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{{Pathnav|インターネット上における権利侵害の問題|frame = 1}} | |||
== Ⅰ 自己紹介 == | == Ⅰ 自己紹介 == | ||
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弁護士。小笠原六川国際総合法律事務所所属。司法修習は60期。一橋大学法学部卒。元IT会社経営者。<br> | 弁護士。小笠原六川国際総合法律事務所所属。司法修習は60期。一橋大学法学部卒。元IT会社経営者。<br> | ||
司法修習生の時に岡村久道弁護士の「IT弁護士の眼」というネット記事を読み,IT弁護士を志した。修習生時代には情報ネットワーク法学会に入り,弁護士になってからは,ITに関連する案件を積極的に受任した。その中で同じ事務所に所属していた清水先生と,2ちゃんねる削除及び発信者情報開示<ref>1)権利侵害情報の発信者に関係するIP、タイムスタンプ(投稿日時)等の開示。</ref>のノウハウを貯めていった。<br> | |||
その後,2ちゃんねる以外の削除及び発信者情報開示請求の案件も来るようになった。つい先日Googleに対する検索結果の削除仮処分を裁判所から得て大きく報道された。<br> | その後,2ちゃんねる以外の削除及び発信者情報開示請求の案件も来るようになった。つい先日Googleに対する検索結果の削除仮処分を裁判所から得て大きく報道された。<br> | ||
2015年5月8日,『ネット検索が怖い』<ref>2)神田知宏『ネット検索が怖い』(ポプラ社,2015年)</ref>という本を上梓した(右図)。<br> | |||
;清水陽平先生<br> | ;清水陽平先生<br> | ||
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弁護士。 2010年11月,法律事務所アルシエンを立ち上げた。早稲田大学法学部卒。司法修習は60期。<br> | 弁護士。 2010年11月,法律事務所アルシエンを立ち上げた。早稲田大学法学部卒。司法修習は60期。<br> | ||
インターネット関係の事件を始めたきっかけは,神田先生とともに2ちゃんねる削除及び発信者情報開示請求の案件を受任したこと。最近では,TwitterやFacebook等外国人絡みの第一号事件を担当した。<br> | インターネット関係の事件を始めたきっかけは,神田先生とともに2ちゃんねる削除及び発信者情報開示請求の案件を受任したこと。最近では,TwitterやFacebook等外国人絡みの第一号事件を担当した。<br> | ||
2015年6月8日,『サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル』<ref>3)清水陽平『サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル』(弘文堂,2015年)</ref>という本を上梓した(右図)。<br> | |||
;中澤佑一先生<br> | ;中澤佑一先生<br> | ||
弁護士。2011年7月,埼玉県で戸田総合法律事務所を立ち上げた。上智大学大学院法務研究科卒。<br> | 弁護士。2011年7月,埼玉県で戸田総合法律事務所を立ち上げた。上智大学大学院法務研究科卒。<br> | ||
インターネット関係の事件を始めたきっかけは,早期に独立したため,他の弁護士にできない専門的で新しい分野に取り組まなければならないという意識があったため。インターネットの誹謗中傷の問題はニーズがある上,専門家が少ないことに気付き,集客サイトを作り,取り扱い案件を増やしていった。<br> | インターネット関係の事件を始めたきっかけは,早期に独立したため,他の弁護士にできない専門的で新しい分野に取り組まなければならないという意識があったため。インターネットの誹謗中傷の問題はニーズがある上,専門家が少ないことに気付き,集客サイトを作り,取り扱い案件を増やしていった。<br> | ||
2013年11月,『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル』<ref>4)中澤佑一『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル』(中央経済社2013年)</ref>という本を上梓した(右図)。<br> | |||
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神田:したらば掲示板とか。<BR><BR> | 神田:したらば掲示板とか。<BR><BR> | ||
清水:したらば掲示板はどちらかというとPCからの書込みが多いですね・最近はスマホから直接書き込みしやすいサイトが増えた結果,開示してみるとスマホだったということは増えてきているかもしれません。<BR><BR> | 清水:したらば掲示板はどちらかというとPCからの書込みが多いですね・最近はスマホから直接書き込みしやすいサイトが増えた結果,開示してみるとスマホだったということは増えてきているかもしれません。<BR><BR> | ||
唐澤: | 唐澤:Googleのサジェスト<ref>5)検索エンジンの入力フオームに,自動的に検索エンジン側で関連していると判断したキーワードが,表示される機能。</ref>機能,関連検索キーワードは当初から問題になっていなかったんでしょうか?<BR><BR> | ||
神田:Yahoo!の関連キーワードで企業の名前と一緒に「悪徳」と出るのを消したいという依頼などがありました。サジェストという機能自体は新しいと思います。<BR><BR> | 神田:Yahoo!の関連キーワードで企業の名前と一緒に「悪徳」と出るのを消したいという依頼などがありました。サジェストという機能自体は新しいと思います。<BR><BR> | ||
