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恒心文庫:講演会

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

法律事務所Cは多士済々であった。
 Y岡は、小学校の時に拾ったSM雑誌がきっかけとなり、
高校生の時には既に「先生」と呼ばれる緊縛師として知られていた。
その頃は主に同級や上級の女子高生から人妻を対象にしていたが、
女子の少ない東大に入ってからは男も縛るようになっていた。
彼は、亀甲縛りや逆海老縛りなどの伝統的な縛りのほか、オリジナルの
縛り方を編み出して実践していた。
 また、彼は鞭攻めの名手であった。痛みを与える鞭打ちのほか、
大きく音を立てて、マゾヒストに恐怖を植え付けるなど、様々な
テクニックでマゾヒストを翻弄し、性的陶酔に至らせたのであった。

 Y本は、「エロのS平」と呼ばれるほど性的なことは何でも好きで
あったが、特に蝋燭とアナルバイブについては高度の専門性を有して
いた。
台風で停電した日に、灯りとしてつけた蝋燭の妖しく揺らめく炎に
魅了され、蝋を自らの手や足、乳首、陰茎に垂らしてみたことが、
性の目覚めであった。もちろん西洋蝋燭は熱いから、大変な思いを
したのだが、温度の低い和蝋燭があることを知ってから、蝋燭を
どのように垂らせば性的快感を得られるのか、自分の身体を使って
確かめていた。
 とはいえ高校生の頃はそのような趣味を公にしていなかったのだが、
大学に入って、サークルの男たちに精液便所にされてからは、蝋燭責め
が好きなことをカミングアウトし、蝋燭責めを受けた。
 また、精液便所にされる際に、様々なアナルバイブを突っ込まれた
のだが、どのような形状のものが快感を得られるか、やはり自らの
身体を実験台として試行錯誤していた。
 そのような成果をいつか他人にも試してみたい、と彼は思っていた。
彼は典型的な、M性とS性が同居するタイプだったのである。

その2人の餌食となるのがKである。
 Kについては、インターネットの掲示板に「父Hとセックスしていた」
などと面白おかしく書かれているが、そのようなことはなかった。
彼は年端も行かぬ少女が好きであり、「ダーキニー」と呼ばれた
どこからか呼び寄せた複数の少女たちと酒池肉林の生活を送っていた。
それを録画した動画を見ながらKは自慰をすることを日課としていたが、
その様子を偶然発見したY岡は、Kを脅迫し、自らの縛りの手にかける
ことにしたのである。もちろん、Y本も参画させて。

 太ったKの身体は、縄がよく映えた。
 また、Y本が垂らした蝋燭の赤い蝋もよく映えた。
 Y岡の熟練した技術とY本の研究は、KのM性を開発していった。
そしてKは、公共の場での調教を望むようになったのである。

 最初は縛ってアナルバイブを入れて、その上に服を着せて買い物に
行かせた。だんだん物足りなくなってきたため、その状態で東京地裁に
行かせた。それでも物足りなくなってきたため、近所の公園に首輪と
リードをつけてKを「お散歩」させるようになった。
しかしKはそれにも物足りなくなってきた。彼のM性は底なしだったのだ。

KがY学院大学へインターネットによる業務妨害の実情について講演しに
行ったことを契機として、Kの大学などへの講演は次第に増えていった。
そこでY岡とY本は、ある決意を固めた。
 ある講演会の日、Y岡とY本は後学のためにKに同行したいといった。
Kは快諾した。Kが教室に到着し、大学関係者との打ち合わせをした後、
講演開始時間になって、Y岡とY本はアクションを起こした。

 教壇に立つKを襲い、猿轡と手錠をはめたのである。

 一通りのことが済むと、Y本は大きな声でマイクに向けて話した。
「予定では『インターネットによる業務妨害の実情』についてKが講演する
ことになっておりましたが、予定を変更し、我々によるKのSMショーを
ご覧いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。」

 Y岡はパンツ姿にしたKを手際よく縛り、いくつかの鞭から適切なものを
選んで、Kを責めた。Y本は蝋燭に火をつけ、蝋をKに垂らした。それと
同時に、あらかじめ見繕ってきたKのアナルに合うバイブを、Kのパンツをずらして
アナルに静かに入れた。

 太ったKの肉体に食い込む縄や鞭、鮮やかに肌を彩る蝋、アナルの快感でひくひく
と動かしているKの尻、そして時々大きくなるKの喘ぎ声……講演聴講者は、
その淫靡な風景に酔った。
 聴講者は、インターネットによる業務妨害の実情について聴くことが
できなかったが、それに不満をいうことはなかった。むしろ、一連の行為が
終了した後、スタンディングオベーションをもって法律事務所Cのメンバーを
称えたくらいであった。

 今日も、インターネットに関する弁護士の講演がどこかで開催される。
しかしその講演は、実は弁護士が調教されるショーなのかもしれない。

挿絵

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