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恒心文庫:唐澤貴洋漂白日記

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

八月一日
きょうは唐澤貴洋を水につけた
唐澤貴洋はこれからどんどん白くなるらしい
たのしみだな

八月二日
唐澤貴洋はとても黒い
とても黒い唐澤貴洋を水に浸けてしばらくすると
地上にふたつとない透明な物質になるのだとか
楽しみだな

八月三日
唐澤貴洋を入れた水槽の水がぐんぐん減る
どうやら唐澤貴洋の漂白の過程で大量の水分を消費するらしい
ぼくは真っ白になった唐澤貴洋が見たいからどんどん水を替えてやるぞ!

八月四日
唐澤貴洋の漂白には水以外にも必要なものがあるようだ
ぼくは迂闊なので唐澤貴洋にえさを与えることを忘れていた
慌てて昔の金魚の餌の残りをあげてみたけど、唐澤貴洋は食べてくれない
どうしたものか

八月五日
唐澤貴洋の好むえさを買ってきた
プリキュアがプリントされた女児用下着をもっとも好むらしい
早速鋏で裁断したそれらを与えると唐澤貴洋はとても嬉しそうに食べていた
でも、まだまだ黒い

八月六日
唐澤貴洋の水槽がどうにも黒いので絵の具をそっといれてみた、水彩絵の具だ
しかし、ぼくが水彩絵の具の白いの絵の具を入れるはしから唐澤貴洋が絵の具を吸い込んで食べてしまった
唐澤貴洋の水そうをきれいにするのには、絵の具では足りないらしい

八月七日
唐澤貴洋の水そうの水を替える
唐澤貴洋を一旦別の下水に移してのち新しい下水を入れた水そうにもどしてやる
その過程でぼくは下水を五重にろ過し透明な水に唐澤貴洋を入れてやる
でも唐澤貴洋を入れると水がすぐに濁った
ぼくは天をあおいだ

八月八日
どうやら唐澤貴洋は水をきれいにするのではなくきたなくする効力があるとのこと
お姉ちゃんが教えてくれた
でも唐澤貴洋は水をきれいにする能力があるって書いてあったから
ぼくは楽しみだな

八月九日
どうして唐澤貴洋は水を汚くしてしまうのか、かん察してみた
まず、絶えずうんちをしている
そしてそれを自分で食べる
でもうんちは食べきらずにぐちゃぐちゃにして振り回すからすぐに水が濁ってしまう
そして唐澤貴洋はまた新しいうんちをする

一体これでどうやって水をきれいにするんだ!?

八月十日
今日おねえちゃんから標白剤というものがあると聞いた
でも標白剤はぼくのおこづかいでは買えない
唐澤貴洋を、買ってしまったから

八月十一日
標白剤というものの調べものをする
せんたくの標白材と台どころの標白剤があるらしい
ぼくはぼくの唐澤貴洋を白くするためにどちらを選べばいいのだろう

八月十二間
唐澤貴洋は元気だ
今日も元気に水のなかを泳ぎまわっている
でもその水は黒い
ぼくは唐澤貴洋にきれいなとう明な水のなかをおよいでいてほしかった

八月十三目
唐澤貴洋をまた新しいすい槽に移す
うつすはしから水が濁ってしまう

……

八月十4
今日唐澤貴洋の水槽に洗濯用漂白剤を入れてみる
唐澤貴洋は嬉しそうに白くなってぴちゃぴちゃ泳ぎ回っていた
良かったね、唐澤貴洋!

八月十五日
今日唐澤貴洋の水槽に台所用漂白剤を入れてみる
唐澤貴洋が水槽の上を泡立ちながらびちゃびちゃとよろこびながら跳ねている
良かったね、唐澤貴洋!

八月十六日
唐澤貴洋の水槽に業務用ハイター濃縮液をどぼどぼどぼどぼ入れてまる
唐澤貴洋は全身で跳ね回ってとてもうせしそうだ
これで明日には真っ白になっているだろう

八月十七日
唐澤貴洋は真っ白になりました
水槽の底で動かなくなったこれをぼくは始末せねばなりません
とりあえず流せるものは流しました
でも関節は大きい

八月十八日
とう明になってしまえばだれにもわかりません
唐澤貴洋はとう明にして川に流してしまえばいいのです
しょせんは小さな男の子です、わけはないのです

さぁ、あとは家族

八月十九日
どれから始めましょうか
お姉ちゃんは怖がって彼の部屋に近寄ってきません
お父さんは仕事であまり家に居着きませんね
だったら

八月二十日
彼のお母さんはよく水槽の世話をしていてくれたみたいですね
唐澤貴洋がいなくなってしまったことについてひどくなかしがっていました
だから私は彼女を慰めてあげました
唐澤貴洋は、まだ生きていますよ

八月二十一日
彼の母親は新しい唐澤貴洋を買ってきてくれましたね
「これは、もっときれいになるからね」母親はそう言っていましたね
でもね、あなた。ひとはわかっていないのです
唐澤貴洋が白くなるということは…………?

八月二十二日
肉は古いほうがうまいといいますが、それは間違いですね
あっちの唐澤貴洋が文句を言っていました、まぁ私には関係ありません
あと二人

八月二十三日
今日お姉ちゃん(笑い)が私のことを心配してきました
「だいじょうぶ?最近おかしいけど……」って
ははは、他人の心配をしている場合なのでしょうか(笑い)

八月二十四日
あっちの唐澤貴洋がおかしい
母親の肉体は十全に乗っ取ったはずなのに、操縦がうまくいかないというのだ
ごまかすにも限度があるから、早くなんとかして欲しい
まぁいざとなれば……

八月二十五日
私も身体の操縦がおかしい
いったいどうしたのだ?
透明になった唐澤貴洋は他人の身d

八月三十日
きょうぼくは病院のベッドで目が覚めた
どうやら唐澤貴洋のせいでここ二週間ほど眠り続けていたらしい
目が覚めると枕元でお姉ちゃんが泣きながらぼくのかおをなぐっていた
パンチはとてもいたかったけれど、それ以上におねえちゃんの涙が熱くのほおを打った

八月三十一日
次の日ぼくはたいいんをした
おとうさんとおかあさんがいそがしいのでおねえちゃんがつきそってくれた
ぼくはおねえちゃんにぼくが寝ていたあいだ唐澤貴洋の世話をしてくれていたかたずねた
「あぁ、そうそう、すっかり忘れてたんだけど」とおねえちゃんは言った
「一昨日、塩水、ちゃんと入れといたから大丈夫♪」

ぼくは泣き叫びながらおねえちゃんに唐澤貴洋が淡水生物であると伝えた

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