清水:サジェスト自体が出てきたのが2010年くらいじゃないでしょうか?<BR><BR> | 清水:サジェスト自体が出てきたのが2010年くらいじゃないでしょうか?<BR><BR> | ||
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==== (1)海外サービスの増加 ==== | ==== (1)海外サービスの増加 ==== | ||
神田:削除や発信者情報開示請求の案件を取扱い始めたころは,日本国内の企業しか相手にしていませんでした。しかし,最近は海外サービスが普通に使われるようになり,クレジットカード1枚で海外のサーバ<ref>6)サーバソフトウェアを提供する電子機器。</ref>と契約したり,海外のドメインが登録できるようになったり,海外のプライバシープロテクションサービスを使えるようになったりしていると思います。そういう状況で海外サービスにおける権利侵害が増えていると思います。<br><BR><BR> | |||
清水:言ってしまえば2ちゃんねるも最初から海外だったのですけど,それは例外として。<BR><BR> | 清水:言ってしまえば2ちゃんねるも最初から海外だったのですけど,それは例外として。<BR><BR> | ||
神田:あれは例外ですね。最初に海外案件で報道されたのは最所先生のFC2だったかと思います。<BR><BR> | 神田:あれは例外ですね。最初に海外案件で報道されたのは最所先生のFC2だったかと思います。<BR><BR> | ||
87行目: | 87行目: | ||
清水:何の話をしているかというと裁判管轄の問題で,どうやって日本で管轄をとるかということです。理論的には,別に日本でサービスを提供していればいいというだけで,米ドルで払おうがなんだろうが関係ないはずなのですよね。<BR><BR> | 清水:何の話をしているかというと裁判管轄の問題で,どうやって日本で管轄をとるかということです。理論的には,別に日本でサービスを提供していればいいというだけで,米ドルで払おうがなんだろうが関係ないはずなのですよね。<BR><BR> | ||
中澤:削除に関する管轄は日本でとれるということで問題ないですよね。清水:削除請求については,不法行為と同じ理由で権利侵害が起こった場所を管轄にすることができます。日本人が日本で権利侵害を受ける,それは画面を見た場所と一般的に考えられていますが,そこを権利侵害の結果発生地とみて,その場所を不法行為地とみることができるのですね。だから日本で管轄がとれるのですけど,開示請求は,プロバイダ<ref>7)何らかのサービスを提供する事業者。</ref>側の所在地が普通裁判籍となります。ですので,海外法人の場合は原則としては日本で管轄が取れないのではないか?というのが,ここでの議論です。<BR><BR> | |||
神田:民訴法の改正があり,日本で事業を営んでいる場合には,日本に拠点がなくても,千代田区を管轄とするという民訴規則があり,東京地裁でできるようになっています。ただ,海外のサーバ会社の情報が,全部英語で書いてあって日本語がない場合に,はたして日本で事業を営んでいると言えるのだろうかという問題があります。この点について,事業をしてないと裁判官が思うと,発信者情報開示が日本の裁判所ではできないという結論になります。他方で,裁判ができるとしても,日本向けに事業をしていない者を東京地裁に呼び出しても,双方審尋期日に来るわけがないと思います。そうすると,裁判ができるとしても事実上意味がないのではないかという危惧はあります。<BR><BR> | 神田:民訴法の改正があり,日本で事業を営んでいる場合には,日本に拠点がなくても,千代田区を管轄とするという民訴規則があり,東京地裁でできるようになっています。ただ,海外のサーバ会社の情報が,全部英語で書いてあって日本語がない場合に,はたして日本で事業を営んでいると言えるのだろうかという問題があります。この点について,事業をしてないと裁判官が思うと,発信者情報開示が日本の裁判所ではできないという結論になります。他方で,裁判ができるとしても,日本向けに事業をしていない者を東京地裁に呼び出しても,双方審尋期日に来るわけがないと思います。そうすると,裁判ができるとしても事実上意味がないのではないかという危惧はあります。<BR><BR> | ||
清水:決定を日本で取得した後に,海外の裁判所に持って行って,現地に通用するものにしてもらい,それを提示することによって応じてもらう,ということはできるかもしれない。<BR><BR> | 清水:決定を日本で取得した後に,海外の裁判所に持って行って,現地に通用するものにしてもらい,それを提示することによって応じてもらう,ということはできるかもしれない。<BR><BR> | ||
106行目: | 106行目: | ||
神田:最近リベンジポルノの案件は多いのですか。<BR><BR> | 神田:最近リベンジポルノの案件は多いのですか。<BR><BR> | ||
中澤:いや,そんな多くないですね。でも,画像貼られたとか,そういうのはすごくありますけど。増えてもいないし,減ってもいないですね,確かに。<BR><BR> | 中澤:いや,そんな多くないですね。でも,画像貼られたとか,そういうのはすごくありますけど。増えてもいないし,減ってもいないですね,確かに。<BR><BR> | ||
清水:あの三鷹の件<ref>8)2013年に起きた女子高生殺人事件において,犯人が女子高生の写真をインターネットに投稿した。この事件をきっかけにして,リベンジポルノ防止法が制定された。</ref> | |||
以降,そういう質問はよく受けるんですけど,あんまり変わらないかなというのが個人的な印象です。<BR><BR> | |||
==== (4)サジェスト汚染 ==== | ==== (4)サジェスト汚染 ==== | ||
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中澤:私はいつも削除して終わりになっちやいますけどね。<BR><BR> | 中澤:私はいつも削除して終わりになっちやいますけどね。<BR><BR> | ||
