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恒心文庫:ブリリアント

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

子は鎹。子に過ぎたる宝なし。
千の倉より子は宝。掌中の珠。

唐澤貴洋は私の生きがいだった。
彼が生まれてから自分が捧げられるものを捧げてきた。
必要なら命すら捧げたっていい。
それぐらいの気持ちで愛していたのだ。

幼い時は本当に可愛くて、可愛くて、そうお姫様みたいだった。
だからお姫様のように育てた。

嫁には甘やかしすぎだと言われた。
しかし、初めての我が子は愛おしくて仕方がなかった。
息子も母親より私に懐いて育った。

しかし、年月が経つと私達家族は崩れていった。
始まりは二人目の息子が産まれた後からだ。

私が唐澤貴洋に注いでいた時間は次男の厚史のために割かれるようになった。
残念ながら兄としての精神が育たなかった唐澤貴洋は、酷く厚史に嫉妬し顔を背けるという結果だ。

息子二人が一緒に遊びに出かけると、厚史だけが怪我をして帰ってくる事があったのを憶えている。それがほぼ毎回だった。
あの時は不審に思わずとやかく言わなかった。
あの時に注意しておけばと後悔してやまない。

唐澤貴洋の我儘な性格は中学生になっても治らない。
厚史とも全く心を通わさなかった。

さらに悲運なことに、この時期に唐澤貴洋は苛めを受けてしまうのだった。

我儘なだけなのはまだ良かった。
しかし、苛めを受けてからが本当に悲惨だった。
凄まじい家庭内暴力。
学校でイジメの犯人に立ち向かえない唐澤貴洋の鬱憤は、私達家族に向かい、全員犯された。

嫁は耐えきれずに警察を頼ろうとしたこともあったが、私はさせなかった。
呼ばなかったのは親の責任を感じていたからだ。

厚史は唐澤貴洋と違い、賢く優しい子に育った。その性格ゆえに両親の私達を庇い、家族の中で一番唐澤貴洋に暴行を受けた。
顔が腫れ上がり学校に行けなくなってしまうことさえあった。

私の家庭に訪れたこの暗闇の日々は突如として終わりを告げた。

厚史が死んだその日が、終わりの日だった。

あの日のことは今でも覚えている。
通夜の会場で唐澤貴洋は、私達にこう言い放った。
厚史を殺したのは「悪い者たち」だ。
悪い者達が厚史を死なせたんだ。

愚かしくも、その「悪い者たち」が誰か分かったのは厚史の遺書を読んでからだった。


お父さん、お母さん、もう大丈夫です。原因は僕です。約束してもらいました。安心してください。さようなら



私は唐澤貴洋と今も暮らしている。
親としての責任が残っているからだ。

(完)

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