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「唐澤貴洋の裁判一覧/東京地方裁判所平成24年(ワ)第21264号」の版間の差分

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== 全文 ==
原告 株式会社国立音楽院 <br>
同代表者代表取締役 P1 <br>
同訴訟代理人弁護士 唐澤貴洋 <br>
被告 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 <br>
同代表者代表取締役 P2 <br>
同訴訟代理人弁護士 五島丈裕
 
===主文 ===
1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
 
2 訴訟費用は被告の負担とする。
 
===事実及び理由===
====第1 請求====
 主文と同旨
 
====第2 事案の概要====
 本件は,原告が,電気通信事業を営む被告に対し,別紙情報目録記載の各情報の発信者に対し損害賠償請求権を行使するために,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告の保有する上記各情報に係る別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を求めた事案である。
 
===1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、争いのない事実である。)===
(1)原告は,世田谷区αにおいて,音楽教育を行っている株式会社である(弁論の全趣旨)。
 被告は,電気通信事業を営む株式会社であり,プロバイダ責任制限法4条1項の「特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」である。 
 
(2)インターネット上のURL(http:<以下略>)で表示されるウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)は,様々な話題についての電子掲示板が集まった巨大掲示板群であり,インターネットの利用者であれば誰でも無料で希望の掲示板を閲覧したり新たに掲示板を作成することができる。
 本件ウェブサイトの電子掲示板に投稿する際は,自らの氏名やメールアドレスなどの個人情報を登録する必要も記載する必要もないので,投稿者は匿名で記事を投稿することができ,利用者間でその投稿者が誰かが知られることはない。(当裁判所に顕著な事実,弁論の全趣旨)
 
(3)氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は,別紙情報目録記載の各投稿日時において,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して,本件ウェブサイト上の同目録記載の各閲覧用URLの電子掲示板に,同目録記載の記事(以下「本件各記事」という。)を投稿した。
 
====2 争点====
 本件各記事によって原告の人格権ないし名誉権が侵害されたことが明白か。
 
(原告の主張)
 本件各記事はいずれも原告の社会的評価を低下させるものであるから,これらの侵害情報が流通することによって原告の人格権ないし名誉権が侵害されたことは明らかである。
 
 また,本件各記事の内容は真実ではなく,事実の公共性も目的の公益性も認められないから,違法性阻却事由が存在しない。
 
(被告の主張)
 本件各記事は,不法行為を構成するほどまでに原告の社会的評価を低下させるものではない。
 
 また,別紙情報目録記載【2】の記事は,公衆のトラブルを未然に防ぐための注意喚起を意図すると解することもできるので,事実の公共性及び目的の公益性が認められ,真実性又は相当性に係る事情により,違法性阻却事由が認められる。
 
===第3 当裁判所の判断===
====1 争点(本件各記事によって原告の人格権ないし名誉権が侵害されたことが明白か)について====
(1)プロバイダ責任制限法4条1項は,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対しその保有する当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求できる場合について規定し,その要件として,〔1〕特定電気通信による情報の流通によって当該開示請求者の権利が侵害されたことが明らかであるとき,かつ,〔2〕当該発信者情報が当該開示請求者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるときを挙げる。
 
 そこで,本件各記事について,このような法律上の要件を充足するか否かを判断することにする。
 
(2)まず,別紙情報目録記載【1】の記事は,「a」という題名の掲示板を新たに作成した上で,「b」と記載されたものであるところ(甲1),一般読者の普通の注意と読み方からすれば,所在地と商号から原告を話題にしていることが明らかな掲示板を作成した上で,原告の商号の前に「詐欺」という刑法犯の罪名ないし民事上の不法行為に当たる行為の名称を冠することにより,原告が詐欺を行うような悪徳な業者であるかのような印象を持たせ,原告を誹謗中傷するものであって,上記記事が本件ウェブサイト上で公開されることによって,原告の音楽教育組織としての社会的評価を低下させる上に,その目的や方法において上記記事の投稿が社会通念上許容されるものと判断できるような事情が全く窺われないことから,上記記事によって原告の人格権が侵害されたことが明らかであるといえる。
 
 そして,別紙情報目録記載【53】,【59】,【68】,【81】,【89】,【97】ないし【102】,【105】,【107】,【110】,【113】,【116】,【118】,【121】,【123】,【126】,【128】,【131】,【135】,【137】,【139】,【142】,【144】,【148】,【151】,【154】及び【158】の各記事も,上記【1】の記事と同じ内容の記事を投稿したものであるから,前述したところと同様の理由により,上記各記事によって原告の人格権が侵害されたことが明らかであるといえる。
 