神田:削除任意請求ですか。<BR><BR> | 神田:削除任意請求ですか。<BR><BR> | ||
中澤:はい。ところで,このサジェストなどは特定電気通信<ref>9)不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信。</ref> | |||
なんでしょうか。<BR><BR> | |||
清水:公開されているので特定電気通信という気がします。<BR><BR> | 清水:公開されているので特定電気通信という気がします。<BR><BR> | ||
神田:何回も検索すればサジェストに出るということを前提にやっているのであれば,特定電気通信になる可能性はありますね。他人の行為を介した特定電気通信になりますが。<BR><BR> | 神田:何回も検索すればサジェストに出るということを前提にやっているのであれば,特定電気通信になる可能性はありますね。他人の行為を介した特定電気通信になりますが。<BR><BR> | ||
157行目: | 159行目: | ||
当のbotだと,例えば1か月に1回という設定もできるし,1時間毎という設定もできます。同じ内容であっても良いし,違う内容をいくつも登録しておき,それを定期的に投稿してくれるという仕組みになっています。<BR><BR> | 当のbotだと,例えば1か月に1回という設定もできるし,1時間毎という設定もできます。同じ内容であっても良いし,違う内容をいくつも登録しておき,それを定期的に投稿してくれるという仕組みになっています。<BR><BR> | ||
神田:そういう形態の相談が増えているような気がします。<BR><BR> | 神田:そういう形態の相談が増えているような気がします。<BR><BR> | ||
中澤:うちは爆サイ<ref>10)ローカルコミュニティ掲示板<http://bakusai.com>。</ref> | |||
がすごく多いんですよ。携帯でバッて書けるので。<BR><BR> | |||
清水:自分はTwitterが多いですね。<BR><BR> | 清水:自分はTwitterが多いですね。<BR><BR> | ||
中澤:清水先生にTwitterが多いのは,Twitterといえば清水だからですよ。<BR><BR> | 中澤:清水先生にTwitterが多いのは,Twitterといえば清水だからですよ。<BR><BR> | ||
191行目: | 194行目: | ||
神田:このランキングに根拠がないから反真実だという主張立証をしたものもあります。<BR><BR> | 神田:このランキングに根拠がないから反真実だという主張立証をしたものもあります。<BR><BR> | ||
中澤:ランキングサイトを作っている業者の人と一回話したことがあります。<BR><BR> | 中澤:ランキングサイトを作っている業者の人と一回話したことがあります。<BR><BR> | ||
神田:ああいったサイトは需要が多いと思います。アフィリェイター<ref>11)成果報酬型広告の広告報酬を得ることを目的として、コンテンツプロバイダを営む事業者。</ref> | |||
が,そういったサイトを作っているケースも多いと思います。アフィリエイターが自分の報酬稼ぎのために,「ここがお勧め」というアフィリエイト<ref>12)成功報酬型広告。</ref>リンクを作り,自分がお勧めしていない方のメジャーな企業については悪口を書く,という手法がありますね。<BR><BR> | |||
清水:アフィリエイトリンクといえば,NAVARまとめですよね。たとえば2ちゃんねるとか,Twitterなどで書かれたものをまとめられて,それが<BR><BR> | 清水:アフィリエイトリンクといえば,NAVARまとめですよね。たとえば2ちゃんねるとか,Twitterなどで書かれたものをまとめられて,それが<BR><BR> | ||
さらに拡敗していく。2ちゃんねるのミラーサイト,コピーサイトもここ数年爆発的に増えている印象です。転皺をベースにした権利侵害が非常に増えている気がしますね。<BR><BR> | さらに拡敗していく。2ちゃんねるのミラーサイト,コピーサイトもここ数年爆発的に増えている印象です。転皺をベースにした権利侵害が非常に増えている気がしますね。<BR><BR> | ||
214行目: | 218行目: | ||
清水:たまにあります。メルマガを勝手にブログに貼られてしまっているとか。<BR><BR> | 清水:たまにあります。メルマガを勝手にブログに貼られてしまっているとか。<BR><BR> | ||
神田:海賊版の販売サイトについて,著作権侵害を理由として削除および発信者情報開示訪求といった事案を扱いました。<BR><BR> | 神田:海賊版の販売サイトについて,著作権侵害を理由として削除および発信者情報開示訪求といった事案を扱いました。<BR><BR> | ||
中澤:ウチでは, | 中澤:ウチでは,ネットショップをやっているお客さんがいるのですけど・中国人が,全く同じデザイン,商品のキャプション<ref>13)商品の説明文。</ref>とかも全てコピーしたサイトを作るのです。<BR><BR> | ||
清水:架空販売のサイトを作るわけですね。入金だけさせて発送しないという。<BR><BR> | 清水:架空販売のサイトを作るわけですね。入金だけさせて発送しないという。<BR><BR> | ||
中澤:おそらくそうです。そのようなサイトについては,商標権侵害という構成があり得ると思います。<BR><BR> | 中澤:おそらくそうです。そのようなサイトについては,商標権侵害という構成があり得ると思います。<BR><BR> | ||
244行目: | 248行目: | ||
神田:執行猶予満了時ですか?<BR><BR> | 神田:執行猶予満了時ですか?<BR><BR> | ||
