恒心文庫:金のリンゴ飴
本文
仄暗い部屋にて
「これ、どうしますかね」
帯刀した男がうんざりとした様子でボヤく
気怠げな雰囲気で顔を顰め机の上の"それ"を眺めていた
「うーん…どうしよっか」
口元に髭を蓄えた容姿の整った男性が呟く
温厚そうな顔立ちだが、内心では帯刀した男と同じ気持ちであろう溜息をついた
机の上で"それ"はピクピクと動いている
──────当職はりんご飴が食べたいナリ
ある日の昼下がり
突然ボス弁の小太りがそんな事を言った
これに反応したのは髭の弁護士
「え?りんご飴ですか?」
常日頃からこの小太りには甘く、大抵のワガママは叶えている彼もこの要求には一瞬戸惑い首を傾げる
「(りんご飴ってどこに売ってるんだろう?)」
言われてみれば普段あまり見かけないものである
お祭りに行けば屋台にあるかも知れないがこの時期には祭りなどやっていない
市販の物となると売っているところを見たことがない
専門店があるのかも知れないが心当たりが無かった
「りんご飴て…手作りくらいしか無理じゃないスか?」
帯刀弁護士が呆れた様に口を開く
なるほど確かにそうだ
リンゴはスーパーに行けば売っているだろうし
外側の飴も恐らく砂糖等の糖分だろう
材料を揃えれば作成は可能かも知れない
・・・ただ問題があった
髭は千羽鶴もまともに折れない程の不器用で
菓子作りなど到底無理だったのだ
「山本くん…料理とか得意?」
「え?俺っスか?いや全然」
なんて事だ…
彼もまた現代社会にて料理という牙を無くした哀れな獣なのか───
そう嘆いているとこの事務所の実質支配者の白いモミアゲを蓄えた男が椅子から立ち上がり、唱えた
────ワシがリンゴ飴になろう
白モミは事務所の休憩室のコンロに火を掛け、鍋に水と砂糖を投入すると煮詰めた
そして服を脱ぎ、煮立ったそれを徐に己の金玉に垂らす!!!
────あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )
齢七十近い軍艦の艶めかしい叫び声がビル中に響く!!!
勃起する一物!!弾け飛ぶ精液!!!迫り来る饐えた甘い香り!!!
鳴り始める苦情の電話!!泣き出す事務員!!お腹を空かせた愛息子!!!
──ならばぶち込まねばならない
白モミは己の「テカテカ」としたリンゴ飴を息子の口に運ぶ
と、そのあまりの熱さと大きさに驚いた小太りはこれを拒否
事務所の真ん中の机の上で仰向けになり幼子の様に地団駄を始めたではないか
これには流石の父も憤慨
意地になり、何が何でもワシのリンゴ飴を頬張らせてやらんとムキになり息子の口を襲う…
息子の口内と父のリンゴ飴が机の上で完璧にfitしたのはその直後の話である
「けどこの二人幸せそうじゃないっスか?」
…確かに父も息子も恍惚の表情で悦に浸っている様に見える
息子は「ちうちう」と父のリンゴ飴を頬張っているし
父も快楽に身を任せウットリとした顔だ
─このままで良いか
髭の弁護士はデスクに戻り仕事に取り掛かる
帯刀弁護士もそれに続く
なんて事はない、これが彼らの日常なのだ
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。