 次に,別紙情報目録記載【2】の記事は,「a」という題名の掲示板に投稿された記事であること(甲1),「嘘広告,嘘宣伝紙です。説明会,電話勧誘,オリエンテーションで嘘をつきます。口座から金を引き落とされます。」と記載されていることからすると,一般読者の普通の注意と読み方からすれば,所在地と商号から原告を話題にしていることが明らかな掲示板に,原告が広告,宣伝紙,説明会,電話勧誘やオリエンテーションで虚偽の説明をしており,その説明を信じた受講者の預金口座から預金を引き落としているという事実を摘示しているものと認められるから,これが本件ウェブサイト上で公開されることによって,原告の音楽教育組織としての社会的評価を低下させる上に,摘示された事実の根拠も全く示されておらず,上記事実が真実であること等の違法性阻却事由の存在が窺われないことから,上記記事によって原告の名誉権が侵害されたことが明らかである。
 
 次に,上記各記事以外の本件各記事は,原告が「詐欺会社である。」(別紙情報目録記載【3】),「詐欺首謀者は,教務部責任者のP3(……詐欺師)である。」(同目録記載【4】),「国立音楽院 教務部責任者 P3(……詐欺師)」(同目録記載【5】ないし【52】,【54】ないし【58】,【60】ないし【67】,【69】ないし【80】,【82】ないし【88】,【90】ないし【96】,【103】,【104】,【106】,【108】,【109】,【111】,【112】,【114】,【115】,【117】,【119】,【120】,【122】,【124】,【125】,【127】,【129】,【130】,【132】ないし【134】,【136】,【138】,【140】,【141】,【143】,【145】ないし【147】,【149】,【150】,【152】,【153】,【155】ないし【157】)などと記載して,原告が詐欺を行っている会社であるという事実や原告が教務部責任者に詐欺を行う人物を配置しているという事実を摘示しているものと認められるから,これが本件ウェブサイト上で公開されることによって,原告の音楽教育組織としての社会的評価を低下させる上に,摘示された事実の根拠も全く示されておらず,上記各事実が真実であること等の違法性阻却事由の存在が窺われないことから,上記記事によって原告の名誉権が侵害されたことが明らかである。
 
 したがって,本件各記事はいずれも,上記〔1〕の要件を具備するものといえる。
 
(3)しかも,原告は,上記〔1〕の要件を充たす本件各記事の投稿者に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権を行使するために発信者情報の開示を求めているから,これらの記事については上記〔2〕の要件も充たしているといえる。
 
(4)以上によれば,原告は,被告に対し,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,本件各記事に係る別紙発信者情報目録記載の情報の開示を請求することができるというべきである。
 
===2 結論===
 よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。
 
東京地方裁判所民事第48部
 
裁判官 大嶋洋志
 
===(別紙)発信者情報目録===
 別紙情報目録記載の投稿日時において,被告が管理する同目録記載のIPアドレスを使用して,同目録記載の投稿用URLに対し通信を行った者についての次の情報<br>
1 氏名又は名称<br>
2 住所<br>
3 電子メールアドレス<br>
 
{{唐澤貴洋の依頼人}}
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[[カテゴリ:唐澤貴洋の裁判]]
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2019年9月6日 (金) 22:49時点における最新版

唐澤貴洋の裁判一覧 > 唐澤貴洋の裁判一覧/東京地方裁判所平成24年(ワ)第21264号

全文

原告 株式会社国立音楽院
同代表者代表取締役 P1
同訴訟代理人弁護士 唐澤貴洋
被告 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
同代表者代表取締役 P2
同訴訟代理人弁護士 五島丈裕

主文

1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

 主文と同旨

第2 事案の概要

 本件は,原告が,電気通信事業を営む被告に対し,別紙情報目録記載の各情報の発信者に対し損害賠償請求権を行使するために,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告の保有する上記各情報に係る別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を求めた事案である。

1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、争いのない事実である。)

(1)原告は,世田谷区αにおいて,音楽教育を行っている株式会社である(弁論の全趣旨)。  被告は,電気通信事業を営む株式会社であり,プロバイダ責任制限法4条1項の「特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」である。 

(2)インターネット上のURL(http:<以下略>)で表示されるウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)は,様々な話題についての電子掲示板が集まった巨大掲示板群であり,インターネットの利用者であれば誰でも無料で希望の掲示板を閲覧したり新たに掲示板を作成することができる。  本件ウェブサイトの電子掲示板に投稿する際は,自らの氏名やメールアドレスなどの個人情報を登録する必要も記載する必要もないので,投稿者は匿名で記事を投稿することができ,利用者間でその投稿者が誰かが知られることはない。(当裁判所に顕著な事実,弁論の全趣旨)

(3)氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は,別紙情報目録記載の各投稿日時において,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して,本件ウェブサイト上の同目録記載の各閲覧用URLの電子掲示板に,同目録記載の記事(以下「本件各記事」という。)を投稿した。

2 争点

 本件各記事によって原告の人格権ないし名誉権が侵害されたことが明白か。

(原告の主張)  本件各記事はいずれも原告の社会的評価を低下させるものであるから,これらの侵害情報が流通することによって原告の人格権ないし名誉権が侵害されたことは明らかである。