清水:執行猶予がついているとそれが満了した後じゃないと基本的には削除を認めてくれない。それ以外,例えば罰金だと10年が期間とされているのですが,それだと長すぎるため3年から5年の間ぐらいで認めてもいいのではないかというのが,今のところの実務上の感覚かなと思います。<BR><BR> | 清水:執行猶予がついているとそれが満了した後じゃないと基本的には削除を認めてくれない。それ以外,例えば罰金だと10年が期間とされているのですが,それだと長すぎるため3年から5年の間ぐらいで認めてもいいのではないかというのが,今のところの実務上の感覚かなと思います。<BR><BR> | ||
神田:私は申立書では,もし捕まらなかったら公訴時効が何年なのだろうというところを基準にしています。公衆の正当な関心が何年で薄れるかという趣旨からですね。最高裁のノンフィクション逆転判決<ref>14)最判平成6年2月8日民集48巻2号149頁。</ref>は,出所したら更生を妨げられない利益がスタートすると書いていたと思います。ですので,出所後は何年か経過すれば削除してもよいのではないでしょうか。<BR><BR> | |||
清水:たしかにそのとおりなのですが,でもそうはいってもね,というところなのだと思います。<BR><BR> | 清水:たしかにそのとおりなのですが,でもそうはいってもね,というところなのだと思います。<BR><BR> | ||
神田:先日,仮出所中だが消せるかという相談がありましたが・少なくとも満了してからにしてくださいと回答しました。<BR><BR> | 神田:先日,仮出所中だが消せるかという相談がありましたが・少なくとも満了してからにしてくださいと回答しました。<BR><BR> | ||
315行目: | 319行目: | ||
神田:まずはコンテンツプロバイダじやないかと思います。<BR><BR> | 神田:まずはコンテンツプロバイダじやないかと思います。<BR><BR> | ||
中澤:コンテンツプロバイダつて,今で言うとどういう定義になるのですか。したらば掲示板でいったら?<BR><BR> | 中澤:コンテンツプロバイダつて,今で言うとどういう定義になるのですか。したらば掲示板でいったら?<BR><BR> | ||
一同:シーサー<ref>16)インターネット上で掲示板などのコンテンツを提供している事業者。シーサー株式会社のこと。したらば掲示板〈http://rentalbbs.shitaraba.com>などを運営している。</ref>。<BR><BR> | |||
神田;ライブドアブログでいえばLINE。<BR><BR> | 神田;ライブドアブログでいえばLINE。<BR><BR> | ||
中澤;私はサーバ管理会社にやるのが原則の考え方。サーバがたまたまコンテンツプロバイダと一緒のケースが非常に多い。<BR><BR> | 中澤;私はサーバ管理会社にやるのが原則の考え方。サーバがたまたまコンテンツプロバイダと一緒のケースが非常に多い。<BR><BR> | ||
347行目: | 351行目: | ||
中澤:結構最近は裁判所もいろいろ他の周辺事情を踏まえての同定可能性というのを認めるようになってきて,その田中弁護士事件で同定可能性を認定した理由は,債権者の田中弁護士は実働も長くそれなりに知名度があるのに比べ,もう一人は登録したばかりで,まだほとんど活動がないのであるから,合理的に考えたら債権者のことを指しているというものでした。この理屈でいくと,2,3年後はどうなるか。業務分野の類型とか,そういうのでやるんでしょうけど,同じ分野をやり出したら分からないですよね。<BR><BR> | 中澤:結構最近は裁判所もいろいろ他の周辺事情を踏まえての同定可能性というのを認めるようになってきて,その田中弁護士事件で同定可能性を認定した理由は,債権者の田中弁護士は実働も長くそれなりに知名度があるのに比べ,もう一人は登録したばかりで,まだほとんど活動がないのであるから,合理的に考えたら債権者のことを指しているというものでした。この理屈でいくと,2,3年後はどうなるか。業務分野の類型とか,そういうのでやるんでしょうけど,同じ分野をやり出したら分からないですよね。<BR><BR> | ||
=== | === 6 ハンドルネーム<ref>17)インターネット上コミュニティで本名を名乗らない場合に用いる通称。</ref>と誹謗中傷 === | ||
清水:例えばネットゲームとかで,匿名のアカウント,ハンドルネームだけでやり取りができるわけです。ゲーム内で,何か気に食わないことがあると,あのアカウントのやつがどうのこうのみたいな誹謗中傷が結構されることがあるみたいで,それをなんとかしたいという依頼が結構多いですね。<BR><BR> | 清水:例えばネットゲームとかで,匿名のアカウント,ハンドルネームだけでやり取りができるわけです。ゲーム内で,何か気に食わないことがあると,あのアカウントのやつがどうのこうのみたいな誹謗中傷が結構されることがあるみたいで,それをなんとかしたいという依頼が結構多いですね。<BR><BR> | ||
375行目: | 379行目: | ||
=== 8 最高裁の判断基準 === | === 8 最高裁の判断基準 === | ||
神田:他のウェブページに記載されている情報,同じスレッドの別の記事を読めば当該記事の違法性が分かる,という事例については,最高裁平成22年4月13日<ref>18)最判平成22年4月13日民集64巻3号758頁。</ref>の規範を引きます。同判例は,同じスレッドの投稿,投稿された背景事情を考慮して,記事の違法性を判断するとしています。<BR><BR> | |||
中澤:開示請求において,書いた後に付加された情報を一緒に読んで判断をしてよいかという論点がありますね。<BR><BR> | 中澤:開示請求において,書いた後に付加された情報を一緒に読んで判断をしてよいかという論点がありますね。<BR><BR> | ||
神田:最高裁はスレッドの前後の記事とは書いていませんが,下級審では「前後」と明示しているものが複数あります。<BR><BR> | 神田:最高裁はスレッドの前後の記事とは書いていませんが,下級審では「前後」と明示しているものが複数あります。<BR><BR> | ||
