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兵庫県警ブラクラ摘発事件

提供:唐澤貴洋Wiki
2019年6月13日 (木) 19:09時点における>Ostrichによる版 (進行中のニュースではなくなったので)
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兵庫県警ブラクラ摘発事件(ひょうごけんけいぶらくらてきはつじけん)とは愛知県に住む女子中学生ら5人が無限にダイアログが表示される仕掛けが施されたウェブサイトへのURLをインターネット掲示板に投稿したとして兵庫県警察に補導・家宅捜索された事件である。

概要

2019年3月4日に、クリックすると同じ画面が表示され、消えなくなる不正なプログラムのアドレスを掲示板に書き込んだとして、13歳の女子中学生が補導され、山口県の39歳の無職の男、鹿児島県の47歳の建設作業員の男が家宅捜索を受けた[1]

3月26日には、2018年に13歳の男子中学生と19歳の男子大学生も兵庫県警に摘発されていることが判明し、中学生2人は児童相談所に通告、大学生など3人は書類送検されている[2]

しかし、この「消えなくなる不正なプログラム」というのはJavaScriptで記述されたダイアログの表示を無限ループさせているだけの、JavaScript初心者でも作成できてしまうようなブラクラといってよいのか怪しいレベルジョークプログラムであった[3]。実際にブラウザで読み込まれたとしてもPCやブラウザがクラッシュするなど実害は全くなく、FirefoxやGoogle Chrome、Microsoft Edgeなどごく一般的なブラウザではタブを閉じることで後に何の影響も残さず消すことができる。さらに言えば少女らはこのプログラムを設置した本人ではなくただアドレスのみを書き込んだだけである。

不正指令電磁的記録供用罪の要件を満たすかどうかも疑問な程度のいたずらで逮捕されたと必要最低限の知識を備えたインターネットユーザーからは大きな話題にされ、兵庫県警の無能っぷりを糾弾する者、あるいはあざ笑う者が相次いだ。

ついにはJavaScriptの生みの親として知られるブレンダン・アイクが「Chromeの10年前のブラウザでも無限ループを停止させられた[4]」「(恐らくは少女らの裁判などがあった際)専門家の証人になるかもしれない[5]」とTwitterで語る、世界的なITメディアのZDNetで記事が執筆される[6]、兵庫県警が摘発したものと同じスクリプトを開発するプロジェクト「Lets-get-arrested project」(日本語で「みんなで逮捕されようプロジェクト」)が立ち上げられて[7]オープンソースソフトウェアの世界ランキングで一位を獲得するなど、全世界に兵庫県警サイバー犯罪対策課のレベルの低さが曝け出されることとなった。

国内でも兵庫県警への批判は数多く、衆議院議員の松平浩一氏は「あまりにITリテラシーがなさすぎる」と国会の衆議院法務委員会で事件を取り上げ[8]日本ハッカー協会は摘発された被害者の弁護費用として553人の支援者から約700万円の寄付金を集め[9]、情報セキュリティ学者で今回の摘発に使われた法律である不正指令電磁的記録に関する罪の立法に関わった高木浩光[10]はブログで法の解釈や運用がおかしいと指摘する[11]など著名な人物も反対活動をしている。

田中一哉ネットに強い弁護士として弁護士ドットコムやNHKのニュースで行き過ぎた捜査だと解説して恒心教徒から「部下に熱湯かけてない」と賞賛される有様であった。

なお、騒動の拡大していく最中の3月8日にニュースサイトの取材を受けた兵庫県警サイバー課は「いたずらだったことは重々承知しているが、現行法では懲役、もしくは罰金刑になる犯罪」であると今回の逮捕が正当であったことを強調するも、「みんなで逮捕されようプロジェクト」について「自分の子どもにもそんなことが言えるのか」と皮肉すら理解できない見当違いのコメントを出して恥を上塗りしている[12]

Google アナリティクス規約違反

この事件に関連して、3月5日頃、2016年から兵庫県警のサイトにはGoogle アナリティクスが規約に違反して設置されていることが発覚し[13][14]、利用者の情報を無断収集しているとしてますますの非難を浴びることとなった。

不正なコードを仕込んだ自身を逮捕しろとのネットユーザーの批判や嘲笑を受けながら兵庫県警は6日、全てのGoogle アナリティクスをサイレントで削除した[13]

