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恒心文庫:事故物件製造機

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

業務開始時間の30分前は男にとっての定刻だった。
通いなれた職場に今日もその定刻通りにたどり着いた。
都内有数の一等地、六本木にそびえたつ巨大な高層ビルは、
ここを仕事場とする全ての人々が世間から称賛と尊敬の眼差しを浴びる事を証明してくれる。

壁に貼り付けられた奇妙なシールを見て男はため息をついた。
数日前、一軒の法律事務所がビルに入ってからおかしな輩が仕事場の周りをうろつくようになった。
彼らは日常的にビルにしょうもないいたずらをしてはその光景を、あるいはビルその物をスマートホンで撮影し、笑みを浮かべながらその場を去っていく。
自分の会社の郵便ポストにも時たまおかしな文章が放り込まれる。

厳重なセキュリティを通過し、彼はビルの案内板に書かれた諸悪の根源を名前を睨み付けた。
「法律事務所クロス」
(このビルのセキュリティがここまで厳重ではなかったらどんなことになっていただろうか?)
嫌な想像を頭からかき消すと男は仕事場に向かっていった。

唐澤貴洋は始業の10分前にビルに着いた。
ビルの住人達の冷ややかな視線を浴びながら彼は仕事場へと向かっていく。
「自分は弁護士だ、こいつらとは違う。」
エレベーターの中でそうつぶやくことで、彼は嫌な気分をかき消した。

突然稲妻のような便意が彼を襲った!!
排せつ物は既に肛門の出口の直ぐそばまで迫っていた。
身をかがめることで何とか場をしのごうとした。
決壊寸前の堤防と化した下半身、彼の直感はあと1分持たない事を告げた。
しかし彼は笑みを浮かべた、エレベーターが既に4階を通過していたからだ。
(ここから7階までは1分どころか30秒もかからない。
そして経験上、この時間にエレベーターに乗るやつは滅多にいない。
勝った、俺は事務所のトイレでウンコをし、何事も無くパカビジに精を出せるのだ!!)

「5階です。」
しかし、無情にもエレベーターは停止し、鳴り響いたチャイムと共に便意は限界を迎えた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )
ドアの向こう側にいたのは若いOLだった。

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