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恒心文庫:セルフ・フェラチオ

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

朝の五時を過ぎたころ、東の空がだんだんと白く浮かび上がるのが常、しかし突如として東の方から立ち上がったそれは黒く、仄かに赤かった。
ペニスである。山脈の様にゴツゴツとした裏筋を張らせながら反り返るペニスである。
南アメリカ大陸の西に近く不意に立ち上がったそれは、しばらく日の出を遮るように脈打つと、徐々に膨らんだ先端部分を西へ西へと傾けていく。
時折思い出すようにして噴き出すカウパーが水平線に散り、薄く濡れた巨大な鈴口が、西の果てを睨みつけるようにして薄くヒクついている。
やがて激震。重く鈍い音とともにもたらされたその揺れは、人々の眠りを覚ますばかりか、そのまま彼らの意識を更に深くへと突き落とした。
真っ赤に膨らんだ亀頭、そのすぼまったカリの描く輪郭がオーストラリアの世界遺産『エアーズロック』、世界のへそを強かに叩いたのだ。
大地が砕ける。カンガルーもコアラもユーカリの葉も、ビル群も、そして人間も一緒くたにしてかきまざり、立て続けにして立ち上がった津波で文明が波間へと消えていく。
世界は恐慌に陥った。しばらくして気がついた人々は街中を落ち着きなく走り回り、テレビでは阿部首相が緊急会見を行い、ピュア虎ノ門の四階では弁護士が糞を撒き散らしながら叫ぶ。
その人々の先行きの見えない不安を表す様に、西の果てから灰色の雲が空を厚く覆っていく。
とぐろの様に渦巻く厚い雲はその内側で稲光を瞬かせながら、まるで生き物の様にうねり、事実生き物であった。うねりの中を掻き分ける様に、突如として、アヒル口が、あまりに巨大なプリプリとした艶やかな唇がぷるんと突き出される。同じように巨大な丸い鼻が、年齢を重ねた目尻が、ふくよかな輪郭が、とぐろ巻くもみあげを携えて広大な空を突き破るようにあらわれる。
年相応の落ち着きと年不相応の可愛さが不可思議に入り混じったそれは、元新日本有限責任監査法人常任理事審査部門長、日本公認会計士協会綱紀審査会委員、株式会社ひらまつ社外監査役、唐澤洋の顔面であった。
地表をスコールが襲う。巨大な顔面が荒い息を上げながら、その濡れそぼった舌先でねぶるようにして唾液を自身の唇にまぶしているのだ。舌先と唇から跳ねた無数の唾液が地を打ち、鼻から断続的に漏れる熱い息が、海を薙いでいるのだ。
それをよそに、巨大な会計士は丹念に丹念に、唇の表面に走る細やかなシワの一本一本を伸ばすようにヒチャリヒチャリと舌を這わせていく。
まるで職人のように。まるで達人のように。
そしてその十分に濡れた唇に、エアーズロックの上でヒクつくペニスの真っ赤な亀頭、そのパンパンに張り詰めた輪郭を近づけるのだ。
ズチュウゥ....
濡れそぼった音が地平線を越えて行く。突き出された上唇と下唇、その狭間から覗いた真っ赤な舌先の、チンコの鈴口をほじくる音が水平線を抜けて行く。
前後する顔面に、大気が鈍く震える。その前後する口淫に数瞬遅れて、厚い雲が重く波打ち、影がかった隙間隙間から稲光が覗いて光る。吹き荒れる暴風が青黒い海上に無数の白波を跳ねさせる。
この世の終わりかと、黒い顔を青くさせ土気色の顔をするオバマ、力無くへたり込み、頭を抱えて震える人々。
ふと、風が止む。
違和感に顔を上げる人々の視界に、雲間へとかえっていく巨大な顔面が映る。
そして、入れ替わるようにして震え出す地面。渦を巻く雲間、波打つもみあげへの向こうへと消えた顔面が、叫ぶ。
あ"っ"、、、あ"つ"ごお"お"お"お"お"お"お"
稲光とともに響き渡る雷鳴。もはや金玉と化して跳ね回る北アメリカ大陸と南アメリカ大陸がぶつかり合い、表面から小さい無数の影とともに振り落とされるオバマ。反り立つアンデス山脈が震え、息をするかの様に開閉を繰り返す先端から、瞬間、白いマグマが轟音を伴い噴き出す。若干黄色がかった精液が天球を覆い、そのまま地表へと落ちていく。
人々は影を落として降ってくる精液の向こう、黄色く輝く太陽を見ていた。

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