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恒心文庫:一般男性脱糞シリーズ

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

プロローグ

確かに己の怯懦に依るところがあったのかもしれない。しかし、どうしてであろうか。今日程に全身が硬く蝕まれて、且つ緊張と言う名の桎梏に囚われる「怒りの日」たるものは、己を紆余曲折経たせた真理真相の有象無象を超克した、遥かなる聖域そのものである、と、当職の中ではそう俎上に載せて差し支えはない。
今日は学校のクラス替えである。一つの慣れ親しんだテリトリーから外される、この疎外的な虚弱は当職を懺悔に暮れさせたが、それも過去のもので、今や新たなる希望を抱いて、ゆめゆめ畏怖を忘れない調子で、クラス発表の結果が貼りだされているもとに向かって行った。

発表結果は、簡素的に一枚の紙に纏められていて、それも大広間などでは無く、一教室に面した廊下に貼られていたのだから、突拍子もない次第である。しかし、それが一体何の作用を及ぼすだろうか。貼りだす場所なぞ自由なのだから、此方側が気にするにも及ばないのではないのだろうか。
それを杞憂として捨て、自分は期待と敬仰という二極化した情念を胸の内に秘めていた。そして、紙の前まで来ておきながら不思議と背を向けてしまった。其れも反射的に、である。
当職は一体、何に怯えてるのだろう―――否、此れは心底内奥に存在する現実否定の胸懐、終わりなき虚構―――考えてみただけで荒唐無稽そのものだ。自分で自己の中を否定しておきながら、結局は現実から逃げたいだけではないのか。空想世界に潜り込んでしまうことで、「紙に書かれている結果を知りたくない自分」を確立させてしまっている訳ではないのか。そう考えると、余計に自己自身の浅はかな実存が目に見える。
そんな気持ちを持ってしまったからであろう、抗鬱剤のように言葉が出走った。スラスラと、流暢でありながら内容を韜晦させた音韻が立て並ぶ。
「クラス替えナリ。今年は何組ナリか。」
するとどうだ、同時に振り返った当職は結果を見た。6年5組まで存在していたが、1から3組は合計40人、そして4組は合計39人なのに対して、5組には<唐澤貴洋>と言う名が書かれているだけで合計は1人と言う始末だ。
何という虚しさであろうか。しかし、"自分は弁護士だ、こいつらとは違う"、そう強がって思い込んだ当職は颯爽と5組の教室へ足を運んだ。

基本

中学生になっても、当職のクラスは当職1人のみであった。まるで特別学級のような思わせぶりで、自分もやるせなさが生まれる。だが自分は半分割り切っていており、この悲愴無慙な現実を受け入れていたのである。それも、「自分は弁護士だから、他の奴らとは違って成功者だ」と言う、須臾にして消えそうな自信を心に結び付けていたからこそ、そのような受け入れが可能だったのかもしれない。
今は先生とワンツーマンによる授業中。ロッカーは木製で年季が入っていて、廊下に面した壁には緑色のボードが何もポスターが張られていない裸体の状態を指し示していて、極めて物寂しいこと此の上ない。

するとどうだ。当職の腹が急に緩くなって、緩徐的に中の<モノ>が出そうになったのであった。
此れは何たる事態であろうか。腹痛が当職を縛り付けるのだ。しかし、当職にはもう一つの難点があった。其れは誰彼との会話は慣れていない点である。
コミュニケーションを取るのが苦手な当職にとって、この腹痛時、先生に対してトイレに行かせて貰う事を要求する旨は言うに言えない恥ずかしい思いそのもので、背水の陣に立たされている、と言う表現が専ら近いだろう。しかし、背後の水は自己が生み出した現象、迫りくる敵兵は自己が勝手に苦手としているコミュニケーションツール的有効利用の相場であるため、或る意味では自分で自分の首を絞めている。
しかし、授業中にソレを出してしまっては、中学校生活としてでも立場が危ういだろう。何故なら、他の中学生どもはこう言った失態を犯した存在を貶し、ゴミを見るかのような蔑んだ眼差しを向けてくるのがオチであるからだ。授業中に出したら中学生活終わるナリ…、そう内心感じたと同時に、自分の身体の中でも猶予が迫っていることを感覚的に理解した。
流石にこれはマズい、そう反射的に悟った自分は、とある一つの案に達した。それは僅か数秒後、呆気なく実行された。そうだ、大声を出して音をかき消すナリ、と。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「唐澤貴洋くん、ど、どうしたんだいきなり大声出して」
先生の声が響いた時、自分が上げていた奇声で紛らわせて脱糞音をかき消そうと思っていたが、声を上げることばかりに気を取られ、脱糞そのものを忘れてしまっていた。この時、心が青ざめて行くのが良く分かった。取り敢えず何でもない旨の事実を伝えよう―――そう思った時であった。

「なんでもな」ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!

