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恒心文庫:第2章 陰の者達 死の修学旅行 編

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本文

第2話『Dead or Fugu‼』

5月23日 晴れのちわからない

修学旅行の日、目が覚めると俺たちは見知らぬホテルに連れて行かれていた。
(バスで寝ていたはずが…ここは、どこだ?)
宿泊先のホテルに、着いたのだろう。多分。

広い部屋の中に32人の俺のクラスの人達がいる。
そして、部屋には33人分のベッドが壁際に、等間隔に設置されている。
まさか、俺はクラス全員とここで寝なきゃいけないのか。
おいおい、女子もいるじゃないか。あれは非常に面倒だ。
俺は自分の存在を知られないように、部屋の中を調べながらヒデトシとリョウジを探した。

(俺の教室より広いな。卓球場ぐらいか?いや、剣道場か?)しかし、ホテルにしては殺風景すぎる。インテリアもない。床も、壁も、白く無機質だ。まるで映画で見た実験施設のようで不気味だ。胸騒ぎがした。

部屋の中に6つの冷蔵庫がある。しかし、牛乳やチョコやカレールウなど、料理の味付けをするものは全て揃っているが、料理をする上で必要な具材がフグとニンニクしかない。どういうことだ、これは。

「なんだこりゃ?」クラスの男子が何かを見つけたようだ。

【7日間、フグだけを食べて生存せよ。調理法は問わない】

その紙は、部屋の中にある11個のちゃぶ台の上に置いてあった。
「生…存…?」「え!?フグってあの毒のあるフグ?」皆、騒然とし始めた。「でも、フグを調理してくれる人が来るんじゃない?その人を呼べばいいっしょ。」
「じゃこの紙は…」「ただの悪ふざけでしょ。」
「でも、呼ぶったってここには電話もないし、ドアも開かないから探しにもいけないぞ…」
「ここには内鍵がないな。誰かが外から鍵をかけたのかもしれん。そいつか、調理師が来るのを待つしかないな…」

俺の知らない誰かによって騒ぎはおさまった。
「モンハンやろうぜぇぇウェーーイィィ」「チュンチュン1!」俺の知らない所で別の騒ぎが始まった。うるせぇ。

俺はまとめサイトでも見ようかと思ったがスマホが圏外だった。いったいここはどこなんだ…
とりあえず俺は500円で買った『クソールトリガー』のゲームをやることにした。

5時間後

「さすがに腹が減ったな…もう22時だぜ…まだ来ないのか…?」
「すみませーーん!!!!誰かいませんかーーー!!!!」
男子はドアを叩きながら声を張り上げて叫んだが全く返事はなかった。
「皆、フグを食べるしかないんだ。…そして、死ぬんだ。全 員 こ こ で 死 ぬ ん だ よ!!!」 ペンをかじっていた男子が顔を引きつらせてそう言った。女子が泣き出した。あーほら面倒な事が起こった。

「ワイの出番のようだな」
その男は立ち上がり、低い声でそう言った。皆はその男に注目し始める。「お、お前は…!?」
「ワイは料理部に所属しているハセガワやで。ガチれば三ツ星も余裕。」

その男の風貌は奇妙なものだった。クラスで地味な存在だった彼は、修学旅行デビューを果たすべく、日サロに行った。その結果、彼の肌はいびつな形になりまるで腐りかけのジャガイモのように茶色く変色していった。
そして髪は金髪になったが、髪の全体のボリュームがなくなってしまったため、髪の8割を左側に寄せて、ワックスを左のところにつけて髪を左上の方向にツンツンさせてアシンメトリーを意識させた髪型にしたが、毛髪が後退してしまったため、右のデコが晒された状態になっている。
それでも彼は、自分の見た目がイケてると思い込み、ガッツポーズをしている。

