対する社会的評価を相当程度低下させるものと認めることができる。
 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件各書き込みは,いずれも,原告の名誉を毀損するものと認められる。 
(3)本件記載〔1〕に係る摘示事実については,原告がその陳述書(甲5)において虚偽である旨を陳述しているところであって,本件証拠上,当該事実が真実であることが窺われるような事情は存せず,また,本件発信者において当該事実が真実であるものと信ずるにつき相当の理由があったことが窺われるような事情も存しないものと認めることができる。
(4)被告は,本件各書き込みによる原告の権利侵害の効果は乏しいなどとして,本件各書き込みについては違法性阻却事由が存在するものというべきである旨主張するが,本件記載〔1〕が原告の品性等に対する社会的評価を相当程度低下させ,原告の名誉を毀損するものと認めるべきことは前記説示のとおりであって,被告の上記主張は採用することができない。
(5)以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件各書き込みによって原告の名誉が侵害されており,かつ,その違法性を阻却する事由の存在を窺わせる事情は存在しないことが認められるから,本件請求は,法4条1項1号所定の前記要件を満たすものということができる。
====2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について====
 本件各書き込みによって原告の名誉が違法に侵害されたことは前記認定のとおりであるところ,弁論の全趣旨によれば,原告は,本件発信者に対して不法行為による損害賠償請求を行うことを予定していることが認められるから,原告には,本件発信者に係る別紙発信者情報目録記載の情報の開示を受けるべき正当な理由があるものと認めることができる。
===3 よって,原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。===
東京地方裁判所民事第12部
裁判長裁判官 相澤哲 裁判官 小島法夫 裁判官 浦川剛
===(別紙)発信者情報目録===
 別紙情報目録記載の投稿日時において,被告が管理する別紙情報目録記載のIPアドレスを使用して,別紙情報目録記載の記事を投稿した者についての次の情報<br>
1 氏名又は名称<br>
2 住所<br>
3 電子メールアドレス
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2019年9月6日 (金) 22:49時点における最新版

唐澤貴洋の裁判一覧 > 唐澤貴洋の裁判一覧/東京地方裁判所平成24年(ワ)第27756号

全文

原告 A
同訴訟代理人弁護士 唐澤貴洋
被告 KDDI株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 星川勇二
同 星川信行
同 渡部英人
同 竹本英世

主文

1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

 主文と同旨

第2 事案の概要

1 本件は,原告が,インターネット上の電子掲示板にされた匿名の書き込みによりその名誉が毀損され,人格権が侵害されたなどとして,当該書き込みをした者(以下「本件発信者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のために,本件発信者にインターネット接続サービスを提供した被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,本件発信者の氏名又は名称,住所及び電子メールアドレスの情報の開示を求める事案である。

2 前提となる事実

 以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。

(1)当事者
ア 原告は,有限会社新光商会(以下「新光商会」という。)の専務取締役である。新光商会は,横浜市に本店を置き,輸出入食料品等の形状等の検査,労働者派遣事業法に基づく一般労働者派遣事業等を目的とする会社である。(甲6,7)
イ 被告は,電気通信事業法に定める電気通信事業等を目的とする会社であり,法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当する。

(2)事実経過等
ア インターネット上のウェブサイト「2ちゃんねる」内の電子掲示板(以下「本件掲示板」という。)に,別紙情報目録記載のとおり, 氏名不詳者によって,同目録の番号[1]から[6]までの各「投稿記事内容」記載の内容の各書き込み(以下,併せて「本件各書き込み」という。)がされた(甲1)。
イ 原告は,本件掲示板の管理者を相手方として,当庁に対し,
本件各書き込みを含む本件掲示板上の原告に係る合計19件の書き込みに係る各IPアドレス等の開示を求める仮処分命令の申立て(当庁平成24年(ヨ)第1409号)を行い,
当庁は,平成24年4月24日,これを認める仮処分決定をした(甲2)。