変則

以前と同じように、再び授業中に腹を下してしまった。しかし前回の過ちを経た当職にとって、今回は新たなる手を導かないといけないのであった。
授業中に出したら中学生活終わるナリ…確かにそう思った。でも、他に方法が思い当たらないのだ。確かに先生に対して一声掛ければ全て済む話ではあったのだが、当職にそのような勇気は無いし、その勇気を無謀と称するような卑劣極まった人間であることは重々承知しているので、改めて自分の不甲斐無さに心を痛めた。結局、痛めたところで何も思いつかない、他の方法手段なんて見つからないのが結果論である。
再び、同じ手段を執るしかないのかもしれなかった。致し方あるまい、大声を出して音をかき消すナ……ん?臀部に異常な感覚が逼迫してきて―――それは一瞬の気の弛みであった。
ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!
やってしまった―――「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

「か、唐澤貴洋くん!!!」
先生の無常感極まりない声が教室内に響いた。もう、出遅れだ――――。

ヤーマン

こうなったら先生とコミュニケーションを取ろう、そう過去の臆病な自分とさよならを告げて、新たなる自分に至らせた。必死にコミュニケーション能力を得て、なんとか先生と会話する自分を生み出した。
当職はこれまでの失敗を背に、もう失敗はしないのだと言う確固たる自信を獲得した。まるで宗教的実存として神に全てを委ねる一個人の範疇として、そう言った論理が当職の歩む足を強めたのだ。
そして場はやってくる。今度も授業中、それでいて同じ状況だ。もう当職は何も怖くない。改めてこう思った。…そうだ、先生に言ってトイレに行くナリ、と。
「先生、トイレに行ってもいいですか?」
すると先生は、今までの授業とは異なったような調子で声を変え、当職の願い出に対してこう返答したのであった。
「駄目です」
否定的な言葉が出た瞬間、当職の「トイレに行きたい」と言う感覚は掃き捨てられ、その僅かな希望も消え失せた。もう、どうしようもない。そう諦観に至った瞬間、気が緩んでしまった―――。
―――ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!

嵯峨山と唐澤

今までは孤独な教室であったが、新たなメンツを迎えることと為った。名前は嵯峨山と言って、声はひ弱であったが、図体は当職と同じような身の熟しでいて、それでいて性格穏便、柔和な存在であった。
当職の隣に机が並ぶようにして、今までたった一人だった教室は多少賑やかになったと思う。無論、其れは自分の愚かな空想そのうえないが、そう思い込んで構わないだろう。と言うのは、嵯峨山は誰にでも優しかった、それは当職とて例外では無く、唯一不二の同じクラスの生徒として扱ってくれたので、此方も今までの失態の連鎖から抜けられたような快感である。
かつてトルストイも、人生論の中でこう言っていた―――人生とは幸福の志向である、と。幾多も連綿と続いた不幸の中、こう言った幸せにも出会えるのだから、何を隠すこと無く嬉しかった。

しかし、授業中の今、隣を見てみると、かの嵯峨山が身を震わせているのが分かった。きっと何かを我慢しているのだろう―――そう省察した当職も、急に腹痛がやって来た。
臀部がもぞ痒く、同時に腹部から音が出た。またである、しかし、唐突にして嵯峨山の声が教室に響いた。
それは彼の「うんこしたくなってきたなぁ……」と言う極僅かな程に小さい声に続くものであった。
「先生、トイレに行ってもいいですか?」
先生は彼の発言を受け、一旦授業を停止させて、すかさずこう言った。
「腹痛か?いいぞいってこい」
「すみません、いってきます」
彼の調子に続いて、当職も便乗して行く事を画策した。僕も行きたいナリ…、そう不意に思った。当職とて同じ状況であったが、先に嵯峨山が実行してくれると結果が分かるので動きやすい。此れが俗に言う日本人の集団倫理ってのは自分でも理解していたが、其れを乗り越えるだけの力は当職には無い。
自分も机を乗り出し、授業を再開しようとする先生に対し、当職も彼のように声を上げて願い出たのである。
「先生、僕もトイレに行ってもいいですか?」
すると先生は、嵯峨山に対してとは再び声を異ならせ、こう"宣告"したのであった――――。
「駄目です」
どうしてだ、どうして嵯峨山は良くて当職は駄目なのだろうか―――そう考えた時、またもや気が緩み、臀部に対しての気が回らなかった―――。
……ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!

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