マヨケーがポアされたため、現在はロシケーがメインとなっています。

恒心文庫:糞糞製造機

提供:唐澤貴洋Wiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

本文

休日にもかかわらず、私は某大学に駆り出され、担当する講義で学生に課したレポート課題の採点を行っていた。

『――石油の起源には諸説あるが、現在最も有力視されている説は、以下の通りである。
"百万年以上の長期間にわたって厚い土砂の堆積層に埋没した生物遺骸は、高温と高圧によって油母 (en:kerogen) という物質に変わり、次いで液体やガスの炭化水素へと変化する。
これらは岩盤内の隙間を移動し、貯留層と呼ばれる砂岩や石灰岩など多孔質岩石に捕捉されて、油田を形成する。この由来から、石炭とともに化石燃料とも呼ばれる。(Wikipedia『石油』より引用。)"

要約すると、太古の生物の遺骸が長い年月を経て石油になるのである。

ということは、石油エネルギーの源は植物の光合成にあると言えよう。
地球上のほとんどの動植物が、植物が光合成によって固定された太陽光エネルギーによって活動していることは周知の事実である。
これはすなわち植物が固定した太陽光エネルギーが石油の化学エネルギーに置き換わっているということである。

ところで、現代社会は石油に基づいているといっても過言ではない。乗り物の燃料、火力発電、プラスチック製品、アスファルトなど、我々の生活を支える極めて多くのモノは石油に由来している。[要出典]。
これは言い換えると、われわれ人類の現代文明は、大昔に生えてたそのへんの葉っぱとか雑草のおこぼれを預かっているにすぎないということだ[要出典]。
そう考えると人間ってとてもちっぽけでつまらないね[要出典]。絶滅したらいいのに[要出典]。ではさようなら単位[要出典]』

まったく、Fランクのボンクラ共はまともな文章すら書けないのか。
提出された山のようなボンクラレポートの中でも飛び抜けて出来が悪かったこのレポートに大きく「再提出」の赤文字を書き、
「糞ウィキペディアを出典扱いするな。アホ、ボケ!」と小声で罵った後、大きくため息を付いた。

「やれやれ。その辺の葉っぱとか雑草だったらまだましだったよ。つい先日、とんでもないことを知ってしまったんだから。」

---

---

先日のこと。

「君に面白いものを見せてあげよう」

と、知り合いの会計士Mに誘われた。
ついていった先にあったのは、東京都港区虎ノ門の某ビル4階。
こんな薄汚れた何の変哲もないビルに一体どんな面白いものがあるのだろうか、と訝しげに思いながら、Mに促されるままに目的の部屋のドアを開けた。

「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!…)」

部屋の大部分を占めんとする極太のパイプの真上に、全裸の醜い中年小太り男が吊るされ、その足はM字開脚になるよう縛られていた。
男はけたたましい悲鳴をあげ、その汚らしいイボまみれで黒ずんだ尻から、轟々と鳴り響くナイアガラの滝のごとく下痢を垂れ流していた。
時々赤い血が混じっているのが見える。きわめて高圧で下痢を放出しているからひどい切れ痔になったのだろうか。男の垂れ流す下痢は、真下の極太のパイプへと流れこむ。
特筆すべきなのは、男の垂れ流す下痢から漂う臭気である。ヒトの糞便とはかけ離れた臭気――石油の臭いがするのである。
あまりの光景に呆然とした私は、下痢の飛沫が顔にかかっても拭うことすらできなかった。

Mは、完全に思考が停止した私に向かって熱っぽく語り始めた。
「面白いだろう。この男、名前はTって言うんだがね。
簡単に言うと、この彼が、全世界に流通する石油の全てを産出しているのさ。
フル稼働させたら、一ヶ月でおよそ40298億バレルの石油を生産できる。今のところ、枯渇する様子はない。どうだい、すごいだろう。
そうそう。Tが攫われたりでもしたら大損害だからね。この辺り一帯は警察に守らせてるんだが、まだ不安だねえ。

――君はもう察したかな。そう。石油が枯渇するなんのはデマなのさ。もっというと、太古の動植物の遺骸が石油になるなんてのはできの悪いファンタジー小説もいいところだ。
あんな馬鹿げた説を信じ込んでいる連中は――おそらく君もこのTを見るまではそうだったんだろうが――想像力が豊かでいいねえ。
だが現実はそんな美しない。この出来損ないのTがひり出す下痢こそが現代社会の礎なのだよ。
下痢に縋って生きているくせに、綺麗に着飾ったり、美食を追い求めたり。人間ってのは滑稽な生き物だねえ。
ま、Tが死ぬまでは――すなわちこの"油田"が涸れるまでは――人類は安泰なんじゃないかな。ワッハッハ」

にわかには信じがたいことだが、この醜いTの垂れ流す「下痢」こそが全世界に流通する石油であり、われわれ人類の現代文明を支えているというのである。
一体どうやってMはこの"油田"を発掘したのだろうか。"油田"はどうやって産油し続けているのだろうか。
なぜ人間が石油を産出できるのだろうか。垂れ流す下痢の量は明らかに腹の体積を超えているが、いったいどうなっているのか。
相対性理論を考慮した場合、質量保存の法則が厳密には成り立たないということはぼんやりと知っていたが、世界中のどこを探してもTの垂れ流す下痢について合理的に説明できる物理学者はいないだろう。

受け入れがたい事実というものにも限度があるだろう。ふざけるな。考えてもきりがない目の前の不条理に対して5周くらいした怒りが沸き起こる。
腹が立ったが、どうすることもできない。とりあえず私は、悲鳴を上げて失神することにした。

---

清々しい朝。あなたが一晩中顔を埋めていた枕カバーの合成繊維は、Tの下痢である。
爽やかな朝日を取り込もうと手にしたカーテンもそうだ。この瞬間、あなたはTの下痢を手にとっているのである。
出かける前にひとっ風呂と、ポリプロピレン製のシャワーヘッドを手に取る時。あなたは全身にTの下痢を浴びているのである。
お気に入りの洋服を着る時。あなたはTの下痢を得意げに身にまとっているのである。
ガソリンスタンドで給油する時。あなたはTの下痢を愛車に注ぎ込んでいるのである。
無論、握りしめた愛車のハンドルも、大部分はTの下痢である。

現代人は、誰一人として例外なくTの下痢で覆われているのである。
この事実を公表することは気が引ける。が、私だけが苦しみ続けるのはもう嫌だ。
事実を知らない連中も、私と同じ暗澹たる気分に浸るべきなのだ。

もちろん、この駄文を書いてる私の指が触れているキーボード。これも、Tの下痢である。あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)

リンク

恒心文庫
メインページ ・ この作品をウォッチする ・ 全作品一覧 ・ 本棚 ・ おまかせ表示