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恒心文庫:クリスマスキャロルの頃には

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

「言い子にしてないとサンタさん来ないぞ」
父親が彼に言う。

今年もこの季節がやってきたそうクリスマスだ。
今までと同じようにこの日を祝う。彼の家庭で当たり前の出来事だ。

しかし彼としては腑に落ちなかった。
彼はサンタクロースの存在を信じていなかったからだ。
毎年朝起きると枕元にプレゼントが置いてあった。
何度もサンタクロースの正体を掴もうと画策してきたがいずれも失敗した。
だからこそ今度こそサンタクロースの正体を掴もうと意気込み彼は布団に潜る。

彼が布団の中で思案していると、部屋に誰かが入ってきたサンタクロースだ。
一人で寝るのには広すぎる部屋の中、暗闇に紛れまだその姿を目が捉えることはできない。

なぜサンタクロースはまだ彼が寝る前に部屋へきたのか。
それは彼の生活リズムの変化によるものである。
時刻はすでに三時をまわっている。今までの彼ならいや世間の人間なら寝ている時間である。
しかしこの一年の急な生活リズムの変化により彼にとってこの時間はいつもこれから眠りにつく時間となっていたのだ。

サンタクロースが近づいてくる目も闇に馴れた頃、
見上げるとそこにいたのは父親であった。

「な、なんじゃ起きておったのか」真っ赤なコスチュームに身を包んだ父親が驚いた様子でいう。
夢が壊されたかのようだった。
あまりの悲しさに泣き出してしまった。
「 あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!! !!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥ ゥッッッ! 」
──「 ちゅ・・・ちゅる・・・ンンッハッ 」
泣き叫ぶ口を塞ぐようになにも言わずにキスをした。

「いいかもう泣くんじゃない」真剣そうな面持ちで父親が言う。
彼は泣き止んでいた。父親がそこを後にしようとした時、彼の方からキスをした。

彼は同性愛者ではない、ただ父親に亡き母の姿を見出だしていたのだ。
サンタクロースの正体が父親だと知って悲しかったのもサンタクロースが母なのではないかという淡い期待によるものであった。
彼が幼いときに母が亡くなってからというもの父親はずっと母代わりだった。
サンタクロースの役目ももうずっと父親の方が務めている。
プレゼントの数が2個から1個に減ったのも母は知らない。

「ちゅ…んちゅ…」
彼の妖艶な舌がまるでヒナが母鳥の口を貪るように父親の口を全身を這い回る。

枕元にあるロリドルのDVD、彼は小児性愛者なのか。
しかしこれも違う。
彼にとって女性とはとても手の出せない高嶺の花であり、少女へ手を出したのはその代替でしかなかった。
また少年への傾倒は亡き弟への念思いを重ねたものだった。

「はぁはぁ…早くしてくれ、もう時間がないんだ」
聖夜彼の体が激しく揺り動く。
彼は絶頂を迎えた。と同時に父親も絶頂に達したのであった。

彼の父親はサンタクロースだったのだ。
これからあの世界中の子供たちにプレゼントを配らなければならない。
父親は彼に別れを告げ、旅立った。
外には雪が降り積もっている。

この静かな街でどう生きていけばよいのだろう。
本当はサンタクロースなんていないのに。
ならば当職がサンタクロースになろう。
それならこの心の穴も埋められるはずだ。
まずは父にプレゼントをしよう。バスの準備をしなくては。
そして次はこの世界中に優しさをばら蒔こう。飛行機の準備をしなくては。
当職が優しい世界の優しいサンタになるのだ。


彼だけをただ白い雪が照らす。

挿絵

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