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恒心文庫:パカ弁危機一髪

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

グサ。

グサ。

グサ。

一振り、また一振りと、乾いた木板にナイフが突き立てられる。そう、ここオランダヒルズ森タワー屋上では今、ちょっとしたゲームが開催されているのだ。

グサ。

ゲーム、というよりは、玩具、と呼んだ方が適切かも知れない。玩具の名はパカ弁危機一髪、あるいは唐澤貴洋。樽の中に収まった肥満弁護士めがけてナイフを突き立て、見事めった刺しにして殺したものの勝ち。ひどくシンプルながら、誰もが童心に返って遊べる。そういう玩具だ。

グサ。

また一人、参加者がナイフを突き立てた。残念ながら外れ。参加者はサジェスト汚染の如く罵詈雑言を並べ立てて悔しがり、一方の弁護士は「もうやめにしませんか」「到底許されるべき行為ではない」などと次の参加者を挑発する。

2783人の参加者たちは皆、思い思いの刃物を手に自らの順番を待っている。
痩身のデイトレーダーが。
無精髭の派遣社員が。
少年ハッカーが。
無職が。
大学生が。
会社員が。
蕎麦屋店員の中年男性が。
髭面のイケメンホモ弁護士が。
左足の壊死した公認会計士が。

中にはナイフ以外の凶器を持参した参加者もいる。
暴力に強い弁護士は日本刀を。
ゲジ眉の最上級教徒は警棒を。
自称視覚障害者の死刑囚は毒ガスを。
前公認会計士協会会長はドラム缶とコンクリートを。
オランダヒルズ森タワー屋上は、何でもありの無法地帯と化していた。

グサ。

そして今、一人の参加者がついに弁護士に刃物を突き立てた。男性器によく似た顔の参加者は、まるで弁護士に人生を狂わせられたかのごとく恨みのこもった形相で、短刀を両手で握りしめ、少しでも傷口を広げ内臓を損傷させてやろうと、その凶器を手もとでグリグリと捻る。先ほどまで「君は当職を殺すことができるのか」などと挑発を繰り返していた弁護士も、痛みのあまり「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」と苦痛の声なき声を上げた。

ところで読者諸兄はご存知であろうか。人間という生き物は、あまりに堪え難い苦痛に直面すると、嘔吐や脱糞といった生理的反応を示すのだ。この弁護士の場合、彼は様々な意味で人間ではなかったが、しかしこの文脈では人間であったらしい。つまり彼は後者の反応をみせた。すなわち(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )と脱糞したのであった。

狭い樽の中で脱糞したらどうなるか。答えはシンプルである。まるでこのゲームのモデルとなった往年の玩具のごとく、弁護士はその排便の勢いを得て樽から射出され、絶叫そして排便とともに蒼穹の彼方へと消えていった。

なお2783秒後、アメリカ空軍はそのレーダーで領空侵犯する未確認飛行弁護士を発見する。レーダー波の解析からその弁護士バッジが段ボール製の偽物であり、訴訟のリスクなしと識別。無事弁護士を撃墜したという。

挿絵

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