恒心文庫:Kのオナホール

本文

「あ、Kさんだ」
Kさんから頼まれてオランジーナを自動販売機で購入し、お釣りを取る時にふと十円玉に柄があるのに気づく。
ああ、これがカラコインというものか。名前だけは聞いた事あるけど、見たのは初めてだ。
電柱や路地裏にも、Kさんの顔が描かれたシールが貼られているのを見かける。弁護士として知名度が上がるのは良い事であるが、これは悪手だろう。
僕個人としても親友の顔写真が面白おかしく街中に貼られるのは気分が悪い。
名古屋駅で大量に見かけた時は、エスカにまで降りれず、近くの吉野家で済ましてしまった程だ。
最初はKさんも邪険にしているし、今もしているが、ここ最近は諦めているのか「ああまたナリか。ご苦労な事ナリね」と軽くあしらう程度だ。
もうこの程度ではKさんも怒る事はなくなり、冷静になり始めた。そんな時だった。

例のオランジーナとカラコインを持ち、事務所に戻るとKさんが真っ赤な顔で顔を洗っていた。
「どうしたんですか?」
「Yくん、ついさっきそこでヤーマンの覆面をした集団に顔に粘土のような物を押し付けられたナリよ!これは遺憾の意を示すナリ!」
と、力強く蛇口の栓を締め、事務所の最大権限である国営セコムに報告する。
Kさんは国営セコムに先ほどの事を誇張して説明し、果てには殺されそうになり、上級国民だから妬んでいる的な発言をしたと嘘までついている。
よほど怒っているようだ。彼がこんなに怒るのは久しぶりだ。
最近までは冷静に、大人しく事務所に持って来たソファベッドで全裸で寝ている生活を送っているので、ここまで活動的なのは珍しい。

国営セコムに報告し終わると、Kさんはややスッキリとした顔をしていた。
「Yくん。当職は一仕事終えたから寝るナリ。後はよろしくナリよ」
と、Kさんはソファベッドに横になり、獏のうめき声のような寝息を立てて爆睡する。
しかし、これで終わりでは無かった。問題はここからだったのだ。



数日後の事であった。最近事務所で寝泊まりしているKさんから、アイスを買ってくるように言われ、コンビニへと向かっている最中の事だ。
「あ、Kさんだ」
僕は、道端に落ちているオナホパッケージを見る。そこにはKさんの顔が印刷されていた。
《当職のバキューム口マ●コで貴方の個人情報を開示するナリ》なんて煽り文句をつけて、道端に落ちていた。
拾うと中身は空っぽで、また誰かの悪戯かなと顔を上げると、異様な光景がそこには広がっていた。

「うわっ」

コンビニとビルの間に、Kさんの頭を模ったオナホールが壁に貼り付けられズラリと並んでいるのだ。
その中に数人程、そのオナホを使い自撮りをしている者がいる。
彼は、ゲジ眉で釣り目をしており、涎を垂らしながら一心不乱にKさんの顔を模ったオナホに膨張した肉棒を出したり入れたりしていた。
ゴムとローションの間に、気泡が発生し潰れたり発生したりを繰り返すエロイ音が聞こえる。
「おおぉーい!!皆に試して欲しいオナホがあるよぉー!!」
彼の一声で、辺りに居たトカゲのような顔をした男や、悪い芋、Aまでもが集まって来た。
皆が皆、コンビニとビルの狭間でKさんの頭を模ったオナホに腰を振っている。

後ろの方でビニール袋がクシャリと地面に衝突する音が響く。
振り返ると、異界を見たような長谷川くんの怯える表情があった。
「な…なんやこれ、狂っとる!」
ビニール袋の中には、ないしょのツインテールズが三個程入っていた。

「あ!長谷川良太やんけ!」
「あいつのオナホも作ったろ!!」
Kさんに突っ込んでいた人たちは、それを引き抜き、まだ射精に至っていない傍聴したソレを豪快に揺らしながら長谷川くんを追いかける。
長谷川くんは、そんな異常な光景に恐怖し大股開いて走り、逃げて行った。



彼らが居なくなったその路地裏には、Kさんのオナホだけが残されていた。
いやらしく、粘着力のあるローションを口から流れ出るKさんの口、それらが沢山並んでいる。
「あっ…」
気づけば、僕の股間も傍聴している事が分かった。
辺りを見渡すと、誰も居ない。コンビニの店員がスマホをいじり暇そうにしているだけだ。
僕は生唾を飲み込み、一歩ずつKさんのオナホが並ぶ路地裏まで一歩を踏みしめながら歩く。
それは僕が最低の人間になる事に抵抗しているのか、それとも未知なる快楽を求めて進んでいるのか、二つの感情がせめぎ合い、戦っている故の感情であった。

とうとうKさんの顔の形を模ったオナホの前まで来た。僕はまだ、最低な人間になる事に抵抗しているのか、ゆっくりとチャックを下ろす。
未知なる快楽を求めている肉棒が、限界までそそり立っている。
肉棒がKさんの口にあてがうと、ブプゥと空気が漏れ、ローションが嫌らしい音を立てる。
入り口にあてがっただけなのに、こんなに嫌らしい音をされてしまっては、

――未知なる快楽を求めていた感情が、とうとう最低な人間になる事に抵抗していた感情を殺してしまった。

そこからは、もう理性なんて無かった。僕も先ほどの彼らと同じKさんの口に向かって一心不乱に腰を振っていた。
腰を振るたびに嫌らしい音が、気泡が潰れる音が響く。

「あ……ああっ」
そこには、Kさんの顔と音と、僕しかいなかった。
周りなんて、視えていなかった。
胸にこみあげていたものが、下半身に集まる。

「あ…あああ――っ!」

とうとう僕は、Kさんの口の中で果ててしまった。



「遅いナリよYくん!当職、干からびてしまう所だったナリ!」
事務所に戻ると、クーラーをつけてソファベッドで横になっていたKさんが頬を膨らまし怒っていた。
「すみません。カラさんに合うアイスを選んでいました。はいどうぞ」
「…当職はガリガリくんじゃなくて、ダッツのラムレーズンの気分だったナリ!」
Kさんはプンプン怒りながらも、ガリガリくんを頬張り、硬かったのか少し舐めて溶かしている。

僕は、その様子をじっと見つめて、先ほどの事を思い出す。
すると、不思議だ。つい先ほどまで三発も抜いたのに、まだ股間が膨張し始める。
「どうしたナリか?Yくんもこのアイス食べたかったナリか?」
「え?あ………」
「買ってくれば良かったナリね!」
と、Kさんは小悪魔な微笑みを見せ、ガリガリ君を食べ始める。

―――ああ、もう限界だ。

「…ちょっと、トイレに行ってきますね」
「んー、行ってくるナリィ…」
一気にアイスを食べて頭を痛めたKさんの声に、僕の胸は更に熱くなる。
この温暖現象を鎮めるのは僕の場合はアイスではない。コレだ。
Kさんの頭を模ったオナホール。
我慢できず、僕はKさんの口に肉棒を差し込み、先ほどとは違い手を動かす。
Kさんの頭を支配しているようで、最高に気持ちよかった。
「ああ、Kさん…貴方は、もう僕の物だ」
と、Kさんの頭を撫で何度も腰を振る。

「あ……Kさん」

腰を振っている時、僕のポケットに入っていたカラコインがポトリと落ちた。
カラコインに描かれたKさんは、いつもの笑顔で僕とKさんとの行為を地面から見つめていた

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