恒心文庫:尊師のおなか
本文
ぷに
寝巻を着たら寝室に
布団の中から尊師が招く
ぼくはそっと布団に入る
尊師は布団を温めて待っていたのだ
布団の中でぼくはそっと尊師のおなかに頬を添えた
生あたたかい肌の奥から音が響く
人体が奏でるメロディー
尊師の腸の声
お腹がすいているのかな
それともオナラがでるのかな
尊師は何もしゃべらない
ただ僕を黒い瞳で見つめている
僕と尊師はなんだか似てる
おめめが二つ
鼻一つ
口が一つで耳二つ
乳首が二つ
へそ一つ
両足両手丸い尻
似てる僕らは身を寄せる
ベッドの中で肌寄せる
まるで鏡合わせの僕ら
あたたかな沈黙
でも違う
ぼくは尊師と違うんだ
ぼくは尊師の胸元に顔をうずめながらそれとなく彼の下腹部に目を向けた
布団の中の薄暗がりに溶け込む様な陰毛
その向こうから突き出る30万本のぺニス
尊師は僕が不思議の森で拾ってきた
奇形の生物の中で、一際異彩を放って鳴いていた
泣いていた
なんでここにいるんだろう
なんでないているんだろう
小さなおめめはこちらを見つめる
所在なさげなもみじの手
やわらかな手の平
その日から僕らは家族になった
ぼくが親で 子どもの君
ぎこちないおままごと
何より大切な尊い子
今日から君は尊師だ
だけどだめだった
ぼくは彼を息子の様に考えていたのに
彼は人間じゃないのに
だから今ぼくはこうしてこの子に抱かれている
尊師は一世一代の変異種だった
だから尊師は一人
どこに行っても一人
そして僕は尊師に抱かれた
尊師が子を成せばそれは尊師の血を引く子ども
尊師と同じ形の子どもがいれば
尊師は一人にならない
部屋の電気が消された
ぼくは目を伏せた
尊師とぼくはもうあの頃には戻れない
だけどぼくは決めた
尊師を幸せにする
尊師は幸せにならねばならない
ぼくは覚悟とともに今宵も股をひらく
あの日所在なさげに動かされていた手は
力強くぼくの足をにぎりしめる
またの間から覗く尊師
小さなおめめ
丸い鼻
よだれを垂らす口の端
黒い瞳がぼくを無機質に映しながら沈んでいく
夜の帳が、二人をゆっくりと包み込む
尊師の下腹部
30万本のいきり立つ男根
一本残らず何かを求めるかの様によだれを垂らす
ひくつきながら這い寄るイソギンチャク
ついに肉の林の一本が、ぼくの穴をノック
途端、今までバラバラにひくついていた棒が、糸に引かれたかの様に一斉に跳ね上がった
ぼくは黙って腸内の汁を分泌する
尊師はふと動きを止めた
どうしたのかな
ぼくの肛門にキスをしたまま動かない
張り詰めた静寂
肌の上を汗が滑っていく
むず痒く感じるけれど
尊師は動かない
僕も動かない
時計の針が虚空を刻んでいる
時間とともに何かが積み重なっていく
「ふっ」
知らない内に息を止めていたのかな
どちらが息を吸ったかもわからない数瞬の内
ぼくは尊師に肛門を貫かれていた
なにがなんだかわからずに始まった肉の饗宴
あっけに取られたままぼくは押し込まれそして引きずり出される
もしくはのみこんで吐き出している
もう二人は溶け合っているのだ
この作品について
リンク・註釈
- 初出 - なんJ 尊師のおなか(魚拓)
- 恒心文庫:尊師のお尻 - 同一作者の作品?
- 恒心文庫:尊師のお尻ぷりぷりしておいしそうだね - 同上
- ↑ 尊師のおなか>>50-51(魚拓) - なんJ