恒心との関わり

インターネット上の犯罪行為ということ、サイバーカの失態ということから本事件に興味を持つ教徒はそれなりに存在し、ちょうど尊師からの恒心もなかったエビケーの雑談に多くの話題を提供した[15]田中一哉スマイリーキクチといったハセカラ騒動と関係のある人物がこの事件についてコメントを残している。

この事件の影響を受けたとみられるカラッキングも発生している。

田中一哉

3月7日弁護士ドットコムニュースで「『無限アラート』で女子中学生を補導、「リンク貼り付け」で摘発をどう考えるか」という今回の問題を取り扱う田中一哉の記事が公開された。記事について教徒からは有能だという評価を得ている。

「無限アラート」で女子中学生を補導、「リンク貼り付け」で摘発をどう考えるか(魚拓)
インターネット掲示板に無限にアラートが出るページへのURLを書き込んだとして、兵庫県警は不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで、13歳の女子中学生と男性2人の自宅を家宅捜索した。

NHKによると、3人はネット上の別の場所にあったものをコピーして貼り付けていたという。兵庫県警は今後、女子生徒を児童相談所に通告し、男性2人を書類送検する方針だとサンケイスポーツが報じている。

今回問題とされたURLは、クリックすると「何回閉じても無駄ですよ〜ww m9(^Д^)プギャー!!」などと書かれたポップアップが表示。「閉じる」や「OK」を押しても閉じない仕様になっているが、ブラウザ自体を閉じると終了する。

今回の報道を巡っては、ネット上で「ただのリンク」「ネット犯罪ではない」「昔からある無限ポップアップ」などと驚きの声が集まっている。この摘発をどう考えたらいいのか。田中一哉弁護士に聞いた。

●不正指令電磁的記録供用罪とは?

ーー不正指令電磁的記録供用とはどのような罪ですか

不正指令電磁的記録供用罪(刑法168条の2第2項)とは、 (1)正当な理由がないのに、 (2)「不正な指令を与える電磁的記録」を、 (3)人の電子計算機における実行の用に供する という犯罪です。

ーー今回は「未遂」となっています

不正指令電磁的記録供用の未遂を処罰対象とするものです。

犯人が、(3)の「実行の用に供する行為」に着手したものの、(2)の電磁的記録が未だ被害者のパソコン上でいつでも実行されうる状態にまでは至らなかった行為を処罰対象としています。

●「違法な行為」かは疑問

ーー今回問題とされている無限アラートの仕組みについて教えてください

今回、問題とされたプログラムは、JavaScriptを使って警告ダイアログを表示させ続けるという単純な仕組みのようです。

このようなプログラムは、ブラウザあるいはタブを閉じることで、容易に排除が可能です。このような性質を考慮すると、今回の行為が、果たして、刑事罰に値する違法な行為とまで評価できるのか、疑問に感じます。

ーー今回の「無限アラート」は不正指令電磁的記録供用未遂に当たるのでしょうか

まず、(1)正当な理由がなかったことは認められるでしょう。

次に、ポップアップが表示され続けるプログラムが、(2)の「不正な指令を与える電磁的記録」にあたるか否かについてです。

ウェブサイトにアクセスした際、自動的にウインドウが立ち上がって表示される「ポップアップ広告」は、基本的に、「不正な指令を与える電磁的記録」にあたらないと考えられています。このような広告はネットの利用に通常随伴するものと理解されているからです。

一方で、過去の裁判例では、自分の管理するアダルトサイトに、パソコンを再起動しても、ウインドウが表示されつづけるプログラムを利用者に実行させた行為について、不正指令電磁的記録供用罪の成立を認めたものがあります(名古屋地裁岡崎支部、平成29年9月22日)。これはブラウザを閉じても、執拗に表示が続くものでした。

ーー今回の補導では、自分のサイトに置いたわけではなく、他人が作ったプログラムへのリンクを掲示板に貼った行為が問題となっています

不正かどうかというのは、具体的に特定されていない概念です。これを規範的構成要件要素と言いますが、これにあたるか否かは、裁判官の評価次第になります。

「ブラクラ」(ブラウザ・クラッシャー)はブラウザに過剰な負荷をかけるものとされていますが、「ポップアップが表示され続けるプログラム」は、ネットの利用上、通常予定されているものとはいえませんので「ブラクラ」の一類型と評価される可能性があります。

