恒心文庫:タピオカミルクティー
本文
今、女性に大人気のタピオカミルクティー。
ミルクティーの中にマルメタピオカガエルの卵を入れたその奇妙な飲み物は、この法律事務所にも存在する。
もちろん、法律事務所Steadinessで飲まれるそれが、尋常のものであるはずもない……。
洋は事務所のソファーに横たわっていた。
机の上には、家畜用の排卵誘発剤と注射器。エビオスと亜鉛。
賢明な者なら、彼が何をしようとしているのかは想像に難くないだろう。
洋は文字通り、その身命を削ってタピオカミルクティーを作っているのだ。
やがて便意が限界に達した洋はヨロヨロと起き上がり、かたわらの洗面器にまたがった。
自身のアヌスからエイナスストッパー10を引き抜くと、卵子が大便とともに勢いよく吐き出される。
この日排出された卵子は27個。限界を超えた排卵により、洋の卵巣はボロボロだ。
崩れきったホルモンバランスのせいか、歩くことすらままならない。
今にも倒れてしまいそうな洋。
しかしまだ倒れるわけにはいかない。
タピオカの次はミルクだ。
洋はうつろな目で、自らの魔羅をしごきはじめる。
前の事務所のときには、一緒に働いていた弁護士たちのおかげで簡単に吐精できたのだが……。
Steadinessには彼らはいない。
洋は自分で自分を慰めなければいけない。
それが少し寂しかった。
いなくなった彼らを想いながら乳首を愛撫することで、ようやく洋は射精した。
こぼさないように洗面器の中に吐出する。魔羅をよくしごいて、最後の一滴まで絞り出した。
漏斗を使ってコップに注ぎ、太いストローを突き刺せば、タピオカミルクティーの完成だ。
貴洋はベッドの上で体を起こしていた。どうやら今日は少し調子が良いらしい。
その体はげっそりとやせ細り、豊かだった胸も見る影がない。
タピオカミルクティーを飲むように勧めたが、口移しで飲ませてほしいと甘えてきた。
タピオカをストローで飲むのには強い吸引力が必要だ。
ひょっとしたら、もう、そんなこともできないくらい弱っているのかもしれない。
そんな考えを面に出さぬように、洋はタピオカミルクティーをすすり、貴洋と唇を重ねた。
タピオカミルクティーのタピオカは洋の卵。その身を削って生み出した全ての生命の源。
タピオカミルクティーのミルクは洋の精液。その身を削って放つ生きようとする意思。
タピオカミルクティーのティーは洋の大便。その身を削ってひり出した生命をはぐぐむ土壌。
それらがいま渾然一体となって、貴洋に飲み込まれていく。
洋の大便に包まれ、洋の精虫が洋の卵と受精する。新たな生命。それを取り込めばきっと、貴洋も良くなる。
きっと……。
貴洋はタピオカを7つ飲み込むと、疲れて寝てしまった。
洋は貴洋の寝顔を少しだけ眺めたあと、部屋を出ていった。
次の排卵の準備をするのだ。
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。
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- 初出 - デリュケーinスバケー>>4 (魚拓)