 上記管理者は,上記仮処分決定を受けて,原告に対し,本件各書き込みに係る上記各IPアドレス等を開示した。
当該開示に係るIPアドレスは,いずれも「○○○.○○.○○○.○○○」である。(甲3)
ウ その後,前記イのIPアドレスが被告によって本件発信者に対して割り当てられたものであり,
本件各書き込みがされた際に本件発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた者が被告であったことが判明した(甲4)。

3 争点及び当事者の主張

(1)原告

ア 権利侵害の明白性について

(ア)本件各書き込みは,以下のとおり,いずれも,原告の名誉を毀損し,その名誉感情を侵害するものである。
a 本件各書き込みは,いずれも,新光商会の経営者の一人である「C」に関する「煙草の煙は人の顔に吹っかけるは,人の額に拳を付き立てて,「俺は偉いんだ。俺を誰だと思ってんだ!!」それがここの挨拶かよ。」との記載(以下「本件記載〔1〕」という。)を含むものであるが,新光商会において「D」との読みの氏名を有する役員が原告のみであることからすれば,本件記載〔1〕は,一般の閲覧者をして,原告が通常の挨拶をすることができない異常な人間である旨誤信させ,原告の社会的評価を著しく低下させるものである。
b 本件各書き込みは,いずれも,新光商会の経営者の一人である「C」に関する「バイトの女はナンパし放題。」との記載(以下「本件記載〔2〕」という。)を含むものであるが,これは,一般の閲覧者をして,原告が勤務時間中にバイトの女性を口説いており,そのために顧客から受けた仕事を適当にやっている旨誤信させ,原告の社会的評価を著しく低下させるものである。
c 本件各書き込みは,いずれも,新光商会の経営者の一人である「C」に関する「クズ」,「最低のクズ」又は「最低のクズ野朗!!」との記載(以下「本件記載〔3〕」という。)を含むものであるが,これらは,原告が人間として価値がない最底辺の人間である旨を苛烈に表現するものであり,社会通念上許される限度を超えて原告を侮辱し,原告の人格権を違法に侵害するものである。

(イ)本件記載〔1〕及び本件記載〔2〕の各摘示事実の内容は,いずれも真実ではない。

(ウ)本件記載〔1〕及び本件記載〔2〕の各摘示事実は,いずれも,一中小企業である新光商会の役員の勤務状況に関する情報であり,公益の増進に資するものではない。また,本件各書き込みは,単に原告を誹謗中傷するそれらの表現方法からして,原告に対する積極的な加害意思の下に行われたものであることは明らかであり,公益目的を有するものとも認められない。

イ 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について

 原告は,本件発信者に対して不法行為による損害賠償請求権を行使するために,被告に対して本件発信者に係る別紙発信者情報目録記載の情報の開示を求めるものであるから,本件請求には正当な理由がある。

(2)被告

ア 権利侵害の明白性について

(ア)本件各書き込みについては,以下のとおり,いずれも,原告の名誉を毀損し,又はその名誉感情を侵害するものであることが明らかであるということはできない。
a 本件記載〔1〕は,「煙草の煙は人の顔に吹っかけるは,人の額に拳を付き立てて,「俺は偉いんだ。俺を誰だと思ってんだ!!」」との部分と「それがここの挨拶かよ。」との部分とを脈略なく記載するものであって,それらがどのような繋がりを有しているが判然としているものではなく,これを一般の閲覧者が原告が主張するような意味で理解することは困難であり,原告の権利を侵害する効果は乏しい。
b 本件記載〔2〕は,「バイトの女はナンパし放題」との事実を摘示するにとどまり,「原告が顧客から受けた仕事を適当にやっている」旨の事実を摘示するものではないから,一般の閲覧者の普通の注意と読み方とを基準としても,それのみで「原告が顧客から受けた仕事を適当にやっている」旨の印象を抱かせるものではない。
c 本件記載〔3〕は,本件投稿者がその個人的な雑感を述べることにより原告を批判したものであるにすぎず,その表現には日常生活において使用される言葉が用いられており,また,その内容もごく抽象的なものにとどまり,何ら具体的事実を摘示するものではなく,一般の閲覧者が原告に対して具体的印象を抱くとは考え難いものであるから,原告の権利を侵害する効果に乏しいものである。

