恒心文庫:仮想不倫
本文
戻り梅雨が地面を濡らす頃、ななののも濡れていた。K澤弁護士――彼女はTかひろと呼ぶ――が彼女のリプライをリツイートしたからだ。彼女にとってそれはとんでもない快感であった。夫の昼食の準備そっちのけで何度も何度もスクリーンショットを撮る彼女の姿は、はっきり言って異常だ。彼女はしばらくうっとりとスクショを眺めていたが、更なる欲望が湧いてきていることに気付いた。
手始めに服の上から胸を、否、せっかちなななののはブラジャーを外し直接その突起をなぞった。お世辞にも大きいとは言えない胸が、これ以上にないほど激しく主張している。下半身が切なく疼いていたが、ななののは更なる悪戯を試みた。行きつけのロ◯シタンで購入した新作のスカルプエッセンスのストッパーを外し、両胸に1プッシュずつ噴射したのだ。しばらくするとエッセンス含まれているハッカ葉油がその狭い胸の上で静かに暴れだした。「もう我慢できない。」
寝室に横たわったななののは徐ろに下着を脱ぎ、そのどどめ色の鮑を露わにした。昨夜夫に「浮気ができないように恥ずかしい姿にしてやる。」と言われ陰毛を剃られたので、プツプツとした黒い跡はあるものの、グロテスクな秘部は妖しげに、そして艶やかに微笑んでいる。彼女はそこに触れるべく手を伸ばした、その瞬間、悪魔が囁いた。頭皮用ということは、同じく毛が生えているところにも使えるのではないだろうか?閃いてからは早かった。快感が先程の比ではないことは、その溢れる蜜を見れば明らかだ。
「んっ、Tかひろ……ッ。夫のより気持ちいいっ。」
まるで昼ドラのような台詞、これはいけない。しかし現に彼女の寝室では――夫の寝室でもあるのだが――ドラマよりも壮絶な息遣いが響いているのだ。隣の部屋からはテレワーク中の夫の声が聞こえる。
「あっ。先生、イっていい?ねえ、イっちゃう……!」
彼女は我も忘れてK澤弁護士のことを先生と呼ぶ。中高時代ハブられてきた根暗なななののは、明るく陽気なキャラに憧れ、無理をしてTかひろと呼んでいたのだ。そんな彼女の演技もこの押し寄せる快感にはあまりにも非力だ。壁の向こうからタイピング音が聞こえる。ごめんなさい――。
そうして彼女は快い波に身を委ねた。
しばらくの沈黙の後、彼女はふうと息を吐き、眠っていた理性を叩き起こすかのようにフリスクを噛んだ。
明日の予報は晴れ。暑い夏になりそうだ。
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。
この作品について
尊師のファンななののが書き[1]、教徒に代理投稿[2]させた所謂夢小説である。執筆は配偶者も了承しており、文章添削しているとのこと[3]。