間違いない。この男は「陽の者」だ。「陽の者」は、「陰の者」とは対極の存在である。「陽の者」とは、目立ちたがりで、陽の中で生きることを誓った者のことである。また、陽の者は自分がモテると思っており、異性に恋心を持つことがある。リア充(恋人を持つ者)はまぎれもなく陽の者だ。
しかし今の彼はとてもモテるような見た目になったとはいえない。なぜハセガワは陽の者になったのか。

彼は、人を引き付ける何かがあるのだろう。
自己中で自分に自信がある人は友達が多いと聞く。俺も小中学の頃はそうだった。

だからこそ彼は陽の者なのだろう。

「ワイは料理部で魚介類の研究をしてたからフグの消し方がわかるんや。ワイのオリジナル料理を食べれば皆生き残れるで。ガチで。」
アホかこいつ。フグの毒は「消える」んじゃなくて、「毒のある(可能性のある)部位を除去する」んだぞ。しかもそれを除去するのも膨大な知識や経験が必要なんだぞ。
ましてやそれをアマチュアが独自の研究でフグの毒を除去するなど無理ゲーでしかない。
もはやハセガワがやろうとしてる事は殺人だ。身が震える。
一応読者にも伝えておくが、フグの調理免許を持たない者がフグを料理する事は法律で禁じられているんだ。
ハセガワの真似をしたいときはちゃんと免許をとろうね!

しかし、皆はハセガワのウソっぱちを信じこんでしまっている。そりゃそうだよな。極限な空腹状態と、皆死ぬかもしれないという恐怖の中で、あいつが現れたんだから。ここで俺が反対しても、解決策を説明できないから意味がない。
「ワイのオリジナルフグ料理は、これだ!」

ハセガワ特製フグカレーの作り方
1、フグをみじん切りにする。
2、沸騰したお湯にカレールウを入れ、溶かす。
3、みじん切りにしたフグをフライパンで炒める。
4、※隠し味を作るために材料を混ぜる。
◎隠し味の作り方
・中濃ソース オタマ半分 ・コーヒー オタマ半分
・しょうゆ オタマ半分 ・牛乳 オタマ半分~一杯
・バター ひとかけら ・ニンニク ひとかけら
・はちみつ 大さじ一杯 ・焼き肉のタレ 大さじ一杯
・トマトケチャップ 少々 ・チョコ ほんの少し

5、炒めたフグと隠し味を入れて、ゆっくりと煮込む
6、盛りつけて、完成。
【危険ですので、絶対にマネしないでください。】

ハセガワの作ったフグカレーは、カレーと呼べるものではなかった。ライスの代わりにみじん切りにしたフグがあり、あとはニンニクのかけらがあるだけである。

「この隠し味がフグの毒を消してくれるんや。」とハセガワは言ったが、さすがにクラスの人たちはドン引きを隠せなかった。
「フグよりも、このカレーが毒なんじゃ…ないのか?」「肉が入ってないやん!」
「黙ってさっさと食え。食わないなら俺が全部食うぞ。」
三白眼のトビカゲという男は高速でカレーを口に運んだ。
その間0. 2秒。
「オイオイオイ」「死ぬわアイツ」
そしてトビカゲはわずかに息を漏らして言った。
「ヴッ…美味い」クラスの人たちは歓びの声をあげた。
「ウオオオオオオハセガワすげええ!!!」「このカレーうめぇぇ!!」「サンキューハッセ」「文句言って悪かった。謝るわ」

30分後

クラスの皆がカレーを食べてるとトビカゲが席をたち、腹をかかえて、重い足取りでトイレに向かおうとしていた。トビカゲの息は荒く、皆は心配になった。
「おいトビカゲ、大丈夫か?」急にトビカゲのケツから大量の血が出て、叫んだ。「ウ…ウボァアアーー!!」
「ハセガワァァーー!!!よくも、トビカゲを殺しやがったなぁー!!!」そいつはハセガワの首を絞めながら言ったが、クラスの人たちが次々とケツから吐血して倒れてくと同時にそいつも倒れていった。
「トビカゲはなぁ…俺のウボァアア!!」「嫌だ 死にたグボァアア!!」「嫌ァァ吉田死んじゃウボァア」「ママー!助けてマヴァアア」「ァアア」「ウボァア」「ウボァ」


