恒心文庫:もみたろう
本文
唐澤少年はドキドキしていた。口を押さえ、瞬き一つすらせず、ひたすらドキドキしていた。思春期である。男女の違いを意識し始める頃である。しかし早くに母を亡くし、男手一つで育てられた唐澤少年には女の子はあまりに遠いものであった。接し方がわからない、よくわからないものであった。しかし見ていると不思議とドキドキするものであった。触るともっとドキドキするものであった。
唐澤少年にとって女の子は、なんだか柔らかいものに包まれている、という印象であった。その日から学校に行ってはないが、いまだに頭について離れない。時折思い出してはドキドキしている。
その時と同じドキドキを貴洋少年は感じていた。窓から入り込む春風に、それは柔らかく揺れている。差し込んだ陽の光にそのまま溶け込むかの様に輝いている。
それは父のもみあげであった。軒先で椅子に腰掛けて眠る父親。そのもみあげが風に吹かれているのを、唐澤少年はただ見つめている。
唐澤少年は息をのんだ。そしてしばらくして、その震える指先を、ほどける様に輝くもみあげに絡めていく。
驚くほどに軽い。まるで羽毛の様に軽やかで、柔らかい。唐澤少年はもみあげの先を小一時間転がすと、やがて持ち上げ始める。
ドキドキがズキズキに変わっていく。息を飲む少年の目の前で、もみあげという秘密のベールがゆっくりとめくり上げられていく。
そして少年は見た。
持ち上げたもみあげの向こう、何か棒状のものがこめかみのあたりから揺れているのだ。よく見ると、それは肉棒であった。耳たぶは金玉で、耳穴は肛門であった。
だから、父は耳を触られるとおとなしくなるのか。
少年は新発見の興奮冷めやらず、もみあげを持ち上げていた指先でそのまま隠れた金玉を転がした。
優しく、時に弾く様に。まるでピアノの様に指の腹を叩きつけると、父は歌う様に声を漏らした。
んっ。
すると不思議なことにこめかみから垂れ下がったチンチンへと見る見るうちに血が流れ込んで行く。脈打ちながら色を赤々と染めてその体積を膨らませて行く。
そうしてそこに現れたのは、まるで御伽噺の鬼の様なシルエットだった。両のこめかみから鬼の金棒、唐澤少年は耐え切れず自身の桃に入刀。溢れる果汁に喘ぎ声。唐澤少年は叫び声を上げながらその指先で父の耳の穴をほじくり回す。んっ。んっ。父の耳たぶが膨らむ。あらそうかい?じゃあどんどんさすってあげるよ。唐澤少年が耳たぶにその指を絡めて優しくさすると、父の鬼ヶ島は膨らんだのだった。
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- 初出 - デリュケー もみたろう(魚拓)