恒心文庫:この親にしてこの子あり
本文
「でりゅ!でりゅよ!」
仄暗い寝室。雨戸が閉じられ外から差し込む光はなく、チェレンコフ光を発する小太りのつんつんヘアーの無能フェイス男だけが光源であった。
部屋の中央に置かれた寝台には、これまた小太りの、床屋か美容院で担当に馬鹿にされからかい半分でもみあげだけ白髪染めを使ってもらえない年不相応にアヒル口をした老人が全裸で横たわっている。
彼は股をおおきく広げ、荒く呼吸をしている。
「引っかかっているみたいナリね」
そういうと老人のしりの穴に口をつけ、ズズズズズズっと吸い込んだ。
それを契機に、老人のしりの穴から液体とともに得たいのしれない赤黒い塊がドロッと出てくる。
「まだ不完全だったナリかあ」
無能フェイスはがっかりした様子でその塊を老人のしりの穴に押し戻して入れる。
「新しい弟、はやく欲しいナリよ」
「でりゅ!でりゅよ!」
「まだ出しちゃダメナリ。もうちょっと注がないと」
歩く放射性同位体は自身の男性器を、自分ではかわいいと思っているのか依然としてアヒル口をしているきっしょい老人の口に挿し込む。
数回前後に動かすと男性器は脈動し、大量の生命のスープが、母校の同窓会ででかい顔をすることでしか自らのちっぽけな虚栄心を満たせない哀れな老人の口に流れ込んでゆく。
スープは逆流し、自分の上司とそっくりな顔をしたブスメガネと政略結婚をせざるを得なかった老人の鼻の穴からいくらか溢れる。
「これでしばらくかき回せばいいナリかね」
登記簿の取得をあたかも法に触れることかのように発言してしまったためにテレビの制作スタッフに「登記簿を撮られ」と苦し紛れのテロップをつけられた、根本的に法律の知識が欠如している男は安心しきった顔をする。
兄は自分の母校を受験するも落ちて結局引きこもり、弟は不良グループとつるみ、そのグループのなかでも大したことはできず下っ端としてボコられて自殺する程度の雑魚としか育てられなかった
親としての能力に大いに疑義の生じる余地があり、その上仕事ではまともかと思えば自分のせいで業界の慣例が破られてしまうほどの無能ぶりを発揮した老人はスープを飲み込み顔を赤らめている。
「今度はどんな弟が生まれてくるナリかねえ」
語彙力がないくせにインテリぶった文を書こうとして、文法も語彙もむちゃくちゃな糞文しかかけず、
国を縛り国民を保護するための憲法を国民を縛るためのものだと勘違いしている学部一年生にすら知識の劣るただの馬鹿は、
人よりも何年も遅れて大学を出て、ただ働きたくないだけなのに法律家を目指していると言い訳をしてプラプラしてるだけの息子を、
かつて自殺されたトラウマからか強く叱責することはできずに甘やかし、せめてもの罪滅ぼしとでも考えているのか事務所まで与えてしまった老人のお腹をさすっている。
とくん、とくん。
クソみたいなしょうもない生命が、少しずつ形成されつつあった。
リンク
- 初出 - デリュケー この親にしてこの子あり(魚拓)