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恒心文庫:『漂流者』

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

エイチ氏が起こされる瞬間は唐突にやってきた。
コールドスリープが解除され、人間の機能が回復する。
少しずつ意識を取り戻したエイチ氏は、自分が意識を取り戻したというそのことから、
目的の地がそろそろ近いのだということを悟った。
電子カレンダーをみると、自分がコールドスリープに入ってからおよそ300年が経っていることを知った。
窓の外を覗くと、かすかに小さく地球と似たような星が見える。
おそらくあれが目的の星なのだろう。

地球は核爆弾によって破壊され人間が住むことはできなくなってしまった。
そんななか、地球の外へ人間の住処を求めてエイチ氏がその派遣隊員に選ばれた。
エイチ氏は極めて優秀な青年であり、肉体的にも知的にも精神的にも常人をはるかに超える能力を持っていた。
そのくせ、努力は怠らず謙虚であった。
だからこそ、人間の生存圏獲得という重大な任務を背負う人間に選ばれたのである。
彼らの計画はこうだ。エイチ氏が地球の代わりになるような星を見つけ、調査をした後、
住めそうだとなれば地球に向けてそれを知らせる電波を発する。
地球に残っているメンバーはコールドスリープをし、エイチ氏からの電波を受信するとそれが解凍されるようになっている。
そうして、その後は残りのメンバーから徐々にエイチ氏のいる星へと移住するというものである。

エイチ氏は自分の使命の偉大さを十分実感しており、だからこそやりがいのある素晴らしい任務だと思っていた。
今エイチ氏が向かっている星というのは、宇宙船のセンサーが地球に似ていると判定した星である。
そこに降り立ち、重力や空気組成、土壌、放射線や宇宙線、エネルギー源などを精査したうえ
人間の移住先として相応しいかをエイチ氏が判断するのである。
普通の人間だったらこれだけのことを一人で行うのは無理かもしれないが、
優秀なエイチ氏であればできるのである。
(明日以降へ続く)

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