恒心文庫:やーい
本文
お前の母ちゃん唐澤洋。
幼い頃、近所の子供に言われた言葉だ。当時の当職にはいまいち意味のわからない言葉だった。しかし幼心になぜだか傷ついた様に思う。
だからその度に、座り込みながら当職は叫んだのだ。耳を塞ぎ目をつむり、何も考えずに。
ああああああああああああああああ。ぶりぶりぶりぶり。
それだけで、いつの間にか当職から人が離れていく。ただ目を逸らしていれば嫌な事は過ぎ去っていくのだ。時間が解決してくれる。それは真実であった。けれども、言葉に出来ない鬱屈としたものが、確かに当職の足取りを重くしたし、それによって当職は耐え切れなくなったかの様に、時折叫ばずにはいられなかった。
その度に、当職をその広い胸に抱くのは、父洋であった。当職は目の端からとめどなくこぼれ落ちる温かな涙を、決して見せまいと、顔を父の胸元にうずめてその匂いを感じていた。温かい、どこかかすれた様な匂い。それが当職の父であった。
しかし、ある日の事です。当職がいつもの様に近所の子供に寄ってたかっていじめられ、絶叫でなんとか追い払った後のこと。決まって嗅ぐ父親の匂いの中に、いつもと違ったニオイを感じ取ったのです。
すえたような、しかしどこか小さな花がほころぶ様な生臭さ。
当職は思わず目を開けた。そして絶叫した。近所の子供が列となって、近所の大人が群れとなって、父の尻穴を代わる代わる犯している。口汚い言葉で父を罵倒しながら、入ったり出たりを忙しく繰り返しているのだ。
もううみだくなぃィいいいい!!!!!もうあがぢゃんうみだくなぃィィィィィィィィィい!!!**
父の口元から漏れる叫び声。父のイメージとは到底結びつかない女の声。しかし厳粛な父の姿と、快楽に悶える淫乱な姿が、目の前で確かに結びついている。当職はどうすればいいのかわからずに、ただ、父のヒクつくアヒル口を見上げている。
そうして動けない当職に、周りを取り囲む悪いもの達が言う。お父さんと言ってもいいんだぞ。いいや、俺がお父さんだ。いや私が僕が。
やがて品の良い笑みを浮かべた男が父の耳元で囁く。父は必死に首を振るが、男は容赦無く父の首を握り締める。父は観念したかの様に、そして恐怖に震えながら、言葉を漏らした。
本当の会計士同士の交尾をみたいかい?
当職が何をするでもなくそれは始まった。オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!オラ父と同年代の男がなでつけられた髪を振り乱しながら、父の背中にのしかかる。粘着質な音を撒き散らしながら、泡立った汁が飛び散って糸を引く。
当職は口に汁が入るのも構わず、ただぼんやりと口を開けていた。その時の空の色は確か・・・