406行目: | 410行目: | ||
神田:ブラック企業という事実なのか,それともブラック企業というのは何かの,残業代未払いといった背景事情を前提にした評価なのかという話です。<BR><BR> | 神田:ブラック企業という事実なのか,それともブラック企業というのは何かの,残業代未払いといった背景事情を前提にした評価なのかという話です。<BR><BR> | ||
唐澤:一般的には証拠で存否が判断できるかどうかという話ですよね。<BR><BR> | 唐澤:一般的には証拠で存否が判断できるかどうかという話ですよね。<BR><BR> | ||
神田:最判平成9年9月9日<ref>19)最判平成9年9月9ロ民集51巻8号3804頁</ref>が,証拠等をもってその存否を決することができる事実かという基準を立てていて,証拠等をもって存否が認定できるのであれば事実摘示であって,証拠等をもって存否を認定できないのが意見論評であるという風な基準を最判が立てているわけです。<BR><BR> | |||
清水:その基準によるとほとんど事実摘示に持っていけるんですよ。一見,意見論評に見えても,その前提としている事実があることがほとんどなので,暗にその事実を摘示しているといえるからです。<BR><BR> | 清水:その基準によるとほとんど事実摘示に持っていけるんですよ。一見,意見論評に見えても,その前提としている事実があることがほとんどなので,暗にその事実を摘示しているといえるからです。<BR><BR> | ||
神田:最判平成16年7月15日<ref>20)最判平成16年7月15日民集58巻5号1615頁。</ref>ですね。この基準も使えます。一見,意見論評のように見えていても,明示または黙示的に特定の事実を摘示している場合には事実摘示であると言っている最高萩があって,意見論評のように見える記載を事実摘示だと主張しています。<BR><BR> | |||
清水:何か違うかというと,違法性阻却事由が変わってくるんですよ。違法性阻却事由は,事実摘示型の場合,公共性,公益目的,真実性の全部を満たす場合に認められますが,意見論評型だと,真実性について,意見論評が前提としている事実が真実かどうかに置き換わるんですね,そうすると,どういうことを前提にしてるかがよく分からない上に,書いている人間も分からないのに,あらゆるものを立証していかなきゃいけないとなってくるんですよ。だから大変なんです。<BR><BR> | 清水:何か違うかというと,違法性阻却事由が変わってくるんですよ。違法性阻却事由は,事実摘示型の場合,公共性,公益目的,真実性の全部を満たす場合に認められますが,意見論評型だと,真実性について,意見論評が前提としている事実が真実かどうかに置き換わるんですね,そうすると,どういうことを前提にしてるかがよく分からない上に,書いている人間も分からないのに,あらゆるものを立証していかなきゃいけないとなってくるんですよ。だから大変なんです。<BR><BR> | ||
神田:ブラック企業が意見論評だということになると,ブラック企業と一言だけ占いてあると,残業代未払いもないし,あれもないし,これもないしと,全部主張立証しなければならなくなります。立証がとても難しくなる。だから,事実摘示にするとよいのです。当社はブラック企業じゃありません,という主張立証になります。<BR><BR> | 神田:ブラック企業が意見論評だということになると,ブラック企業と一言だけ占いてあると,残業代未払いもないし,あれもないし,これもないしと,全部主張立証しなければならなくなります。立証がとても難しくなる。だから,事実摘示にするとよいのです。当社はブラック企業じゃありません,という主張立証になります。<BR><BR> | ||
424行目: | 428行目: | ||
中澤:よくありますが,メディアの特性を言ったからといってどうなるのかという問題がありますよね。<BR><BR> | 中澤:よくありますが,メディアの特性を言ったからといってどうなるのかという問題がありますよね。<BR><BR> | ||
唐澤:相手方の主張でよく書かれたことがあります。<BR><BR> | 唐澤:相手方の主張でよく書かれたことがあります。<BR><BR> | ||
神田:それは最高裁判例違反ですよね。ラーメンフランチャイズ事件<ref>21)最決平成22年3月15日刑集64巻2号1頁。</ref>に反しています。インターネットに一般人が書いたからと言って一概に信用できないものであるとは限らない,といった規範でしたよね。<BR><BR> | |||
清水:刑事事件のですけどね。<BR><BR> | 清水:刑事事件のですけどね。<BR><BR> | ||
中澤:裁判官の情報交換も進んでないですよね。稀に変な判決が出てしまいます。<BR><BR> | 中澤:裁判官の情報交換も進んでないですよね。稀に変な判決が出てしまいます。<BR><BR> | ||
446行目: | 450行目: | ||
神田:日本には「忘れられる権利」という権利はありません。ただ,非常に,「忘れられる権利」というものがセンセーショナルに語られているので,なんとなく皆さん使っていますが,結局のところ削除M求権なのです,日本には人格権に基づく妨害排除請求権としての削除請求権がありますので,欧州のように「忘れられる権利」という慨念を使う必要がありません。<BR><BR> | 神田:日本には「忘れられる権利」という権利はありません。ただ,非常に,「忘れられる権利」というものがセンセーショナルに語られているので,なんとなく皆さん使っていますが,結局のところ削除M求権なのです,日本には人格権に基づく妨害排除請求権としての削除請求権がありますので,欧州のように「忘れられる権利」という慨念を使う必要がありません。<BR><BR> | ||
中澤:EUはないんですか?逆に言うと。<BR><BR> | 中澤:EUはないんですか?逆に言うと。<BR><BR> | ||