そう考えると、今回の事例では、(2)の要件も満たすと捉えられる余地があります。

●リンクを貼る行為は「供用」か

ーー(3)の「実行の用に供する行為」はどうでしょうか

掲示板上にこのようなプログラムへのリンクを貼る行為が、(3)の供用未遂と評価できるのか。この点、私が知る限り、これを肯定した裁判例はありません。

ーーどういう行為が供用に当たるのですか。

「実行の用に供する」に当たりえる場合としては、ウェブサイト上で不正指令電磁的記録の実行ファイルをダウンロードさせたり、電子メールに添付して送ったりして、実行されうる状態に置く行為などをさします。

供用未遂は、文字通りその未遂を処罰するとしたもので、電子メールに添付された不正プログラムが、被害者のパソコンまで到達せず、プロバイダのメールボックスに届いたに留まる場合などがその例です。

ーー今回は掲示板にリンクを貼った行為が供用未遂とされました

掲示板上にリンクだけ貼る行為は、いまだ、「ブラクラが被害者PC上で実行される危険性が大きい状態」を生じさせたとは評価できないと思います。リンクが貼ってあるからといって、誰かが、そのリンクを踏むとは限らないからです。

この点については、リンクが貼られた場所や、リンクに付されたコメント等の具体的事情に照らして、そのような「危険な状態」の有無を、判断する他ありません。

例えば、このリンクが、閲覧者が非常に多い掲示板上に、クリックを誘引するコメントを付して投稿されていたという事情があれば、「実行の用に供する」という要件が満たされる可能性があるでしょう。

民事の裁判例では、リンクに付されたコメントの内容に照らして、閲覧者が、当該リンクをクリックして、リンク先記事を読むに至るであろうことが予想されることを理由に、リンクの貼付が、名誉毀損にあたるとしたものがあります(東京高裁、平成24年4月18日)。

このような裁判例との均衡からは、今回は単に女子中学生がリンクのみを貼る行為をしていたとすれば、原則として、供用未遂罪の成立は否定されると考えられます。

●「こんなことで摘発されるのか」という印象しかない

ーーネットでは「こんなので家宅捜索されるの」と驚きの声が続出しています

今回の事件については、「こんなことで摘発されるのか」という印象しか有りません。

たしかに、女子中学生らの行いは、社会一般のひんしゅくを買うものではあります。しかし、これに対して補導や家宅捜索をするのが適切かというと、疑問に感じます。

彼女らはリンクを貼ったに過ぎず、リンク先のブラクラも、平均的なネットユーザーであれば容易に排除できるものだったからです。

このような子どものイタズラ的な行為を取り締まることで、不正指令電磁的記録作成等の罪の保護法益である「プログラムに対する社会一般の信頼」が守れるとは思えません。

むしろ、「少しでもルールを破れば摘発される」という印象をネットユーザーに与えてしまうことの不利益を思うべきです。そのような印象の流布は、ネット上の情報流通を停滞させ、表現行為を萎縮させ、私たちが慣れ親しんだネットの自由を変質させる危険をはらんでいるからです。

(弁護士ドットコムニュース)

また、NHKの取材に対して以下のコメントをしている[2]

(記事)

平均的なネットの利用者にとってはこのプログラムはパソコンに悪影響はなく、
ましてやリンクを貼っただけで、自宅まで捜索するのは行き過ぎだと感じる。
今は、何をしたら不正になるのかがあいまいなまま、法律が厳しく運用されており、
萎縮や不安が広がっている。何が不正にあたるのか、社会的な議論を深めていく必要がある。

(動画)

プログラムへのリンクを貼った行為にすぎない。(摘発は)行きすぎだと考えています。
条文上の不正の要件の解釈については、あいまいな点が多く含まれていると思います。
何が不正な行為にあたるかどうかについては、弁護士とか僕たちを含めて、学者さんも含めて、
こういう事件が公に問題になっているのを契機にどんどん議論していくべき。

スマイリーキクチ

本件に「消えなくなる不正プログラムのアドレスをネットの掲示板に書き込んだとして、愛知県刈谷市に住む中学1年生の13歳の女子生徒を補導。中1の少女が簡単にネット犯罪に手を染めてしまう。もうゲーム感覚なんでしょうね。この現実を大人がどのように受け止めればよいのか。。。」とTwitterに投稿し[16]、犯罪になるかも疑わしいものを犯罪だと決め付け非難することはかつて自分が受けた仕打ちを理解していないのかと批判を浴びた。

批判を受けてかその後キクチは「今後検察や裁判で冤罪と認めた際に、お許しを頂けたら三名の方に直接謝罪に伺います。」と釈明するツイートを公開した[17]

関連項目

外部リンク

脚注