恒心文庫:唐澤洋「唐澤貴洋とコーラン燃やしつつムハンマド馬鹿にし~た~♪」
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人だかりの出来た虎ノ門ヒルズ、その天高くそびえる頂きで誰かが叫んでいるのを唐澤貴洋は目にした。
澄み渡る蒼穹から照りつける太陽。ジリジリと照りつけるその影を遥か下方、コンクリートの地面へと投げかけるが如く叫び声を上げるのは、どうやら父の姿をした何者かであった。
唐澤貴洋はただでさえ小さいつぶらな目を潰すかの様に凝らすと驚愕した。
どうやら父の姿をした何者かは、父であった。
呆然としている貴洋の姿が見えたのか、父は柵にかけていた手を地面へと向けて振り始めた。たるんだ腹に柵がめり込んで軋み始める。
その日に焼けた顔は逆光で真っ黒に染まり、しかし両目だけはギラギラと白く輝いている。
父は続いて白い歯を剥き出しにして笑みを浮かべると張り上げる様に大きな声で叫んだ。
「俺も唐澤貴洋になってみてえなあ!!」
父はそう叫ぶやいなや柵に足をかけ、飛んだ。周囲で叫び声が上がる。父が笑いながら向かってくる。ただ、先ほどからその瞳が全く笑っていないのを、貴洋はぼんやり見つめていた。
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