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恒心文庫:45回目の1月4日

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

1月4日が近づいている。にも関わらず誰からも誕生日会をしようというお誘いがない。
今までにない1月4日かもしれない。怖い。
もうすぐ45だ。当職は間もなく45になるのだ。
1月4日は当職が45歳になる誕生日だ。45は四捨五入すると50だから45歳は実質50代って言う人がいる。
それは違う。45は45だ。年齢を上に盛る必要は一切ない。
ふう。当職は45歳だから50になるまであと5年も残されてる。危ない危ない。
当職は誕生日は盛大に祝ってもらいたいし祝われるべきだと思っている。その考えは45年の間揺らいだことがない。
受精ガチャにも親ガチャにも家系ガチャにも大勝利した記念日。祝われる以外あり得ない。
それなのに誰からも誕生日会を開くという吉報を耳にすることが出来ない。はっきり言って今の消極的な世の中は異常だ。
もうコロナなどだいぶ収束しているわけだから大人数で集まることに何の後ろめたさもないはずなのに。一体なぜなのか。
当職は誕生日会を開いてもらうことをツイッターで呼びかける。最初に反応したのは藤吉という当職の数年来の友人であった。
藤吉は当職の同業者で司法修習同期でもある。講演会やYouTubeライブでも一緒に杯を交わす仲。
藤吉は「誕生日会やりましょう」と言ってくれた。だがこいつはダメだ。独身童貞で当職に言われてから誕生日会やろうだなんて友人失格だ。話にならん。
傷の舐め合いとか勝手な事言ってるが全身傷だらけのお前に用などない。教祖にでもなって出直してこい。
次に反応したのはななののという慶應出身の才女だ。既婚者の時点でダーキニー失格だがケーキを一緒に食べようと言ってくれた。
女性だからなのか多少は気遣いはできるようだ。当職は「ショートケーキが好き」と言ったが、案の定ななののはショートケーキは好きじゃないらしい。
後で抹茶とチョコレートのケーキの写真が送られてきたが一体何を考えている?今日は当職が誕生日の主役なのになんで当職より派手なケーキを食べようとしているのか。全く話にならない。
後のフォロワーは競馬繋がりとエクシア繋がり。エクシア繋がりは自分がかわいくて仕方がない連中だから期待しても無駄無駄無駄。
太組不二雄のYoutubeに一緒に出演した仲間なら祝ってくれるのではないか。唯一希望があるのはそこだけか。その瞬間若干悲しくなったが悲しんでも仕方ない。だって今日は当職の誕生日なのだから。
当職の想定より小規模なのは既に確定事項であるが、まさか誕生日にお祝いゼロなどあり得ない。どれだけ小さかろうともゼロだけは避けなければならなかった。
いざ蓋を開けると当職の予想は悪い方に裏切られた。「おめでとう」と言う者はいたけれど、形に残る物としてじゃないとダメなんだ。あの人の脳内ではアホウマがパカパカ走り回っているのだろうか。
やはりある程度の学歴がないと会話が成立しないな。まあ慶應卒でも会話ができない奴もいるけどな。
おっと忘れていた。原田學植君と事務員達。出勤したらきっと事務所総出で祝ってくれるんだろうなあ。悪態が目に見えて毎年非常に気分が悪いが一応誕生日会らしきものはやってくれる。
本来誕生日というものはもっと盛大に祝われるべきなのにあの人達は軽く済ませようとする。無論法律事務所だからパーティー会場ではないことは当職も分かっているのだが。
もはや当職が納得する形の誕生日はやってこないかもしれない。45回目となれば親も飽きる頃合いなのかもしれない。
でも誕生日である以上は当職が主役でなければならないのだ。主役が主役らしくない作品など存在してはならないのだ。
ん?作品?・・・
作品と言われてふとこんなことを閃いた。誕生日を祝われない恨みは実在の人物をオマージュした誹謗中傷小説に投影させ、ストレス発散に使わせてもらおうじゃないか。
主役は主役らしくなければならないが、別に主役が幸せである必要は全くないんだ。悪く思うな。
主役をどんなに悲惨に思い描こうが主役は主役。祝われない苦痛を誹謗中傷としてぶつけてみよう。主役はどのようにして誹謗中傷に立ち向かうのだろうか。
当職は頭をフル回転させる。小説を書く当職の左手は止まるところを知らない。
さて1月4日の朝がやって来た。出勤の時間だ。今年もどうせ軽く済ませるであろう軽い気持ちを軽く受け止め今日も誹謗中傷に励む。
幸い誹謗中傷用お察しサンドバッグ君のお陰で当職の気分は思ったほど害することはなかった。

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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