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恒心文庫:カラビナ

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

手を擦り合わせ、白い息を吐く。
急な寒波に身の震えが止まらない。
師走になった途端、これだ。
ここ最近、バタバタと気候は急速に変わった。
今年ももう終わりか。30を過ぎてから、益々時間が経つのが速く感じる。
幼い頃は一年の終わりになると、やり残したものがないか必死に考え達成しようとしたものだ。
あの殊勝な心をいつからか失ってしまったんだな。
取り戻してみたい、あの時の心を。
やり残した事をやってやろうじゃないか。
腕を組んでやり残した事を考える。

ー顔面猥褻物の青年の炎上。
これは無理だ。達成しようがない。候補として合わない。
ー2ちゃんねるの流出事件。
これも無理だ。結局呼びかけても誰も集まらなかったし、もう時期を逃した感がある。ダメだな。
ー人形の防腐処理。
あぁ、忘れてた。これは忘れずやっておこう。
他に何か・・・


ー弟・・・の墓参り。
これが残っていた。
しかし、覚悟を決めなければならない。
当職が弟の墓参りに行こうとすると‘何故か’必ず事故に遭う。
寺の前で避雷、道中で追突事故、その他。
何度結局、20年経った今でも一度も墓前に立ったことはない。
ふと空を見上げる。厚史、今年こそは会いに行くから。クリスマスプレゼントもあるんだ。

男は声なき天を仰ぎ十字架を切った。

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