(イ)本件各書き込みは,個人的な雑感を日常生活において使用される言葉により抽象的に表現したものにすぎず,これを閲覧した者に対して与えられる具体的情報も限られており,それによる原告の権利侵害の効果は乏しく,その違法性の程度は極めて軽微であるから,本件各書き込みについては,違法性阻却事由が存在するものというべきである。

イ 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について

 争う。

第3 当裁判所の判断

1 権利侵害の明白性について

(1)法4条1項に基づく発信者情報開示請求訴訟においては,被害者は,同項1号所定の要件である「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」について,当該侵害情報の流通によりその社会的評価が低下した等の権利の侵害に係る客観的事実についてはもとより,その侵害行為の違法性を阻却する事由の存在を窺わせる事情が存在しないことについても,その主張立証を要するものと解される。

(2)前記前提となる事実によれば,本件各書き込みは,いずれも,本件記載〔1〕を含むものであることが認められるところ,本件記載〔1〕によって摘示されている事実は,新光商会の経営者の一人である「C」がたばこの煙を人の顔に吹きかけ,人の額に拳を付き立てて「俺は偉いんだ。俺を誰だと思ってんだ」などと述べるというものであって,一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準とすれば,本件記載〔1〕中の「それがここの挨拶かよ。」との部分及び本件各書き込みのその余の部分と併せ読むことにより,新光商会の経営者の一人である「C」がその従業員らに対して日常的にその顔にたばこの煙を吹きかけたり,その額に拳を突き立てながら威圧的な言辞を浴びさせたりするという態度をとっているとの印象を抱かせるものであると認めることができる。そして,証拠(甲5から7まで)により,新光商会において「D」との読みの氏名を有する役員が原告のみであることが認められることからすれば、上記の印象を抱かせる本件記載〔1〕に係る上記摘示事実は,原告につきその品性,徳行等の人格的価値に対する社会的評価を相当程度低下させるものと認めることができる。

 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件各書き込みは,いずれも,原告の名誉を毀損するものと認められる。 

(3)本件記載〔1〕に係る摘示事実については,原告がその陳述書(甲5)において虚偽である旨を陳述しているところであって,本件証拠上,当該事実が真実であることが窺われるような事情は存せず,また,本件発信者において当該事実が真実であるものと信ずるにつき相当の理由があったことが窺われるような事情も存しないものと認めることができる。

(4)被告は,本件各書き込みによる原告の権利侵害の効果は乏しいなどとして,本件各書き込みについては違法性阻却事由が存在するものというべきである旨主張するが,本件記載〔1〕が原告の品性等に対する社会的評価を相当程度低下させ,原告の名誉を毀損するものと認めるべきことは前記説示のとおりであって,被告の上記主張は採用することができない。

(5)以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件各書き込みによって原告の名誉が侵害されており,かつ,その違法性を阻却する事由の存在を窺わせる事情は存在しないことが認められるから,本件請求は,法4条1項1号所定の前記要件を満たすものということができる。

2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由について

 本件各書き込みによって原告の名誉が違法に侵害されたことは前記認定のとおりであるところ,弁論の全趣旨によれば,原告は,本件発信者に対して不法行為による損害賠償請求を行うことを予定していることが認められるから,原告には,本件発信者に係る別紙発信者情報目録記載の情報の開示を受けるべき正当な理由があるものと認めることができる。

3 よって,原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第12部

裁判長裁判官 相澤哲 裁判官 小島法夫 裁判官 浦川剛

(別紙)発信者情報目録

 別紙情報目録記載の投稿日時において,被告が管理する別紙情報目録記載のIPアドレスを使用して,別紙情報目録記載の記事を投稿した者についての次の情報
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス