恒心文庫:神秘の赤玉
本文
深夜。
浅草寺の某ビル。
スーツ姿の小太りの中年男性が、人目を避けるようにコソコソと入っていった。
しかし様子がおかしい。
その眼には理知的な光が灯り、その身には高級スーツを完璧に着こなしている。
その佇まいは、我々の記憶にある姿とは程遠い。
向かい側のビルで張り込みをしていた我々は、その男性がビルの一室に入ったのを確認した。
どうやら、モミアゲの生えた紳士と会っているようだ。
しばらくすると、小太りの男性はズボンを下ろし尻を出した。
紳士が割り箸を男性の肛門に突き入れる。
またしても我々は肛門性交に立ち会うことになるのだろうか――?
その時突然、男性の尻が光りだした。
もしや彼はホタルだったのか? いいや違う!! そうではない!
紳士が光り輝く割り箸をくるくる回しながら引き抜く。中年男性のアヌスを拡張しながら出てきた丸い――――
ああ! それは林檎!!
旧約聖書にて知恵の実と謳われし、禁断の果実!!
知恵の実を食べたことによって、人は知恵を得た!!
ならば、人が知恵を失うことによって、知恵の実を作り出すことは理論的に可能である!!
この男性は、自らの叡智と直腸粘膜を削り、固め、その御業によってこの神秘の赤玉を創造したのだ!!
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」
見よ!!
我らが神の御姿を!!
叡智を絞り尽くした! 白痴の如きその御姿!
濁った眼! 流れ出る鼻水と涎!! 半開きの口!! 締まりのない躰!! 崩れたスーツ!! 汚れた靴!! 噴出する糞便! 糞尿! 汚物!!!!
見よ!!
我らが神の偉業を!!
神の叡智! 至高の赤玉!
聖粘液と聖便と聖尿によって覆われし、カリカリの衣!!
これこそが、りんご飴の概念を変えた究極の逸品。
Three Million Sweets Mafiaの看板商品である。
深夜。
浅草寺の某ビル。
スーツ姿の小太りの中年男性が、人目を避けるようにコソコソと出てきた。
挙動不審な態度と腐った魚のような眼。ほんのり漂うすえた臭い。
その佇まいは、我々の記憶通りの、あの弁護士のものだった。
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。