 また,本件各記事の内容は真実ではなく,事実の公共性も目的の公益性も認められないから,違法性阻却事由が存在しない。

(被告の主張)  本件各記事は,不法行為を構成するほどまでに原告の社会的評価を低下させるものではない。

 また,別紙情報目録記載【2】の記事は,公衆のトラブルを未然に防ぐための注意喚起を意図すると解することもできるので,事実の公共性及び目的の公益性が認められ,真実性又は相当性に係る事情により,違法性阻却事由が認められる。

第3 当裁判所の判断

1 争点(本件各記事によって原告の人格権ないし名誉権が侵害されたことが明白か)について

(1)プロバイダ責任制限法4条1項は,特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対しその保有する当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求できる場合について規定し,その要件として,〔1〕特定電気通信による情報の流通によって当該開示請求者の権利が侵害されたことが明らかであるとき,かつ,〔2〕当該発信者情報が当該開示請求者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるときを挙げる。

 そこで,本件各記事について,このような法律上の要件を充足するか否かを判断することにする。

(2)まず,別紙情報目録記載【1】の記事は,「a」という題名の掲示板を新たに作成した上で,「b」と記載されたものであるところ(甲1),一般読者の普通の注意と読み方からすれば,所在地と商号から原告を話題にしていることが明らかな掲示板を作成した上で,原告の商号の前に「詐欺」という刑法犯の罪名ないし民事上の不法行為に当たる行為の名称を冠することにより,原告が詐欺を行うような悪徳な業者であるかのような印象を持たせ,原告を誹謗中傷するものであって,上記記事が本件ウェブサイト上で公開されることによって,原告の音楽教育組織としての社会的評価を低下させる上に,その目的や方法において上記記事の投稿が社会通念上許容されるものと判断できるような事情が全く窺われないことから,上記記事によって原告の人格権が侵害されたことが明らかであるといえる。

 そして,別紙情報目録記載【53】,【59】,【68】,【81】,【89】,【97】ないし【102】,【105】,【107】,【110】,【113】,【116】,【118】,【121】,【123】,【126】,【128】,【131】,【135】,【137】,【139】,【142】,【144】,【148】,【151】,【154】及び【158】の各記事も,上記【1】の記事と同じ内容の記事を投稿したものであるから,前述したところと同様の理由により,上記各記事によって原告の人格権が侵害されたことが明らかであるといえる。

 次に,別紙情報目録記載【2】の記事は,「a」という題名の掲示板に投稿された記事であること(甲1),「嘘広告,嘘宣伝紙です。説明会,電話勧誘,オリエンテーションで嘘をつきます。口座から金を引き落とされます。」と記載されていることからすると,一般読者の普通の注意と読み方からすれば,所在地と商号から原告を話題にしていることが明らかな掲示板に,原告が広告,宣伝紙,説明会,電話勧誘やオリエンテーションで虚偽の説明をしており,その説明を信じた受講者の預金口座から預金を引き落としているという事実を摘示しているものと認められるから,これが本件ウェブサイト上で公開されることによって,原告の音楽教育組織としての社会的評価を低下させる上に,摘示された事実の根拠も全く示されておらず,上記事実が真実であること等の違法性阻却事由の存在が窺われないことから,上記記事によって原告の名誉権が侵害されたことが明らかである。

 次に,上記各記事以外の本件各記事は,原告が「詐欺会社である。」(別紙情報目録記載【3】),「詐欺首謀者は,教務部責任者のP3(……詐欺師)である。」(同目録記載【4】),「国立音楽院 教務部責任者 P3(……詐欺師)」(同目録記載【5】ないし【52】,【54】ないし【58】,【60】ないし【67】,【69】ないし【80】,【82】ないし【88】,【90】ないし【96】,【103】,【104】,【106】,【108】,【109】,【111】,【112】,【114】,【115】,【117】,【119】,【120】,【122】,【124】,【125】,【127】,【129】,【130】,【132】ないし【134】,【136】,【138】,【140】,【141】,【143】,【145】ないし【147】,【149】,【150】,【152】,【153】,【155】ないし【157】)などと記載して,原告が詐欺を行っている会社であるという事実や原告が教務部責任者に詐欺を行う人物を配置しているという事実を摘示しているものと認められるから,これが本件ウェブサイト上で公開されることによって,原告の音楽教育組織としての社会的評価を低下させる上に,摘示された事実の根拠も全く示されておらず,上記各事実が真実であること等の違法性阻却事由の存在が窺われないことから,上記記事によって原告の名誉権が侵害されたことが明らかである。

 したがって,本件各記事はいずれも,上記〔1〕の要件を具備するものといえる。

(3)しかも,原告は,上記〔1〕の要件を充たす本件各記事の投稿者に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権を行使するために発信者情報の開示を求めているから,これらの記事については上記〔2〕の要件も充たしているといえる。

(4)以上によれば,原告は,被告に対し,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,本件各記事に係る別紙発信者情報目録記載の情報の開示を請求することができるというべきである。

2 結論

 よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第48部

裁判官 大嶋洋志

(別紙)発信者情報目録

 別紙情報目録記載の投稿日時において,被告が管理する同目録記載のIPアドレスを使用して,同目録記載の投稿用URLに対し通信を行った者についての次の情報
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス