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なぜ三田国際学園は狙われたのか ~大橋清貫氏LGBT差別本騒動を考える~

提供:唐澤貴洋Wiki
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このページでは、『LGBT: ~言論を破壊するものたち~』出版騒動について解説する電子書籍『なぜ三田国際学園は狙われたのか ~大橋清貫氏LGBT差別本騒動を考える~』の全文を掲載する。

はじめに

 事件が起きたことすら知る由もなかった。あの悲しそうな顔を見るまでは。10月某日マイノリティの支援活動をするオフィスへ取材に、三人で京都出張の時である。代表のYさん、物腰柔らかで穏やかな女性はインタビュー中そんな素振り一つ見せなかった。仕事も終わり撤収しようとする矢先だ。差し迫った悲痛な表情で呼び止められたときに、僕らは驚いてしまった。

 指し示されたスマートフォンの画面には、Amazonの販売ページが映されていた。真っ黒な表紙の本が売り出されている。著者は三田国際学園の大橋清貫氏。僕のような人間も娘の受験シーズン中さすがに名前ばかりは伺ったことがある有名人だ。解説文を読んだ感想としてそれほどの人物がLGBTを悪魔扱いしているというのはかなりの衝撃を受けた。当事者たるYさんは比較にならないショックだったに違いない。これ以上あまり語られず直接うちで問題を取り上げてほしいと頼み込まれたのではなかったが、一応報道の端くれではあるしそう期待してくれたのだろう。

 だが会社で訴えかけてみても、今回の特集のテーマから大きく外れてしまうし、もはやその頃にはネットニュースに先を越されているとして上の意向で見送られてしまった。ニュースが事実を解明するのかと思いきや、一方的になりすましの仕業とするだけで幕引きを図るばかり。Amazonの販売ページも削除されて、全てがなかったことにされようとしていた。

 ニュースにいう「なりすまし」は、あくまで学園長側の主張でしかない。何らの検証もされず話題がフェードアウトしていくのは、とても済まされるものと感じられなかった。本当に偽者なのか、だとしたらその正体は、これほど手の込んだことを何のために。明確にされなければならないことが多すぎる。職場で知ったこととはいえ僕の会社は元々そういう仕事ではないから無理に企画を通せはしない。

 孤軍奮闘、休日を返上しパソコンのモニターに張り付いた。さすがインターネットだけあって騒動をまとめているサイトがもうある。いや記事があるのは差別本騒動だけではない、大橋学園長本人や、さらには本の全文まであったのだ。ここで全てが繋がる。というより答えがそのまま置いてあるようなものだった。奮闘するまでもなく。なぜ報道媒体ですら気づかなかったんだ。ただ、読み込んでいくうちに、とても単純なものといえない背景が見えてくる。誰の手に届くところに光が差しているのに、錯綜した状況が理解を阻んでいるのが惜しい。

 事件の殆どはもはやネットに書き記されてある。拙著はその焼き直しに過ぎないものだ。それでも、謎が謎のまま埋葬されゆく現状に抗うためには、焼き直しだろうと必要であった。皆が容易に理解できるように、事実に基づいたシンプルな形で記録を残す必要が。

 読者の方々にもこれは謎の多い事件を取り上げる書物にありがちな脚色を一切排したものと受け取ってもらわなければならない。そのための工夫として、本文中で十分な根拠を示せなかった重大な出来事を指し示す文章に、文末に「【情報源1】」などと付けている。大変重要なものだが後に取り上げるもので取り敢えず文中のそれは無視していただきたい。あとがきに代えて特別章と題し、各々の情報についてインターネット上で利用可能な典拠へのハイパーリンクと解説を施している。それほど長くないので終章まで読み終わったときにでも確認していただけると幸いである。

 偶然見知ったことで、1冊本を書いてしまうとは僕自身でもびっくりだ。ここまで来たからにはどうせならなるべくたくさんの人に本当のことを知って欲しい。理不尽に傷つけられてしまった、LGBTや発達障がいやうつ病と共に歩むすべての方々のためにも。

1章 真相は何処か、霧の中の一筋の光

 2019年9月10日、誰にも気付かれることなくすべてが始まった。インターネット通販最大手「Amazon.com」にて一冊の電子書籍が販売開始される。著者は三田国際学園の学園長である大橋清貫氏。タイトルは『LGBT:~言論を破壊するものたち~』。電子書籍は「手軽に読めるもの」というコンセプトに従ってページ数の少ない本がよく見られ、この拙著『なぜ三田国際学園は狙われたのか』もそれに近いものだが、約35ページの本であった。このたった35ページが、後に大きな波乱を巻き起こす。

 まずサイトの販売ページでの煽り文句からして明らかな攻撃性を滲ませていた。黒一色の背景に「LGBT」の4文字が大書された表紙画像。商品の内容紹介欄ではLGBTを「悪魔」呼ばわりし、利権にまみれた議員に担ぎ上げられた「LGBTビジネス」なるものが展開されて言論の自由が脅かされている、などといった根も葉もないことを力説している。

 さらに本の中身はといえば題名や売り文句に輪をかけた言語に絶する差別的思想のオンパレード。LGBTは病気でしかなく同性愛者が現実逃避するための方便とするための概念にしかなっていないと偏見に満ちた人格攻撃を繰り返しており、教育者として日本を守るためには滅ぼさなければならない存在だと憎しみ一色に染まっている。さらにその矛先は、LGBTだけにはとどまらない。もはや常識となりつつある発達障がいは先天的なものであるという事実をまったく無視、障がいを持つ子とその親を苦しめるためかのごとくその原因を子育ての失敗と断じている。うつ病患者に至っては怠け者とみなされていた。社会的弱者に無理解な姿勢。総じて言えば50年遅れた思想であった。

 ついに約1か月後となる10月5日頃、この書を購入して読んだ人が現れ、その怒りがSNSを通して急激に拡散されることとなる。あまりに酷い本だと取り上げられTwitterなどで話題に上り、それに影響された人々も本を購入して悍ましい文章の数々に糾弾の声を上げるようになるというループ。日本では国立国会図書館に次いで出版物を扱っているともいわれるAmazonにおいて、テレビでお馴染みの池上彰氏や橋下徹氏をも抜き去り書籍ランキング政治カテゴリー6位に上り詰めるほどに注目を浴びた。

 「教育者とあろう者がこんな本を出版するなんて。」「三田国際学園はグローバル教育を推進する裏でこんなことをやっていたのか。」「こういう本を堂々と出す人間がいるから差別がなくならない。」数ヶ月経った今でも当時の非難のツイートや書き込みの一部は残っている。

 ここでついに大橋清貫氏側が動く。この事件は各種インターネットニュースやTBSによるテレビニュースで全国的に報道されることになるのだが、大橋氏は「成りすましによる悪質な嫌がらせ」と発表し、代表を務めている三田国際学園や一般財団法人新時代教育研究所の公式サイトにおいても同様の声明を発表して事態の収拾を図った。【情報源1】メディアでの多数の報道の効果もあってか世間もこれを成りすましだと理解して急速に収束することとなった。

 ここまでが事件のあらましだ。まず初めにはっきりとさせておかなければならないのは、証拠を備えた真実はいまだ明らかになっていないということだ。それゆえこれから事件のもっとも核心に近いとするものを述べていくわけだが、その正体については決して断定しないし、断定的表現も使っていない。

 確かに報道ではなりすまし行為が原因とされている。マスメディアの報道をもって実際そうだと事実認定を行うことに何も誤りはない。しかしニュースを注意深く読めば、学園長側が事実無根だと表明しているだけに過ぎないと読み取れる。報道各社が取材や調査を実施し、犯行の一部始終を掴んだということではないようだ。一方の主張を鵜呑みにするだけとはジャーナリズムの姿勢としてぞんざいなものと言えるだろうが、それはともかく本当のことは未だ分かっていないというのが現実であると繰り返しておく。

 まず、ネット上のいわゆる炎上事件で、自分が為出かした罪を他人になすり付けるのはよくある話だ。大抵は苦しい言い逃れであると見破られて事態をより悪化させるだけになるが。ネット炎上の投稿の削除業務を行う弁護士でありながら自らも大規模な炎上に巻き込まれている人物として有名な唐澤貴洋氏の書籍『そのツイート炎上します!』においても、アイドルグループのメンバーが後輩の体型への揶揄をネットに投稿したことで炎上し、メンバーはそれをSNSのシステムの不具合のせいだと言い訳してさらに批判が過熱した事件を取り上げている。

 だがこの本で取り上げたいのは、その手の結局正体は本人に違いないなどという陰謀説ではない。一言で言えば「なりすまし」、大橋学園長の弁明は、文字通り言えば虚偽の説明というわけではないということだ。しかし、この五文字で全てが収束するほど物事は単純ではないし、単純化させてもいけない。なぜこれほどまでに入り組んだ手口が取られる必要があったのかという疑問に、なりすまし説は付きまとわれているからだ。この合理的疑いの根拠を一つ一つ氷解させていかなければ、到底事件の裏側は見えてこない。

 まず約35ページと書籍としてはかなり短いものではあるが、実際に執筆するにはかなりの労力を要する。約2万字、400字詰の原稿用紙50枚分にあたる。そして学園長への批判と炎上を招くような要素を社会情勢から汲み取って、2万字の全体に散りばめる計算が練り込まれていることも明らかだ。Amazonの電子書籍で身分を偽るという発想にたどり着く自体も常識の範囲から外れている。気まぐれの産物であることはありえず、相当の怨恨を持ち、かつ技術を知る者の下になされたとするより他あるまい。

 現在の三田国際学園など学校改革を推し進めようとする人物だ。改革がどう転ぶにしても、恵みを受ける人と痛みを受ける人に必ず分かたれる。そこに恨み憎しみの入り込む余地があるとの想像は働くかもしれない。だがこの説は、怨恨の条件を満たせても、技術の条件を満たせているかは懐疑的だ。Amazonのアカウント登録の仕様などに十分明るい人物が、たまたま痛みを受ける側に回り、たまたま犯行に走ったという、確度の低い偶然の要素が入り込んでしまっている。

 両者を満たすそう都合のいい存在などいるのだろうか。むしろ筆者の想像の産物でしかないように思えるかもしれない。しかし、仮定は調査によって裏付けられた。恨みを持ち、インターネットにも習熟している者たちの存在。ニュースの斜め読みではけして見えてこない所に、それがあった。大橋清貫学園長がひた隠しにする、あるネットユーザーのグループとの対立。そのグループを「恒心教」という。

2章 高校生我を語る→

 恒心教とは。その成立は10年前にも遡る。

 2ちゃんねるのなかの一つの掲示板「なんでも実況J」(通称「なんJ」)での一つの書き込みが始まりだったとされている。ある少年は八神太一というアニメキャラクターの名前を名乗り、なんJでの人気者を目指したいという。「常識は守るし好かれるように頑張りたい」と抱負を語って。

 そんなこの言葉もたちまちプロ野球名物ジェット風船のごとく自己顕示欲を吹き出しながら彼方へと飛んで行ってしまう。八神太一は人の神経を逆撫でするのが実に得意なようだった。日々の取るに足らない感想を垂れ流しにし、未成年飲酒などを自慢し、ついには東日本大震災の犠牲者を侮辱するようになる。そんな彼が「人気者」となるのにそう時間はかからなかった。「八神死ね」の罵声を浴びながら、掲示板住人と侮辱し合い、聞かれてもいない自分の生い立ちを語ることに精を出すこと2年半。多くのなんJ民が嫌な思いをしている中で放った言葉が「俺は嫌な思いしてないから」。彼は憎しみを一身に引き受けることでまさしく「なんJの王」というべき存在になっていた。

 八神太一の集めた怨みはあまりにも大き過ぎた。ついに2012年3月7日、運命の時を迎えることとなる。大学合格の自慢をホラ話と認定され頭に来た彼は、大学の合格通知書の画像をアップロードしてしまう。待ってましたとばかりに八神を嫌うなんJ民は画像から特定作業を開始、ものの数分で国士館大学のものと特定。そのまま出身高校まで特定して破竹の勢いの特定班は続けざまに本名「長谷川亮太」を当時流行していたSNSの「mixi」アカウントから掘り当てた。

 国士館大学などへの未成年飲酒の通報が始まるに至って、長谷川君はたまらず特定した輩は訴えるという脅迫を残して逃亡する。しかし当時の特定祭り、炎上たけなわの掲示板でこの手の脅しが通用するはずもなくますますからかわれるだけ、彼が本気であることを知る者などただの一人もいなかった。本当に弁護士を雇って逆襲に打って出るとは。弁護士の名は唐澤貴洋。そう、1章で引用した本『そのツイート炎上します!』の著者である。

 あまりにも唐突な弁護士の登場、長谷川君を中傷していた書き込みは削除され、投稿者のなんJ民は発信者情報開示を受けて高額な賠償金を請求される恐怖に慄いた。掲示板はパニックとなり法的リスクに怯えて八神太一炎上騒動は今後タブーな話題とされるのかとも思えた。だが知識ある者はいつだって冷静である。「発信者情報を開示されたからといって即損害賠償ではない。」

 インターネットでの誹謗中傷について賠償金請求まで持ち込むには手順がある。まず2ちゃんねるなどサイト運営者に発信者情報の開示を受ける必要がある。唐澤氏は裁判所での仮処分よりここまでは達成している。発信者情報開示請求で得られるのは投稿した者のIPアドレスという番号。IPアドレスから投稿者を特定するにはまだ手続きが必要だ。ちょうど車のナンバープレートを思い浮かべてもらうと理解しやすいだろう。しかるべき機関で照会を受ければ車の持ち主である特定個人の情報と結びつけられるが、ナンバー単体では誰の車かなんて分かりはしない。ナンバープレートなら警察だがIPアドレスはインターネット接続サービスを提供しているプロバイダ(具体的な社名で言えばOCNやドコモなど)に確認をとる必要がある。だがプロバイダも商売、誹謗中傷書き込みをしたとはいえおいそれと顧客情報を渡すわけにはいかない。となるともう一度裁判だ。プロバイダ相手に裁判を起こしIPアドレスから個人情報を提供するよう要求する。この裁判に勝ってようやく投稿したの人の氏名や住所や連絡先が判明するのだ。最初の目的の賠償金が欲しければこの本人に対してさらに裁判を起こす必要がある。

 結局唐澤氏は次なるプロバイダへの裁判をしていない。楽な掲示板運営への裁判だけして着手金を稼ぐというボロいビジネスだったらしい。長谷川君にもたらされたのは約10ケタの数字の羅列が20個ほどだけだ。日が過ぎるにつれ弁護士が「カラの鉄砲」だったとの確信へ繋がり、薪を抱きて火を救うとの言葉どおりと言うべきか、中途半端な開示請求は炎上する長谷川亮太君をより一層炎に包む結果となってしまった。

 IPアドレス開示が無害とわかると、アンタッチャブルな存在のはずの弁護士にも注目が集まり始める。長谷川君の依頼以前の案件で失敗しているのがすぐに発見されて唐澤弁護士は無能で悪徳ではないかとする流れが生じると、長谷川騒動に参加していた掲示板住民たちは一斉にアラ捜しを開始する。そこからわずか1日で唐澤氏が設立した事務所「恒心綜合法律事務所」のツイッターアカウントが見つかり、年齢の幼いアイドルのアカウントを大量フォローしていたことが発覚した。

 ジュニアアイドルオタクの弁護士という時点で話題性抜群だったが、事実を掲示板に晒されたわずか5分後にツイッターを非公開にしてしまったのがいけなかった。アイドルオタクな上になんJを監視していたと衝撃が走り、掲示板での話題はドルオタ弁護士一色に。唐澤氏は長谷川君と肩を並べてネット住民のネタとして消費される道を歩みはじめることとなる。

 濡れ手で粟の金儲けのためとはいえ長谷川君の炎上に最悪の一手を打ってしまっている唐澤弁護士であるが、自身の炎上についてもそれは同じだった。手始めに唐澤弁護士を中傷する画像の作成に使われていたサイトの管理人に圧力を掛け、画像を削除させる。このとき削除要請でサイト管理人には所詮ネットのガキと侮り失礼な態度を取ったとみられ、気を悪くしたのか管理人は面従腹背の姿勢で中傷画像作成で遊ぶ者らを暗に焚き付けた。管理人がなんJ民側についたこともあって、画像作成サイトでの削除騒動はかえって話題の中心となっている掲示板での誹謗中傷の勢いを加速させるのみに終わる。炎上時の初期対応として大コケであった。

 ここで嫌がらせの新たな手口「サジェスト汚染」が導入される。対象の名前の後に続けてマイナスの意味を持つワードをいくつも挿入した文を大量に投稿することで、Googleなどに対象とネガティブなワードを関連付け(サジェスト)させるというもの。「唐澤貴洋 無能 敗訴」と何度も書き込めば、検索サイトでは唐澤貴洋というワードの関連として無能や敗訴という語句が表示されるようになる。炎上騒動を知らない一般の人が唐澤弁護士の名前で検索した時に、彼は無能で敗訴したと思わせることができるという寸法だ。検索エンジンの仕様に詳しかった画像作成サイト管理人はこれを面白がったのか手法の詳細な解説を行ったこともあってサジェスト汚染の技術は急速に普及する。

 新技術の導入で急増する名誉毀損の書き込みを前に、唐澤弁護士は決定的な過ちを犯してしまう。なんと自身への悪口に発信者開示請求をしたのだ。長谷川君の一件より開示請求に実害なしと悟っていた彼らには何ら萎縮させる効果がないことは明らかだった。かえって開示請求を受けることにハマり際限ない誹謗中傷を行うようになる者や、開示されるかされないかギリギリの悪口を見極めて遊ぶ者が出現する。開示された投稿の分析などから「麻原彰晃後継者である」といった虚構の設定の肉付けも行われていった。なおこの時もプロバイダへの訴訟を怠っている。自分の名誉を守るために起こした裁判さえ遂行できないところを見るに以降の手続きをする能力がなかったのかもしれない。

 ついに唐澤貴洋氏と長谷川亮太君の騒動は、槿花一日の熱狂と終わる月並みの炎上さわぎからネット上の一大ムーブメントと言えるものまで昇華し、誰が言ったか「恒心教」が誕生する。「恒心」とは法律事務所の名前から拝借したものだ。そこにオウム真理教尊師の設定などから宗教のイメージを付け足されて、あたかも現実の宗教かのような名称となった。唐澤氏のあまりの無能悪徳を逆に神格化する一種の冗談として、7年以上経った今日まで活動を続けている。【情報源2】

 この書の本題である大橋清貫氏と、この恒心教との邂逅につながるのはそこから2年、2014年に起きた一つのトラブルが発端である。ここから先の出来事は、キーとなる人物、受験コンサルタント業経営者の高橋嘉之氏との関係から説明する必要がある。彼は自身のビジネスのため教育関連サイト「インターエデュ」にて利用規約違反の営業行為を度々行い「にかい」と称する人物を中心に利用者から非難される状況にあったが、この一つの点から伸びた二つの線がそれぞれを結ぶことになるのである。

 まずは大橋氏に繋がる第一の線から辿ってみよう。ルール破りのツケで自業自得とはいえ無数の批判を浴びることとなる高橋氏だが、ある時から「にかい」の正体を知っているという何者かより、何通もの手紙が匿名で送られるようになる。匿名手紙には大橋清貫氏こそが正体であると仄めかされていたのだが、この得体の知れない何者かを支援者と考えて真に受け、彼は「にかい」の復讐として大橋氏への中傷書き込みを始めた。

 このようにファーストコンタクトは敵対的なものだったのだが、やがて転機が訪れる。嫌がらせ投稿の数々が本人の目に留まり、直々に厳重抗議を受けることになったのだった。人違いであったと一転謝罪することになる。ただし、誹謗中傷投稿は、匿名手紙を送付してけしかけた犯人として「島田」なる人物や学校法人広尾学園を新たに標的に定め続行。現在に至ってもネットの書き込みだけに止まらない嫌がらせを繰り返している。島田氏を相手取って起こした裁判に大橋氏が証言を提供するなど協力的関係を築いていることもわかっており、中傷自体止めるのではなくターゲットを移し替えることになったのは、島田氏が匿名手紙で煽りトラブルを起こしてマッチポンプで利益を得るつもりに違いないと大橋清貫氏より示唆を与えられたためと、後に高橋氏自身が訴状で明らかにした。【情報源3】

 匿名手紙により大橋氏への疑念を募らせている最中、2ちゃんねる掲示板での高橋氏批判者の中でも動きが起きる。以前異性との出会いを募集していたのが見つかって晒され始めたのだ。赤っ恥を掘り返されてしまった氏はこれに堪えきれず2ちゃんねる運営に削除要請を提出。これが数多の開示や削除請求をネタにしてきた恒心教のネットユーザーに目ざとく発見される。第二の線が浮かび上がる瞬間だった。後の運命を大きく変える出来事とはつゆ知らず、挨拶代わりのちょっかいを受け早々に怒りで我を忘れることとなる。刑事事件にし特定して叩き潰すと威圧するが勿論一笑に付されるばかりで格好のおもちゃと見做されさらに煽られるだけだ。

 一方で掲示板には高橋氏の味方をするもいた。誹謗中傷問題に強い弁護士を紹介してくれている。何でも恒心綜合法律事務所の唐澤貴洋弁護士に依頼すると解決するらしい。・・・と唐澤弁護士の名前が出た時点で種明かしするまでもなく、やはり弁護士ネタで誘導して茶化しているだけ。しかし、高橋嘉之氏は、本当に唐澤弁護士へ依頼することを決定した。この事実は前述の諸騒動が起こった1年後の2015年、恒心教の掲示板で発覚し唐澤氏の依頼人として大きく取り上げられるようになった。

 あからさまな誘導に騙されたバカな依頼人として笑われることになった氏。反撃とばかりに自身のブログで彼らを批判する。しかし会社経営者という都合上、様々な個人情報を明かさざるを得ない彼には、戦う相手が悪かったようだ。誹謗中傷はやまず高橋氏への興味は増すばかり。唐澤氏と長谷川君を相手に3年もの間飽くなき探求で培ってきた嫌がらせ技術も投入された。後には執拗なネットリンチに精神を患ってしまったのか、島田氏が恒心教すべての黒幕であり彼らを手足として大橋氏を陥れようと権謀術数をめぐらせていると、常人には理解し難い被害妄想に囚われてしまう高橋氏であったがこれはまた別の話としたい。

 高橋嘉之氏がなぜ恒心教と関わるようになったのか。そのひょんな邂逅の意味は教徒にとっても疑問となったようで、ブログで公開されていた情報からそのルーツを探ろうという運動が生まれる。その過程で発掘されたのが大橋清貫氏だった。しかし当時から氏がどういう存在であるかの調査は難航を極めている。島田氏のように一方的な誹謗中傷の被害者か、それとも・・・。進展し始めるのは2017年後期であった。

 ここまで恒心教と大橋氏との関係は高橋氏を媒介にした間接的なものに過ぎなかった。それが2018年、事実追求の産物として恒心教の情報集積サイト「唐澤貴洋Wiki」に大橋氏の一連の情報が掲載されることで歯車が回りだす。巨大インターネット企業を舞台にした決戦の火蓋が切られたのだった。

3章 Googleが騙される、Amazonが騙される

 恒心教サイト「唐澤貴洋Wiki」。名前に反して恒心教関係者以外の利用も数多いらしく、Google検索結果でも非常に上位に位置している。さらに、恒心教というのは長谷川亮太君と唐澤貴洋弁護士のネット炎上が本体であるので、このWikiに掲載されることは、ただそれだけで「この人も炎上しているんだな」という目安になってしまう。簡単に言えば、唐澤貴洋Wikiに名前が載ることは一般的に不名誉であるとされている。検索で上位に表示されるうえ好ましくないサイトということで、検索結果への負の効果は甚大そうだ。

 誰しも自分の名前で検索してよろしくないサイトが出てくるのは嬉しくないに違いない。残念な事態をどう避ければよいのか。それは、初めから目を付けられることをしなければよかったのである。大橋清貫氏に関して言えば、高橋氏に必要以上の関与をしなければよかったということだ。失敗の連鎖の始まりだった。

 唐澤貴洋Wikiへの掲載の数日後、外部サイトに氏の経歴紹介を行うだけの不自然なページが立ち上がる。その翌月には、Wikipediaにも宣伝記事が作成された。これらのウェブページは検索で唐澤貴洋Wikiの表示を下に押し出す狙いがあることは明白だった。こういったネットで目立つ動きはすぐに察知されている。

 それでも唐澤貴洋Wikiが上位に表示されることに業を煮やしたのか、禁断の手法に手を出してしまう。「DMCAテイクダウン」と呼ばれる法的な削除申請だ。【情報源4】「DMCA」とは「デジタルミレニアム著作権法」と訳され、元来著作権侵害から著作者を守るための法律である。あるページが著作権侵害しているとこの法律を根拠にしてGoogleにテイクダウン申請を行うと、違法なコンテンツから申請者の権利を守るために以降そのページが二度と表示されないようになるのだ。ただ、この申請は月間1億件近くにのぼる膨大な数を手早く処理するため自動的に判定されている。機械を騙すのは簡単だ。不正利用も非常に多い。既に広く出回っている画像を根拠に都合の悪い投稿だけ申請する、違法コピーした側が本来権利のあるコピー元を削除させるため申請する、検索結果から消したいネット掲示板に自ら著作権侵害情報を書き込んで申請する。日本ではIT関連企業ウォンテッドリー社が会社の批判記事を封殺するDMCA悪用を行った結果、大規模な炎上に見舞われて評判を失墜させた。大橋清貫氏の唐澤貴洋Wikiの記事への除外申請もそれと同様であった。炎上するところも含めて。

 恒心教徒たちは早速行動を開始した。Wikiに記事を作成されただけで過剰反応したことから検索エンジンを利用した攻撃が有効と睨み、サジェスト汚染が実行される。この頃になると6年前の手口から一歩進んでおり、現実のニュースに関連付けて犯罪などの事実があったように見せかけるようになっていた。朝日新聞デジタルなどニュースサイトから他人の逮捕などのニュースを引用し、容疑者名を大橋氏の名前に書き換えた偽ニュースを幾つも作成、それをできる限り多くの別サイトに投稿することでさらに汚染効果を高める。無料で誰でもページを作れるサイトのJimdoやAmebaブログも活用された一斉攻撃にWiki掲載時よりもサジェストはかえって悪化した。

 ここでまた、大橋氏は対応を誤ってしまう。唐澤弁護士の前轍を踏む行いだった。JimdoやAmebaブログに発信者情報開示を請求したのだ。【情報源5】もう言うまでもなく、開示の脅しは無効である。しかも仮に2つ先の裁判である当人への損害賠償請求訴訟まで苦労してやり通すつもりがあっても、すでに対策として「Tor」(トーアと読む)と呼ばれるソフトウェアが普及していた。もともとは中国などインターネットが検閲される国でも、人権活動家らの自由な発信を可能にするソフトであり、複数の海外のサーバーを経由して使用者のIPアドレスをまったく別物に偽装する。真のIPアドレスを特定することは警察どころか国家が総力をあげても困難なものだ。結果として例えばJimdoやAmebaブログの運営に勝訴しても、手に入る情報が特定不能なものとなり、これ以上先に進めなくなる。この一件で実際にTorが使用されていたのかは分からないが、残念ながら犯人を法廷に引きずり出せてはいない。

 不用意なIP開示は誹謗中傷の勢いを加速させるだけであった。次に検索エンジンの画像検索機能に目を付ける。大橋氏の名前と関連付けるものを不穏当な単語から不穏当な画像に切り替えてサジェスト汚染が進められた。画像にはわいせつであったりグロテスクであったりするものも使われたが、Googleはこれらを青少年への影響のため標準的にブロックして効果がない。試行錯誤の中大橋清貫学園長がバレないセクハラのやり方を教授するセミナーを開催、という一見三田国際学園公式らしいチラシ画像が作成される。大橋氏がすでに社会的立場を帯びる人物であることを逆手にとった方法は一躍ブームとなり、おびただしい数のセミナー予告チラシに、画像の検索も恒心教の手に落ちた。

 これ以上の抵抗が無意味であること、より正しく言えば逆効果であることは、誰の目にも明らか。今更の対策に何ら実効性はなく、高橋嘉之氏との関係が浮上した時点でそれを否定することがベストだったのだ。それでも大橋学園長は諦めなかった。なんと検索エンジンスパム業者を雇用して逆襲を図ったのだ。DMCAテイクダウンや開示請求の弁護士費用で相当の出費であるにも関わらず。雇われた業者もGoogleのポリシーに抵触した不正な方法を当たり前のように使う酷いものであった。ともあれ仕事はきちんとしたようで、低品質ながら膨大な数の広告ページで氏の検索結果は飽和し、大橋氏は束の間の勝利を掴み取ることができたのである。ほんの束の間だけの勝利を。

 しかし当然に、この処置も我が身に跳ね返ることになるのだ。怪しい業者と契約してサジェスト汚染を処理してもらうなど、この手法を熟知した恒心教徒にとっても前代未聞の出来事。これが何も意味するかは言うまでもないことだろう。そこにちょうど追い風が吹くかのように、絶対と思われたDMCAもページを作り直せば復帰させられることが突き止められる。唐澤貴洋Wikiの記事は復活し、粗製濫造ページ群ではアクセスの多いサイトに敵わずまたもや検索結果上位に割り込まれた。それでも懲りずにまた怪しい弁護士を雇いDMCA乱用で再度封じ込める。いたちごっこの様相を呈していた。

 ただ、膠着した戦況は攻め手にとっても同じ。従来の手法では限界が見えてくる。DMCAやスパム業者は対症療法に過ぎずとも汚染された状態を維持させるには相応の苦労を必要としていたようだ。Wikipediaに作られていた宣伝記事を荒らしてデタラメの逮捕歴を書き加えるなど攻撃の手が緩められることはなかったのだが、やはり決め手に欠いていた。反道徳的なセミナーの画像の件より、大橋氏が著名な教育者であることを利用すればダメージを与えやすいとの結論に達していたが、実は上がらなかった。

 このとき現状を打破すべく動き出したある恒心教徒が、世間に広く炎上させることを企み、成りすまして『LGBT:~言論を破壊するものたち~』を執筆するに及んだのではないかという推測が、ここで生まれてくる。唐澤弁護士との開示請求を巡る戦いからここまでに至る道筋の中で、反撃のための手札の多さと巧妙な戦術は実証されている。しかも大橋氏の名声を失墜させるスキャンダルとして話が出来過ぎてはいないか。グローバル教育の三田国際学園で学園長を務める大橋清貫氏がマイノリティに偏見を持っていたというのは、社会的な注目度が大だ。「LGBTは病気」「発達障がい児は子育て失敗」「LGBTへの批判は言論弾圧される」などの発想は教育者でなくても尋常なものではないし、批判されて当然だとわかるはず。

 実はこの説を支持する重要な根拠が他にもう一つある。唐澤弁護士の名をかたってAmazonKindleのなりすまし書籍が販売される事件が、LGBT差別本騒動の2年前に発生していたのだ。【情報源6】Torを使用して民事訴訟や刑事告訴の法的リスクを回避しながら不適切な本を出版するためのマニュアルまで作成された。GMOインターネット株式会社からハッキングで流出した顧客情報が、唐澤氏の味方をする弁護士の名前で出品されるまでに至っている。Amazonでの悪戯からは早々に撤退し廃れたかに見えたが、Amazonはなりすましの可能性を完全に排除したわけではなかった。アカウント登録に必要な氏名住所電話番号銀行口座など個人情報はすべて1円もかけずに偽造することができる。この穴が塞がっていないことに気づいた者が、なりすまし本での騒動を仕組んだというシナリオは十分予想できるものといえるだろう。

 一方で、その犯人がいるとして、いまだに姿を現していない。大橋氏側は司法上の手続きを進めると明言している。今までの過程から何も学んでいなければ、これが散々ネットを挑発してきた発信者情報開示請求を意味することは明らかだ。Torを使う者であれば法的措置は何ら恐れるものではないので、本人を笑いものにするため余裕でメールアドレスに届いた開示請求のファイルを掲示板で公開することが多いものだ。そうでなくとも大橋氏が雇った弁護士が唐澤氏のようにいい加減でなければ、もうすでにIPアドレスから個人を特定する裁判を済ませ、犯人自体を訴える裁判が起きていないとおかしい。販売開始から3か月以上経過しており、時間経過で開示されるべきデータが消えてしまうからである。だがその裁判は起きておらず、何者かは特定されていないし今後もされることはないと予想できる。真犯人は名乗りでないし、見つかってもいない、物的証拠も発見されていないというのが実情だ。筆者は事件に恒心教の影を見つけたが、やはり真相はベールに包まれたままなのだった。

終章 伝えたかったこと

 もちろん今回の事件が本当になりすましであったならば、そこに大橋学園長の罪があるわけではない。騒ぎを取り繕うため狡猾にも成りすまされたふりをしているのであれば言語道断、一刻も早く教育界から退くべきものであるが。疑わしきは罰せず。拠り所のないことでこれ以上に人を責め立てるのは重大な誤りだ。しかし、ここで少し待って考えていただきたい。「成りすまされただけでした」、で終わらせて問題ないものなのかを。

 まず、成りすまされたにしても、今回の事件で被害を受けたのが、学園長自身だけではないと気づくべきであろう。LGBTや発達障がい者、またその支援者たちの苦しみは計り知れない。毎日放送でのニュースでは、「なかなか言葉が出ないような内容だと思います。実際に苦しんでいる現状がある中で、彼らが病気だとか誤った認識を広めるような本が、多くの人の目に触れてしまうことは悲しさを感じます」と、LGBTの就職支援をする企業であるジョブレインボーの星真梨子取締役は語っている。そして何より僕のこの目で見たあの苦しみは誤魔化せない。一方で大橋氏は、代表理事を務めている一般財団法人新時代教育研究所でのお知らせにて名義を冒用されたことにただ憤るだけであった。ダイバーシティを重んじる教育者として、第一に不寛容な思想に抗議すべきであるはずだ。そもそも犯人自体が差別的だと思っているから出版した思想を、なぜ否定できないのか。もしくは本人が本当にLGBTとは病的な存在だという考えを持っているのではないかと疑念が過ってしまう。

 財団法人のお知らせでは、この最も重要なことを表明せずして、余計なことを告知している。「また、悪意ある拡散をしているインターネット上の書き込みに関しましても司法上の手続きを進めてまいります。」の一文だ。訴訟がお好きなのかは知らないが、犯人はともかく、なぜ一般人まで脅迫する必要があるのか理解に苦しむ。拡散をした人々も、偽りの本に騙された被害者だ。成りすまされた大橋氏への悪意はない。報道がなされる以前では、本人が出版したものとして誤解されるのもやむを得ないことだ。無論ネットであろうと人を非難すれば相応の責任が問われることを否定するつもりはない。度を過ぎれば法的措置も取られうる。しかし本は否定されて当たり前の内容だ。マスメディアでも全くもって差別的と断じられている。こういったものへの非難もすべて訴えられるということになれば、世の中というのはすごく窮屈なものになってしまう。差別本で散々だしにされていた言論の自由だが、善いものを評価し悪いものを批判する自由自体は間違っていないのだ。

 今までの過程から考えると、そんな訴えは無視し弁護士と業者のパワーで楽々と「浄化」するのだろうか。それは我々だって同じ立場になれば恥の歴史はかき消したい。経済的負担がなければ。・・・もしかすると、これほど気軽に依頼できるのも、懐が少しも痛まないからではないのか。サジェスト汚染のターゲットにされているのは大橋氏の個人名だけで学園はあまり狙われていないのだが、業者が作成したページには三田国際学園を宣伝するような文言も多数含まれている。これはなぜか。まさか三田国際学園の経費から広告費として、ネット住民との抗争の尻拭いに充てているのではなかろうか。筆者は勿論、学園の財政について知る立場にはない。これは単なる疑惑だ。しかし、真実であれば私的流用と言っても過言ではないだろう。事実、業者や弁護士への頻回の依頼は、幾ら学園長として多額の報酬を得ていたとしても、個人で平気に支払える金額では済まない。【情報源7】

 たとえ三田国際学園の財布から支出されていても、学校のPRとして業者ページが役に立っていたなら、少しばかり大義名分はあるとの反論は受け入れよう。だがこれらのページの大半は、人間にとって意味不明な文章が羅列された単なるスパムだ。それ以前にGoogleが所有する検索データ構築の専用プログラムでないと閲覧できないことも多い。本当はご覧になって確認していただきたいところだが、実はこれらのサイトに直接アクセスすることはコンピューターセキュリティ上非常に危険となっている。ハッキングされている可能性が高いものもあるからだ。本来のサイトに趣旨にそぐわないページで文章は機械的、専用プログラムでしか見られず、かつそれらが無数に作成されているという状態。プログラムにさえわかるようすれば、検索エンジンには反映されるようになるので、悪賢くも宣伝しながらハッキングに気づかせない仕組みと考えられる。プログラミング教育必修化が話題となる中、サイバー犯罪に学校が「補助金」を注入するのは何かの皮肉に思えて仕方がない。生徒や保護者の納めた初年度100万円近くにのぼる学費は、果たして斯様なことのために費消されて善いと言えるのか。

 恒心教の人々を敵に回す結果を産んだ嫌疑についても答える必要がある。高橋嘉之氏について島田氏や広尾学園が黒幕だと唆したとされる件だ。高橋氏は現在もネットで悪質な名誉毀損の荒らし投稿を続けているが、標的となるのは大橋氏本人以外で氏が以前何らかの形で関わった人物や団体が殆ど。件の島田氏も大橋氏が設立した学習塾俊英館(現俊英館フレックス)や広尾学園の関係者。高橋氏による裁判で証言を与えている資料もはっきり存在する。すでにこれらを含めた多数の状況証拠をもって「大橋清貫氏は以前の職場の広尾学園や島田氏と一悶着起こし、恨みから高橋氏を従えて中傷させている」とするのが定説だ。【情報源9】恒心教の唐澤貴洋Wikiにはこう書かれている。「立派な社会的地位を備えており、メディア出演・著書も多数ある教育界の重鎮が、裏で掲示板荒らしを支援しているというのはにわかに信じがたい話であるが、(中略)もはや早急に関係を否定し高橋嘉之を告訴する程度のことを行わなければ、この不名誉な疑惑を払拭するのは困難であると思われる。」

 掲示板荒らしに一方的に味方扱いされているということであれば、濡れ衣で迷惑な話だろう。それこそLGBTは病気だという主義主張の本を勝手に売り出されることのように。LGBT本の一件は速やかに否定している、身に覚えがなければ釈明するはずだ。検索エンジンへのスパム工作で臭い物に蓋し続けることはできない。むしろ疑いを深めていくだけ。不都合なネットの定説も、隠蔽を続けた末に疑念が高まって生まれた。これを疎明する十分な証拠も揃えてきている。遅きに失した感はあるが、「古巣に意趣返しするために、を操って名誉毀損をさせている」のが真実ではないということを、一切明らかするものと信じたい。

 疑惑のデパートとなってしまったのは、ひとえに自らの行いのためだ。さらに安易な隠し立てが脛の傷を増やしている。ネット住民の顰蹙を買い、かえって白日の下へと晒されるのは必定だった。五指に余る醜行を訴えるため、なりすましの本の出版という事件が、引き起こされたのではないだろうか。言うまでもなく無関係なLGBTの方たちを巻き込んだ手法は間違っている。だが言論統制めいた隠蔽工作が、彼らをエスカレートさせたことは疑いようがない。この事件さえ成りすました悪者に責任を被せて有耶無耶にするのは簡単だ。しかしそれは再び人々の敵意を惹起し、きっと第2第3の新たな不幸が生まれてしまう。

 三田国際学園の学園長メッセージには、「今、目の前にいる生徒とどのように向かい合っていくか。それを考えることが教育の原点であると思います。」と綴られている。指摘から背を向けた先に生徒たちの姿はない。子供たちのためにも、誠実さこそが報われることを願おう。

特別章 情報のソース

2019年12月5日時点。リンク先のコンテンツが削除されることに備え、特定日時のウェブページの状態をそのままコピーして恒久的に保存するサービス「インターネットアーカイブ」を一部に利用している。

【情報源1】 この事件は各種インターネットニュースやTBSによるテレビニュースで全国的に報道されることになるのだが、大橋氏は「成りすましによる悪質な嫌がらせ」と発表し、代表を務めている三田国際学園や一般財団法人新時代教育研究所の公式サイトにおいても同様の声明を発表して事態の収拾を図った。

 株式会社ジェイ・キャストによるネットニュース(https://web.archive.org/web/20191008142944/https://www.j-cast.com/2019/10/08369535.html)およびTBS系のテレビ番組「Nスタ」で報道。Nスタでの放送内容は数々のニュースサイトに転載されている。(https://news.cube-soft.jp/archive/3717491.html)大橋学園長のなりすましという発表は各社独自の取材または一般財団法人新時代教育研究所のサイトでのお知らせ(http://www.shinjidaikyouiku.com/news)に基づくものと考えられる。終章に述べたとおりこれらの各種記事どれにおいて差別発言を否定することは行っていない。

【情報源2】 ついに唐澤貴洋氏と長谷川亮太君の騒動は、槿花一日の熱狂と終わる月並みの炎上さわぎからネット上の一大ムーブメントと言えるものまで昇華し、誰が言ったか「恒心教」が誕生する。「恒心」とは法律事務所の名前から拝借したものだ。そこにオウム真理教尊師の設定などから宗教のイメージを付け足されて、あたかも現実の宗教かのような名称となった。唐澤氏のあまりの無能悪徳を逆に神格化する一種の冗談として、7年以上経った今日まで活動を続けている。

 恒心教自体の詳細情報については、恒心教の人々によって運営されている唐澤貴洋Wikiのページ(https://krsw-wiki.org/wiki/?curid=2718)を参照されたい。大橋清貫学園長の記事(https://krsw-wiki.org/wiki/?curid=7603)、なりすまし本騒動の彼らからの解説(https://krsw-wiki.org/wiki/?curid=10252)も存在し、学園長の記事では終章の閲覧するだけで危険な宣伝ハッキングページについての調査結果さえも載せられている。

【情報源3】 島田氏を相手取って起こした裁判に大橋氏が証言を提供するなど協力的関係を築いていることもわかっており、中傷自体止めるのではなくターゲットを移し替えることになったのは、島田氏が匿名手紙で煽りトラブルを起こしてマッチポンプで利益を得るつもりに違いないと大橋清貫氏より示唆を与えられたためと、後に高橋氏自身が訴状で明らかにした。

 東京地方裁判所平成28年(ワ)第20708号の訴状の画像データ(https://imgur.com/a/Vtpez)(https://krsw-wiki.org/images/4/42/20161227sojo7_Vtpez.jpg)(https://krsw-wiki.org/images/5/5a/20161227sojo9_Vtpez.jpg)が残っている。訴外として名前が隠されているのが大橋氏。甲第3号証の陳述書を提供していること、原告が高橋嘉之氏であることが確認できる。なお裁判は控訴審の東京高等裁判所平成29年(ネ)第3762号とも高橋氏の完全敗訴であった。控訴審も含めこれも唐澤貴洋Wikiに掲載されている。(https://krsw-wiki.org/wiki/?curid=7155#.E5.B9.B3.E6.88.9028.E5.B9.B4.28.E3.83.AF.29.E7.AC.AC20708.E5.8F.B7)

【情報源4】 それでも唐澤貴洋Wikiが上位に表示されることに業を煮やしたのか、禁断の手法に手を出してしまう。「DMCAテイクダウン」と呼ばれる法的な削除申請だ。

 DMCAテイクダウン申請を行った場合、その記録が必ず公開される。氏は9回を越えるDMCAの不正利用を行っているが次のリンクはその内の一つのログだ。(https://www.lumendatabase.org/notices/16959188)英語で大橋清貫氏の代理人の法律事務所クロスが申請者として記されている。検索欄に「大橋清貫」と入力すれば他のケースもご覧頂けるはずだ。なお法律事務所クロスというのは唐澤貴洋弁護士が恒心綜合法律事務所の次に開業した事務所で、このことも恒心教の注目を大きく集める原因の一つとなっていたと考えられる。そもDMCAの問題点は恒心教と関わらず多くのネットユーザーに取り上げられているもので、ウォンテッドリー社の事例について非難が高まっていた頃の悪用に炎上は必然だったと言えよう。検索エンジンの仕様研究の第一人者である辻正浩氏も警鐘を鳴らしている。(https://web.archive.org/web/20190608025946/https://webweb.hatenablog.com/blog/seo/wantedly-dmca/)

【情報源5】 JimdoやAmebaブログに発信者情報開示を請求したのだ。

 海外の画像アップローダーにJimdoの発信者情報開示にかかる意見照会書(https://anonfile.com/r66754nbbc/ohashiA_png)(https://anonfile.com/t94a56nabb/ohashi1_png)(https://anonfile.com/7f4f5fncbb/ohashi2_png)およびAmebaブログのメール(https://anonfile.com/f3c2Acn0be/ameba_png)が投稿されている。この海外サイトはTorを利用して画像をアップロードできることが知られており、彼らが訴えられていないのはやはりこれのためであろう。Torは闇に流通する特殊な違法ソフトというのではなく、インターネットの自由を求める人なら誰でもダウンロードできるよう公開されている。(https://www.torproject.org/download/)

【情報源6】 唐澤弁護士の名をかたってAmazonKindleのなりすまし書籍が販売される事件が、LGBT差別本騒動の2年前に発生していたのだ。

 弁護士情報サイト「弁護士ドットコム」のニュースにおいて報じられる。(https://web.archive.org/web/20190513182631/https://www.bengo4.com/c_23/n_6384/)現在は商品が削除され販売していない。GMOインターネット株式会社の事件も日経BP社により報道されている。(https://web.archive.org/web/20190502172411/https://tech.nikkeibp.co.jp/it/atcl/news/17/110102579/)

【情報源7】 事実、業者や弁護士への頻回の依頼は、幾ら学園長として多額の報酬を得ていたとしても、個人で平気に支払える金額では済まない。

 大橋学園長が依頼したと推測される業者のうちの一つ、株式会社ウェブサークルの事例について挙げると、掲載されているパンフレットからは初期費用だけでも数百万円も必要であることがわかる。(https://web.archive.org/web/20190908215311/https://webcircle.co.jp/category/blog/606/)弁護士への依頼も1回あたり数十万円を見込むため(https://www.bengoshihiyo.com/minji/hayami/)、少なくとも開示請求3回とDMCA9回では百万円を下らない。

【情報源9】 すでにこれらを含めた多数の状況証拠をもって「大橋清貫氏は以前の職場の広尾学園や島田氏と一悶着起こし、恨みから高橋氏を従えて中傷させている」とするのが定説だ。

 状況証拠の数々は高橋氏と大橋氏の関係の考察に重要なものとしてやはり唐澤貴洋Wikiにてまとめられている。(https://krsw-wiki.org/wiki/?curid=2958#.E5.B3.B6.E7.94.B0.E6.B0.8F.E3.81.B8.E3.81.AE.E6.94.BB.E6.92.83)(https://krsw-wiki.org/wiki/?curid=7603#.E9.AB.98.E6.A9.8B.E5.98.89.E4.B9.8B.E3.81.A8.E3.81.AE.E9.96.A2.E4.BF.82)高橋氏を中心に取り上げるリンク先とLGBT本事件の解説のため大橋氏をメインにしている本書ではニュアンスが異なる場合があることには注意して欲しい。

筆者について

 藤沢孝司。今回のためだけのペンネーム。数人の友人の名前から文字を借り人名に見えるよう合成したもの。本業はカメラマン。一男二女の親。2019年1月の長女の高校受験を機に教育関連に興味を持つようになる。ちょうど仕事でLGBT関係者の方へ取材を行った頃に差別本事件が発生し、真相を知るため事件について独自に調査を敢行した。