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恒心文庫:「気持ち悪いナンパ男」 ***さん(女性)

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

先日の昼下がりマクドナルドでの体験です。
私はその日、友達と買い物の約束をしており、
待ち合わせの約束までまだ時間がかなりありましたので本を読んでいました。
外部の音も聞こえなくなっていた時、開いたページに影が落ちているのに気付き顔を上げました。
そこでやっと私はスーツ姿の小太りの男が笑みを浮かべ私の前に直立していたのを知ったのです。
私がギョッとしているところ、男は

席が他空いていないので相席いいですか?と今度は甲高い声で口の端を吊り上げ聞いてきた。

勿論断われないので私は苦笑しながら頷き、逃げるように本に目を落としました。
しかし一度集中が途切れてしまったので頭に内容が入ってきません、そこで首をひねって視界を変えるとまたギョッとしました。

伽藍堂。気づけば昼も過ぎており、他はいくらでも席が余っているじゃありませんか。

私の目の前にいるこの男がますます非常に不気味になり、恐る恐る上目で見ました。
なんと、男は首が折れてしまいそうなぐらい横に傾けて私を凝視していたのです。
私はもう体の毛が全て逆立って、思わず手に持っていた本で顔を覆いました。
視界を塞ぎ動悸も安定を得たかのように思われましたが、そこにまた追い打ちが来たのです。

お嬢さん、お嬢さん。
聞いてくださいお話を。

男はどこからそんな高い声を出せるんだというような割れるような音で喋りかけてきたのだ。
耳が拒絶するも、私はもう動けない。

男は続ける。

愛を知りたいだけの男が一人いて、皆に教えてもらおうと聞いて回る。
だけどみんな教えてくれない。
ある日、男は合点がいった。本当は皆が知らなくて自分が知ってるんだ。
だから今は教えて回ってる。けれどまだ愛を理解して生きているのは男一人のみだ。

お嬢さん。お嬢さん。
貴方は知ってますか。愛を。

私はもう理解していた。その男の話が紛れもなく目の前にいる人間だと。

私が取る行動はもうひとつしか考えられなかった。頭の中が警鐘で鳴り響く。
この男といると危ない。
そ脱兎のごとく飲み物やトレイをそのまま置いて、カバンだけ持って逃げた。

振り返らない。振り返ると私が逃げた距離が台無しになる。そう感じた。

夢中でショッピングモールを出て、やっと空を見上げた。
日差しがまだ強い。明るい空に心底ホッとした。
さっきの空間は白昼夢に違いない。きっとそうだ。
そんな私は安全地帯に帰ってこれたと確信したところ、
低い息が漏れるような声が背中の後ろから聞こえた。

空の色は何色か。


たまらず私は振り返ったがあの男はいませんでした。
あれ以来一人でショッピングモールへは行っていません。

どなたか私と似た体験した人はいませんか。

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