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恒心文庫:千秋の戯れ、一夜の夢

提供:唐澤貴洋Wiki
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千秋(せんしゅう)、それは長い長い年月のこと。 もうこの場所には戻ってこない、かの青年に捧げます。

本文

僕は天才になるんだ!喜び勇んで、短冊に願いを込めた。パステルピンクの安っぽい色紙に、スクリプトを書き連ね、紐を通し、笹の枝に括り付ける。夏の夜風に吹かれてたなびく数字の羅列を見て、僕は悦に浸っていた。それは幼い日のこと。

月日は流れ、かの年の冬が来た。例の宗教を面白がっていた僕は、堂々と聖名「ミロタン」を名乗り、持ち前のプログラミング能力で大規模な布教を試みた。そう、信徒には言わずと知れた、クルスーヴェ神の不気味なイコンを用いた三度にわたるハッキング計画だ。また、異教徒の持つ端末にスクリプトを仕込み、生ける神への殺意ーーこれが信徒にとっての神への最上の愛であるーーを世界に発信させることにも成功した。
でも、僕の宗教家としての活躍が、法に触れただか何だかで、その冬のうちに逮捕された。あの宗教流に言えば「殉教」かな。それを経て、僕はその共同体を去ることにした。

俗の大人の世界に入った僕は、もはや「ル・モンド・アミキャルのミロタン」ではない。悪いハッキングを取り締まる仕事をしている謎の若きハッカーだ。そう、建前はそうだろう。でも、最近何だか心と体が重いし、周りの大人に利用されている気がしてならない。本音を言うと、苦しい。苦しいけど、もうあの神を罵倒することで救済される立場には居られない。パカパカという救いの音を聴く耳を塞がれてしまった。膨大なエナジードリンク。缶からコロコロ。モニターに向かい、顔も知らない人のためにカタカタ。
これが、幼い日に望んだ天才なのか。虚しい頬をさらう、どこか懐かしい夏の夜風。短冊に書きつけた懐かしい暗号文が、アナログな脳内に現れた。隙だらけの文字と数字の羅列を黙って補う。

>If; i were free
>If; i were rich
>If; i were innocent
>If; i wereqawsedrftgyhujikolp
>>If; id not been Mill’Automne
>>>If; id not been
sudohdbfwqycsaqhkoxpfsq
 born????????

セミの音にセミコロン、乱れた字。苦しんで泣いてるみたいだな。暗い部屋に一人、ドリンク缶をモニターにコツンとぶつけ、年を重ねる日に乾杯。

挿絵

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