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恒心文庫:つらくて寝れない夜

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

僕は疲れていた。
時計の針が午前2時を回ったころ、真っ暗な部屋のベッドで、僕はため息をついた。
進まぬプロジェクト、度重なる上司からの叱責、部下との接し方、自責の念…
挙げればキリがないほどの事柄が、40近くなった僕の身にどっさりと覆い被さっていた。
つらい。きつい。疲れた。休みたい。でも仕事が…
そんな感情が交錯し、うまく眠れないまま朝を迎える、そして会社に行く。
ここのところずっとこの感じだ。
というか、大学を出て今の会社に入ったときからそうだったかもしれない。
一生こうなのかもな、自嘲気味に笑い、僕は検索した。
「つらい 寝れない」
なぜ検索したのかは分からない。本当に、ただなんとなくだった。言い方を変えると、本能だったのかもしれない。
その検索結果に、彼はいた。

「もしつらくて寝れないことがあれば弁護士にメールしてみてください」

メールを送った。
内容はよく覚えていない。たぶん今現在の境遇とか、これからのこととか、そんな感じだと思う。
弁護士に人生相談か、僕もだいぶ疲れてるな。
そう思いつつ、寝れないであろう瞼を閉じた。

次の日、つらいことから逃げるように帰った0時半のこと。
あるメールが届いていた。
「弁護士の唐澤です。」
初めて、彼と繋がった瞬間だった。
内容は、僕の境遇に対する理解、彼自身の境遇、それを踏まえた僕へのエール。
決して上手いとは言えない。しかし、彼の気持ちがまっすぐに伝わってくるもの。
僕のすさんだ心に突き刺さり、涙がこぼれた。身が震えた。

僕は、メールを返した。

「ふざけんじゃねぇ!!何が臥薪嘗胆の日々を経て合格だよ!!!!
てめぇなんて金持ちの親の庇護のもと30半ばまでずーーーーっと甘やかされて、
アイドルでシコって糞漏らしてた糞デブ無能ホラ吹き短小真性包茎詐欺師じゃねぇか!!!!!!!!!!!
お前みたいなウジ虫に言われる義理はねぇわ!!!!!!!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す唐澤貴洋殺す」

最高だ。
生きる気力がみなぎる。
身体中にヤル気が巡っていく。
仕事も頑張れる。
そうか、そういうことなんだ。

俺は生まれ変われた。
彼がいたから。
彼が俺を助けくれたんだ。
それから毎晩、彼にメールを出し続けている。
彼へのまっすぐな気持ちをしたためた、俺の叫びを。
彼はもう見てないだろう。
だって、俺はもう、つらくない。
つらくて寝れないことは、もうないから。

挿絵

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