神田:5月13日のEU司法裁判所の判決<ref>22)検索エンジンであるグーグルを,コントローラー(管理者)として認めた判決。2014年に判決がなされた。</ref>は,データ保護指令12条Bを根拠にした,個人情報削除請求権が問題になっています。そして,Googleもコントローラーにあたると判断しただけのものです。<BR><BR> | |||
中澤:そうすると,EUでは,個人情報の削除で名誉毀損的なものも削除できるのでしょうか?<BR><BR> | 中澤:そうすると,EUでは,個人情報の削除で名誉毀損的なものも削除できるのでしょうか?<BR><BR> | ||
神田:EU法の専門家によると,各国の法律次第だそうです。今,一般データ保護規則案の審議中で,昨年の秋に議会を通って理事会に行っているけれども理事会の方がまだ議決しないので,データ保護規則がまだ動いていないそうです。このデータ保護規則17条が動いてない段階で,EU司法裁判所が「忘れられる権利」と書いたために,Googleに対して削除請求するのが「忘れられる権利」なのだという風潮になり,日本でも大変話題が盛り上がっているという状況ですよね。<BR><BR> | 神田:EU法の専門家によると,各国の法律次第だそうです。今,一般データ保護規則案の審議中で,昨年の秋に議会を通って理事会に行っているけれども理事会の方がまだ議決しないので,データ保護規則がまだ動いていないそうです。このデータ保護規則17条が動いてない段階で,EU司法裁判所が「忘れられる権利」と書いたために,Googleに対して削除請求するのが「忘れられる権利」なのだという風潮になり,日本でも大変話題が盛り上がっているという状況ですよね。<BR><BR> | ||
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唐澤:今度は,発信者情報開示請求に話を進めたいと思います。発信者情報開示の法的根拠はなんですか。<BR><BR> | 唐澤:今度は,発信者情報開示請求に話を進めたいと思います。発信者情報開示の法的根拠はなんですか。<BR><BR> | ||
清水:まず柱の開示請求というところは,プロバイダ責任制限法<ref>23)プロバイダの法的責任が制限される場合、被害者が発信者の情報の開示を求められる場合を定めた法律。</ref>第4条1項という条文を使っており,これによると自己の権利が侵害されたことが明らかな場合に,当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるもの)の開示を請求することができる,ということになっているわけです。<BR><BR> | |||
神田:権利侵害の明自性がある場合に,住所,氏名,メールアドレス,タイムスタンプ(投稿日時),IPアドレスを開示請求できるのですよね,省令で。<BR><BR> | 神田:権利侵害の明自性がある場合に,住所,氏名,メールアドレス,タイムスタンプ(投稿日時),IPアドレスを開示請求できるのですよね,省令で。<BR><BR> | ||
中澤:どういうときに開示になるのかは法律で,何が開示できるのかは総務省令に規定という立てつけです。<BR><BR> | 中澤:どういうときに開示になるのかは法律で,何が開示できるのかは総務省令に規定という立てつけです。<BR><BR> | ||
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唐澤:ところで,ログインIPの話ありますけど,何を開示してもらうのかについて,IPアドレスや契約者情報など開示の対象となる情報にはいくつか種類があります。<BR><BR> | 唐澤:ところで,ログインIPの話ありますけど,何を開示してもらうのかについて,IPアドレスや契約者情報など開示の対象となる情報にはいくつか種類があります。<BR><BR> | ||
清水:2段階だって言うことをまず説明しないといけないですね<BR><BR> | 清水:2段階だって言うことをまず説明しないといけないですね<BR><BR> | ||
神田:匿名投稿の場合,第一段階はコンテンツプロバイダに対するIPアドレス及びタイムスタンプの開示請求です。コンテンツプロバイダは,投稿者の住所氏名の情報を持っていることが稀です。そして第二段階は開示されたIPアドレスについて経由プロバイダ<ref>24)インターネットサービスプロバイダ(ISP)のこと。インターネット利用者は何らかのISPを利用してインターネットに接続している。</ref>に対する住所氏名の開示請求訴訟です。経由プロバイダは,課金のために契約者の住所氏名を把握しています。ネットの匿名投稿で投稿者を見つけるには,このように必ず2段階になるので,この手続きは面倒です。稀に,コンテンツプロバイダが投稿者の住所氏名を保有していることがありますが,この場合は1段の手続となります。<BR><BR> | |||
清水:90%以上は2段階ですね。<BR><BR> | 清水:90%以上は2段階ですね。<BR><BR> | ||
唐澤:そういう手続きがあって何の開示を受けるかというというところで,一段階目はIPアドレス,タイムスタンプ,二段階目は発信者が実際使っているプロバイダ相手に裁判を起こすので,IPアドレスを使っている契約者が誰であるのかがわかります。メールアドレスについてはいかがですか。<BR><BR> | 唐澤:そういう手続きがあって何の開示を受けるかというというところで,一段階目はIPアドレス,タイムスタンプ,二段階目は発信者が実際使っているプロバイダ相手に裁判を起こすので,IPアドレスを使っている契約者が誰であるのかがわかります。メールアドレスについてはいかがですか。<BR><BR> | ||
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清水:遅いときはひたすら遅いときがありますね。開示まで一か月とか。<BR><BR> | 清水:遅いときはひたすら遅いときがありますね。開示まで一か月とか。<BR><BR> | ||
