恒心文庫:ピーナッツ 怖い(2018年)
本文
弟が消えた 僕の前から消えた
・・・いつの事だっただろうか
当職は酷いピーナッツアレルギーだった
食べるのはもちろん、触れる事ですらショック症状が発生し全身酷く腫れ上がるくらい重いものだった
弟も同じだった
一度うっかりピーナッツ入りの菓子を食べてしまい危篤状態に陥った事がある
これの原因ははっきりとは解明されていないし、治療法も確立されていない
当職達はピーナッツにだけは注意して暮らしていたのだ
ある日のこと、父が酔って帰ってきた
普段から凡そ正常とは言い難い父は酒に酔うと普段以上の気狂いの畜生と化す
当職と弟は居間でテレビを見ていた
父は帰ってきた時は非常に上機嫌だった
「おお、おお、かわいいのぉお前は」と当職に抱きついてキスをした────当職の全身に激痛が走る!!!
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!
ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」
父の口からはピーナッツの香りがした
!
恐らく酒のつまみに食べていたのだろう 当職は力なく床に倒れんだ
父は なんじゃ と当職に興味を無くし今度は弟に目を向ける 弟は怯え後ずさる
この態度がいけなかった
父は「それが帰宅した一家の主人に対する態度か!」と激怒し弟を殴りつける
そしてポケットからピーナッツの小袋を取り出すと弟の衣服を剥ぎ取り穴という穴にピーナッツを嵌め始めた 当職達がピーナッツに弱い事を知っていながら────!
口の中 目の中 鼻の穴 耳の穴 肛門 尿道 …
弟は声なき声を発し、死んだ
・・・
あれからどれだけ経っただろうか
当職は奇跡的にも一生全身水ぶくれ程度の後遺症で済んだが弟は消えた 僕の前から消えた
弟を殺した腐れ外道は警察と消防の調査に対して「謎の黒いモミアゲをした男が突然やってきてやった」と証言した
社会的地位のある父を誰も疑わなかった
当職は報復や折檻が恐ろしく何もできなかった
当職はあの事件を忘れた日などない
ピーナッツが弟を殺したのではない暴力が弟を殺したのだ
当職は弟を失い、いつか自分の力で弟のような犠牲者を出さない社会をつくりたい
人が人に優しい社会をつくりたいと思うようになり弁護士になった
もしつらくて寝れないことがあれば弁護士にメールしてみてください
あなたの抱えている悩みは解決可能かもしれない
必要なのは相談する勇気です
あなたの側にいる弁護士がいます
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。