マヨケーがポアされたため、現在はロシケーがメインとなっています。

恒心文庫:クマノミ通子の性転換

提供:唐澤貴洋Wiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

本文

阿部家は代々クマノミが人間に化けた一族という言い伝えがあった。
地元では阿部家のクマノミ伝説は有名で、学校ではそれを原因にいじられて嫌な思いをしたことがあった。
言い伝えは所詮は言い伝えに過ぎず、江戸時代から続く由緒あるこの阿部家でクマノミとなった者は誰一人いない。
私自身もクマノミになるなど端から思ってもいなかったし、母も父もその上の祖母・祖父も言い伝えを信じるはずがなかった。

私は1972年の6月に誕生した。
母や父は普通の人間だったので私も普通の人間として生まれた。
ただ1点特異な点があるとすれば、生まれてから数十年の間は男であったということくらいだ。
男としての私は「阿部通夫」らしかった。
男である時の私の記憶は次第に薄れているようだ。
女になったからなのか、或いは単に年齢のせいなのかは分からない。
知る由もない。

私は2011年に司法試験に合格し、晴れて弁護士となった。
その後2013年の11月に今は亡き恒心綜合法律事務所という所へ左遷された。
前の事務所で散々いじめられた挙句泣く泣く独立した頼りない弁護士が代表を勤めているということもあり、嘗ての職場環境は劣悪だった。
今は時間になれば誰かが餌をくれる何一つ不便のない快適な生活を満喫しているので、思い出すのも嫌なくらいだ。
早く記憶が消えてしまえばいいのに。
親のすねかじりデブが鼻息をフンフンしながらやる気のない態度でパカパカ業務する姿は実に見苦しい。
私が大きく変わってしまったのもこのデブが原因であるのは間違いない。
最悪なのはこのデブは親の権力を使って私に何度も性的関係を要求してくる。
当時の私はまだ男であるから恐らくホモなのであろう。
事務所が2人なら私に何でもできると勘違いしているらしかった。
今ならセクハラで訴えれば即懲戒できそうなのだが、なぜか仕事はできない癖に自分の地位を脅かそうとする他人には人一倍敏感だった。

デブからのセクハラには耐えることが出来ず、私は2014年7月に独立するという名目で恒心綜合法律事務所から逃亡した。
しかし心に負った傷は癒えることがなく、男弁護士に怯えながら仕事をする日々が続いた。
そんなある日、私は遂にストレスと過度な疲労から気を失ってしまったらしかった。

目を覚ますと私は女になっていた。
突然の事態に私は驚愕した。
同僚は皆驚いていたのは言うまでもない。
昨日までは男だったはずなのに。
たった1日の間に何が起こったのか。

恐らく、私の一族は「両性生殖腺」というものを持って生まれてくるらしく、生まれてきたときの性は「便宜上」の性別に過ぎないのである。
そして、クマノミは群れの中で一番大きなオスがメスへと性転換するとのことだ。
私は新たな事務所で一番大きなオスだったのである。
だから私は女弁護士に生まれ変わったということなのである。

これは正解かどうか分からない。
ただ何となくそれっぽいことを述べて、変わってしまった性別をあたかも真っ当だと思わなければならなかったからに過ぎない。
クマノミ伝説の呪いにかけられた一族に降りかかる運命なのである。
そう思わないと自分が自分でいられないのである。
となると他の家族・親戚はどうかと言うと、性転換は起こっていない。
つまり私だけ理不尽に男から女へ変わってしまったのである。

私は女弁護士として生きていく為に名前を「阿部通子」へと改名した。
幸いなことに女へと生まれ変わってからは嘗てのクソデブの呪縛から解き放たれたかの如く、気が楽になったのである。
私の人生は男から女へと生まれ変わることで明るさを取り戻したのである。
同僚の2番に大きな男と結婚し、子供も生まれた。
偶然その男も苗字が阿部であったからw阿部なんか言われてより一生楽しい職場へと変貌した。

不思議なことにクマノミ伝説は性転換だけのようだ。
生まれてきた子供は胎児だったので、卵で生まれてくることもなかった。
子供は現在も元気に泳ぎ回っている。
結局の所クマノミ伝説は恐れるに足りないものだったのである。
日本にはさまざまな言い伝えがあり、それを恐れ、怯えながら暮らす人もいるようだが、私の場合はむしろ女に生まれ変わってから特しかしていない。
流れに身を任せることも案外悪くないみたいである。

間もなくご飯の時間だ。
事務所の奥から餌袋を漁る音が聞こえる。
私はイソギンチャクから姿を現し、口を開いて今日もまた餌を入れてもらう。
いつもの日常だ。

クマノミ伝説など大したものではない。
むしろクマノミ伝説には感謝しているくらいだ。
自由をつかみ取る鰓を精一杯羽ばたかせて素晴らしく快適な充実した生活を送ろうではないか。

だって私は自由の身なのだから。
だって私は自由の身なのだから。
(終)

この作品について

ファインディング・ニモで有名なクマノミ雄性先熟することで知られており、本作はそれを念頭に置いて書かれた作品である。

山岡「からさん、あッ…ダメ…いく、いっちゃう、中に出して…」★2>>101-105(魚拓) - マヨケー
101 :[´・ω・`] tor67.quintex.com:2022/04/16(土) 14:38:11.94 ID:VXC2sTXQ0
みっちゃんって性転換して女になったのでは?

102 :一般カタルーニャ人:2022/04/16(土) 14:54:13.71 ID:mBi0Ra160
そもそも通子って名前だけで女性だと思われているだけで顔も割れてないので確実に女性だという証拠はないんだよなあ…

103 :[´・ω・`] vps-f61f0c8d.vps.ovh.net:2022/04/16(土) 15:05:47.49 ID:qsLvg08D0
一応弁護士検索では女性と出ては来るが…

104 :一般カタルーニャ人:2022/04/16(土) 15:13:14.73 ID:mBi0Ra160
誤植やろ(すっとぼけ)

105 :一般カタルーニャ人:2022/04/16(土) 18:51:19.06 ID:0640RdSyI
みっちゃんクマノミ説

本作はこれらの書き込みの5時間後に投稿された作品である。作家陣筆早杉本賢太

リンク

恒心文庫
メインページ ・ この作品をウォッチする ・ 全作品一覧 ・ 本棚 ・ おまかせ表示