「やれやれ、危ないところだったな。プハッ、これが痔・エンドってか?プハハハハ!!おもしれー超おもしれー」
ハセガワは死体の群れを眺めながら歩き回ってひとり言を言った。

「ん、お前ら、何だアレ食ってなかったんか。」ハセガワが俺たちを見つけたようだ。俺は挑戦的なまなざしをハセガワに向けた。
「フン、俺たちは食に対して興味がないのでね、10時間何も食べなくても腹は空かないのさ。」
俺たちの言葉にハセガワは笑ったあとこう言った。
「プハッ、と なると お前らは最初から気づいてたんだね。この結果に。」

そしてリョウジは突然怒りをあらわにする。

「そうだ!何がハセガワカレーだ!あんなことしなくても他に救える方法はあっただろ!?お前はクラスメイトを多く失ったんだぞ!お前は悲しくないのか!?」
ハセガワは人をあざ笑うようにこう言った。

「俺は嫌な思いしてないから。それにこいつらが死のうが知ったこっちゃないわ。だって全員どうでもいい人間だし。それはココロの繋がりがないから。つまりこいつらに対しての情などない。」
「お前、人の命をなんだと思って…」
「へぇ、じゃ何であのときクラスの皆に警告しなかったんだ?それをしないで見殺しにして、今さら人の命だなんだの騒ぐお前は、偽善者じゃないのかい?」

ハセガワはクラスの皆がいなくなった途端急に口調が変わったようだ。エセ関西弁キャラは作り物の姿だったのか。

「ハセガワ、お前はなぜあんなクソみたいな調理法で、皆を美味いと言わせるカレーを作れたんだ?」
「俺は、一番最初にした自慢話だけを本当の事にするという異能力を持っている。フハッ、おまえもその腹が空かないという能力とやらで夕食から生き延びて来たんだろ?」

「ご名答。俺の【ノットイーター】さえあればフグを食べずに生き延びられるぜ」

空腹に耐えられる能力というのは…実はダミー…!
俺の本当の能力はハセガワとは違って人に知られてはいけないものだから。そしてその能力で俺は惨劇から回避した。

そう、俺の本当の能力は…

「俺がした自慢話の中で本当の事になったのはどれか。それは一番最初の「ガチれば三ツ星も余裕。」って言ったところだ。あとは全部ホラ。まっ、人間ってのは、飯が美味いと思わせれば毒はないと思い込んじまうのさ。」

「じゃ俺は脱出でもしようかね。」
ハセガワはフライパンでドアを叩きまくった。ドアにヒビが入ると警報がなり、ドアから防護服の人がやってきた。
「ワイをここから出してくれや。」

「No.28 ハセガワ。施設を一部破壊した行為によってあなたを危険人物とみなし、処罰を開始する。」

「なんや、交渉決裂か。なら、倒すまでや!」ハセガワはフライパンの取っ手を両手で持ち、フルスイングした。
「ワイは武器を持てば最強ォオオッ!!!」
《 暴打者:ホームランバッター 》
その時、防護服の男はペンのようなものをハセガワの左の胸に当てた。カチッという音がすると、ハセガワは消えていった。ハセガワはどこにいったのか訪ねると、
防護服の人はこう答えた。

「彼は冥王星に送ったよ。」

「冥王…星…!?」

「ここから脱出しようなんて思わない方がいいよ。まぁ脱出だけなら水星で良かったんだけど、彼は私を殺そうとしたから一番刑の重い冥王星送ったのさ。まぁ、君たちは 最 後 ま で 生き残れば地球に帰してあげるから、がんばってね。」
そう言うと、防護服の男は去っていった。

「片付けするか…やれやれ…」俺たち3人で、部屋を掃除した。俺は死体をベッドの下のケースの中に入れ、ヒデトシは飛び散った血の処理、リョウジは食器洗いをした。2時間かけて掃除を終えると、俺たちは腹が減ってしまったので、3人でチョコを分けて食べた。もうチョコはなくなってしまった。