神田:JCOMはIPアドレスを管理しているのはJCOMですが,実際に契約者情報を持っているのは,各地域会社(JCOM 東京や,JCOM 関東など,多数存在する)です。JCOMは必ずその次があるんです。契約社情報を持っている次の会社を相手に請求訴訟をしなきゃいけないので,大変なんですれ<BR><BR> | 神田:JCOMはIPアドレスを管理しているのはJCOMですが,実際に契約者情報を持っているのは,各地域会社(JCOM 東京や,JCOM 関東など,多数存在する)です。JCOMは必ずその次があるんです。契約社情報を持っている次の会社を相手に請求訴訟をしなきゃいけないので,大変なんですれ<BR><BR> | ||
清水:あと,UQコミュニケーションズ<ref>25)インターネットサービスプロバイダーのこと。</ref>ですね。<BR><BR> | |||
唐澤:この間UQ相手に訴訟を起こしたのですが,実は契約行悄報を持っていると,業務委託を受けていて,それで,「このまま持っていますけど,裁判とかであなたが仮に勝っても高裁行きますよ」っていうのを相手方が言ってきて,実際にまずUQからMVNOの事業者を仮処分で開示してもらって,そこに発信者情報開示請求をしてくださいという話になりました。<BR><BR> | 唐澤:この間UQ相手に訴訟を起こしたのですが,実は契約行悄報を持っていると,業務委託を受けていて,それで,「このまま持っていますけど,裁判とかであなたが仮に勝っても高裁行きますよ」っていうのを相手方が言ってきて,実際にまずUQからMVNOの事業者を仮処分で開示してもらって,そこに発信者情報開示請求をしてくださいという話になりました。<BR><BR> | ||
神田:手順を教えてくれるのですね(笑)。<BR><BR> | 神田:手順を教えてくれるのですね(笑)。<BR><BR> | ||
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清水:プロバイダの責任を制限しろという法律がそもそもおかしいですよね。開示請求権としてもっとちゃんとすべて認めてくれれば良いのにと思います。<BR><BR> | 清水:プロバイダの責任を制限しろという法律がそもそもおかしいですよね。開示請求権としてもっとちゃんとすべて認めてくれれば良いのにと思います。<BR><BR> | ||
中澤:開示による,契約者に対する損害賠償責任の制限も規定されています。<BR><BR> | 中澤:開示による,契約者に対する損害賠償責任の制限も規定されています。<BR><BR> | ||
清水:重要判例は,最判平成22年4月13日<ref>26)前掲注18)。</ref>ですね<BR><BR> | |||
神田:「気違い」1個だけでは,権利侵害の明白性が分からない,という事案ですね。<BR><BR> | 神田:「気違い」1個だけでは,権利侵害の明白性が分からない,という事案ですね。<BR><BR> | ||
清水:そうです。「気違い」という書き込みが1つされているだけの例で,開示請求を受けたプロバイダがそれを拒否したところ,被害者から損害賠償請求されたものの,「重大な過失」(プロバイダ責任制限法4条3項)がないとして請求が認められなかった事例です。<BR><BR> | 清水:そうです。「気違い」という書き込みが1つされているだけの例で,開示請求を受けたプロバイダがそれを拒否したところ,被害者から損害賠償請求されたものの,「重大な過失」(プロバイダ責任制限法4条3項)がないとして請求が認められなかった事例です。<BR><BR> | ||
唐澤:あとドメイン登録業者の問題はいかがですか。<BR><BR> | 唐澤:あとドメイン登録業者の問題はいかがですか。<BR><BR> | ||
神田: | 神田:Whois<ref>27)Whoisで公開される情報が、実際のドメインの保有者の情報ではなく、情報公開代行をしている会社の情報が掲載されること。</ref>プロテクトしている会社は特定電気通信役務提供者じゃないと考えます。ただ事実上,送信防止措置依頼書を送付すると消してくれたりはします。また,管理者に転送してくれたりもします。しかし,法律だけでやろうと思うと,Whoisプロテクトをかけてる会社に対しては法的請求権が立たないと思います。なお,Whoisプロテクトをかけている会社はネームサーバ会社であることがあるので,ネームサーバを開示関係役務提供者と考えて開示請求することがひとつアイディアとして考えられます。些末な論点ですが。<BR><BR> | ||
中澤:ログの保存期間という大きな問題もあります。<BR><BR> | 中澤:ログの保存期間という大きな問題もあります。<BR><BR> | ||
神田:3か月とか6か月といったログ保存期間は短すぎると思います。中傷記事に気づいた時にはもう手遅れになっていますよね。<BR><BR> | 神田:3か月とか6か月といったログ保存期間は短すぎると思います。中傷記事に気づいた時にはもう手遅れになっていますよね。<BR><BR> | ||
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清水:今後の課題ですね。<BR><BR> | 清水:今後の課題ですね。<BR><BR> | ||
唐澤:インターネット上の誹謗中傷の問題の特徴としては,インターネットには国境がないことで,色んな海外のサイトに,記事がコピーされたりすることがありますよね。<BR><BR> | 唐澤:インターネット上の誹謗中傷の問題の特徴としては,インターネットには国境がないことで,色んな海外のサイトに,記事がコピーされたりすることがありますよね。<BR><BR> | ||
清水:Peeep. | 清水:Peeep.us<ref>28)アーカイブサイト。</ref>とかarchive.today<ref>29)アーカイブサイト。</ref>とかですね。<BR><BR> | ||
神田:海外魚拓サイトは削除しにくいですね。<BR><BR> | 神田:海外魚拓サイトは削除しにくいですね。<BR><BR> | ||
清水:削除してくれていた時期はあるのですが,削除してくれなくなってしまいましたね。<BR><BR> | 清水:削除してくれていた時期はあるのですが,削除してくれなくなってしまいましたね。<BR><BR> | ||