「俺たちは、なぜここに連れてこられたんだ?」
「私もわからないな。フグを安全に食べる新しい方法を探すために私たちを実験にしてるのか?ならなぜ他の惑星に送る?私たちは宇宙人に売られたのか?」
「落ち着けヒデトシ。それより、俺たちがフグの毒を消して食べることはできないから、フグを食べずに生き残る方法を考えよう。」

時計の針が0時を指し、1日目が終了した。
6日がたった。
あの惨劇の後、俺はこのデスゲームの真意に気づいた。
そもそもこれは「フグだけを食べて生存せよ」と書いてある紙があっただけだった。
しかしその紙を読んでクラスのほとんどが「フグを食べねば」と躍起になって死んでしまった。
フグを調理をしても死に、フグを食べないで生き延びてもどうなるか分からない。
そんな2択の中で、俺はわずかに希望の残ってる後者を選んだ。
これがこのサバイバルゲームの真意。大衆に飲まれず、情報に惑わされずに、裏を読む。そういう者を選抜するために奴等はフグをデスゲームに使ったんだ。

そう思って俺たちは七味とうがらしやマヨネーズで空腹を
しのいだ。PSPも充電できたので退屈することはなかった。しかし、調味料も、冷蔵庫にあるものも全て底をつき、
もはや限界だった。ヒデトシは空腹に耐えられず、自力で毒のある所を切ろうとしたが、失敗して毒で死んでしまった。

俺は生き残る方法は1つしかないと、そう思った。

「リョウジ、もう生き残る方法が、あと1つだけしかなくなってしまった。それが…何だと…思うか?」
「僕と、ダル井のどちらかを…食べなければいけないってこと…?」
 「…そうだ。」
「や、やめようよ そんなことは!だってこの小説、全年齢対象なんだよ!少年だってこれを読むんだよ!PTAに怒られたらやばいって!」
「うるせェ!さっさと俺の食糧になれー!」「ウワァアー!」

〔自主規制により、お見せすることができません。〕

俺はリョウジのおかげで最後の一日を生き延びることができた。すまない、リョウジ。
生きるため しかたなかった。
時計の針が0時を指し、7日目が終了すると、今まで開かなかったドアが開き、俺は奥に導かれた。「やった!俺は生き延びたんだ!このドアを開ければきっとあの青い空が広がっているんだ!」俺はそう信じて、生きる希望を胸に抱き、ドアを開けた。


そこに広がっていたのは、あの無機質で真っ白い殺風景な部屋だった。
ちゃぶ台の上には【7日間、雑草と賞味期限切れの弁当だけを食べて生存せよ。】と書かれた紙とビニール袋に包まれた弁当があった。
俺は絶望し、ビニール袋を被り、縛った。呼吸困難になったその時、
俺は目が覚め、バスの中にいた。
バスの中では皆寝ていて、静かだった。(何だ、夢だったのか。)俺はウォークマンで音楽を聴きながら外を眺める。バスの窓の向こうには木々が揺らめき、暖かなライムイエローの日差しが俺たちの側の座席を照らしている。俺は、本当に日常へ脱出できたんじゃないかと思った。
例えそれが夢から覚めた事だとしても。
旅館が見えてくると、バスガイドの声がマイク越しに聞こえ、皆は目が覚める。後ろから誰かの会話が聞こえてくる。
「今日の晩ごはんフグのさしみじゃねーか!うまそー。」
「ねーほんとたのしみー」
俺はとっさに窓の外を見る。
「ふぐ 料亭」 と書かれた看板があり、バスはそこで止まった。(やめろー!嫌だあああー!死にたくないー!)
俺は頭を抱え、絶望した。

悪 夢 は ま だ ま だ 続 く・・・
                
                   事はなかったよ。

この作品について

チンフェカレーを題材にした作品。ここではチンフェがゲスト出演した第2章第2話のみ掲載しました。

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