中澤:分かっていますよね,魚拓とる人たちも。対処方法が無いわけではありませんが。<BR><BR> | 中澤:分かっていますよね,魚拓とる人たちも。対処方法が無いわけではありませんが。<BR><BR> | ||
清水:検索から排除するということですね。<BR><BR> | 清水:検索から排除するということですね。<BR><BR> | ||
神田:サーバが東欧で,プライバシープロテクト<ref>30)匿名性を担保するサービス。</ref>がパナマといった事案もありますね。もうGoogleから検索結果の削除,という方法しか残りませんよね。書いた人も特定できませんし。刑事の国際犯罪条約でも,なかなかうまくいかないのに。民事の国際条約は難しいですよね。<BR><BR> | |||
清水:そもそも,開示請求ができるというのは結構独特な日本独自の制度らしく,他の国にほとんど無いらしいです。基本的には開示しない,警察が来た場合のみ開示するというのが多くの国での基本的スタンスのようです。ただ,アメリカだとディスカバリーという証拠調べの制度があり,それに基づいて開示ができるようです。<BR><BR> | 清水:そもそも,開示請求ができるというのは結構独特な日本独自の制度らしく,他の国にほとんど無いらしいです。基本的には開示しない,警察が来た場合のみ開示するというのが多くの国での基本的スタンスのようです。ただ,アメリカだとディスカバリーという証拠調べの制度があり,それに基づいて開示ができるようです。<BR><BR> | ||
神田:アメリカのディスカバリー制度は使ったことありますか?<BR><BR> | 神田:アメリカのディスカバリー制度は使ったことありますか?<BR><BR> | ||
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清水:そうそう,インターネットを利用して誰でも閲覧できるものが,基本的に特定電気通信っていうふうに考えてもらっていいです。だからLINEとかメールとかはダメです。あとはSkypeのダイレクトのメッセージ,そういうのが含まれない。<BR><BR> | 清水:そうそう,インターネットを利用して誰でも閲覧できるものが,基本的に特定電気通信っていうふうに考えてもらっていいです。だからLINEとかメールとかはダメです。あとはSkypeのダイレクトのメッセージ,そういうのが含まれない。<BR><BR> | ||
神田:匿名メールで中傷されているから特定したいという相談をたまに受けますが,民事の手続ではできませんよと回答します。警察に持っていきましょうと言って,メールのヘッダーを見てどこのプロバイダ使っているってとこまでは判断して,それを警察に持っていく,というようなところまではやります。<BR><BR> | 神田:匿名メールで中傷されているから特定したいという相談をたまに受けますが,民事の手続ではできませんよと回答します。警察に持っていきましょうと言って,メールのヘッダーを見てどこのプロバイダ使っているってとこまでは判断して,それを警察に持っていく,というようなところまではやります。<BR><BR> | ||
清水:私がたまに相談を受けるケースですが,Twitterで,最初は公開で誹謗中傷をしていたが,後から鍵付き<ref>31)設定で閲覧者の範朗を制限している状態。</ref>になってしまった。鍵付き後も誹謗中傷を書かれているらしいが,これを削除したり開示したりできるのかというケースがあります。<BR><BR> | |||
神田:証拠保全ができているかどうかによります。悪口の書かれていた頃の内容を印刷していたり,スクリーンショット<ref>32)'端末まで衣示された画面を両像保存したもの。</ref> | |||
を撮ってあれば法的請求もできる可能性があります。<BR><BR> | |||
清水:当時,開示されていたかどうかが問題ですよね。<BR><BR> | 清水:当時,開示されていたかどうかが問題ですよね。<BR><BR> | ||
唐澤:Twitterはまとめサイト<ref>33)インターネット掲示板2ちゃんねる〈http://www.2ch.net〉に投稿された記事を編集して公開しているウェブサイト。権利侵害の助長、著作権侵害の問題を生じさせるサイトもある。</ref> | |||
が多数ありますから,証拠は残っている可能性ありますよね。togetter<ref>34)Twitterを編集して公開しているサイト。</ref>とか。<BR><BR> | |||
清水:それはあるかもしれないですね。他にはツイログ<ref>35)Twitterを編集して公開しているサイト。</ref>とか、<BR><BR> | |||
神田:togetterで残っているからTwitterにもあったというような、そった主張はできると思います。<BR><BR> | 神田:togetterで残っているからTwitterにもあったというような、そった主張はできると思います。<BR><BR> | ||
清水:鍵付きになっていると,その状態は特定電気通信にあたるかどうかという問題がありますよね。<BR><BR> | 清水:鍵付きになっていると,その状態は特定電気通信にあたるかどうかという問題がありますよね。<BR><BR> | ||
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以上で,座談会は終わりです。<BR><BR> | 以上で,座談会は終わりです。<BR><BR> | ||
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== 出典・註釈 == | |||
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[[カテゴリ:語録]] | |||
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