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「恒心文庫:唐澤貴洋 南海トラフ巨大地震 被災者 津波 死亡 冥福 祈る」の版間の差分

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>チー二ョ
(ページの作成:「__NOTOC__ == 本文 == <poem> 何日か休日だったものだから、久々に静岡県に行って登山でもしようと思ったものだから、早速電車を…」)
(相違点なし)

2021年10月14日 (木) 18:51時点における版

本文

何日か休日だったものだから、久々に静岡県に行って登山でもしようと思ったものだから、早速電車を乗り継いで静岡県へと向かった。
ハッキリ言って、登山は嫌いだ。でも、自分の健康のためなのなら、なんでもやりたいと思った。
近くに宿があったから、そこで三日間ほどここで泊まる。と、言った。
最初は登山だけをしようと思っていたが、現地を見回るのも面白いだろうと思ったことで、三日間ほど泊まることとなった。
職場については大丈夫だ。山岡君と山本君がしっかりやってくれる筈。
そして、初日。ちょうど正午頃に天城山に登った。帰ってきたときにはもう夕方だった。
初日はとても疲れてしまったので、宿に着くとバタリと寝てしまった。
しかし、その次の日にとんでもないことが起きてしまったのだ。
それは、朝起きて、毎日の日課であったアイドル鑑賞をしていた時だった。
ちょうどももクロのライブを見ていて、興奮気味な時だった。
「緊急地震速報です。強い揺れに警戒してください。」
いきなり出たものだから、びっくりした。
そして、しばらくすると体験したこともない大きな地震が来た。
まずい、これは一回外に出たほうがいい。と思ったが、中々動けず、布団をかぶって身を守った。
外からガラガラと何かが落ちる音がした。建物だ。
もしかしたら、ここも倒壊するのではないかと思い込み、早く逃げたくなってきた。
そして、地震が少し収まった後に、外に出た。
まだ揺れは続いているが、先程よりはまだ少ない。
そして、持っていた携帯電話から通知が入った。
「大津波警報」と。
この宿は、最悪なことにも海岸に近い。
急いで高いところに逃げたかったが、昨日の疲れのせいで足がまともに動かなかった。
走ろうとしても走るたびに腰が痛む。
そして、ついには腰を更に痛めてしまい、まともに走ることもできなくなってしまった。
やばい、津波が来る。
そう思い、後ろを向いた時、既に自分の目の前に、高い波が来ていた。
「ああああああああああああああああああああ(ブリリリブリリリブリュウリュウリュリュリュ!!!ブチュブチュドバババドババッシュ!!!!!ビチョビチョブブブブッ!!!!パスンッッッ!!!!!!
気がつけば、海の中にいた。
そして、自分はふと思った。
「ああ、死にたくなかったな。」と。

その日は友人と二人で静岡県で登山してから海を見る予定だった。
やはり、自分の故郷は最高だ。
10年ほど前だろうか。俺は母親と父親を失った。
大地震だ。
その時、俺は東京に居たが、東京でも強い揺れだったから、いつ考えてもあの地震は異常だった。
主たるものは地震だけではない。津波もある。
俺の母親も父親も猛獣の爪の如く襲いかかる津波に飲みこまれていった。
見つかった遺骨が一部だけだった。
その時大人になって間もなかった俺は思いっきり泣いた。
たびたび墓参りに行った。
その時々、親の笑顔を思い出して泣きそうになっていた。
あれから10年。今では殆どそういった痕跡もないぐらいに復興が進んでいる。
だから、俺は友人とこうして楽しい時間を過ごすことが出来るのだと思う。
そして、登山が終わり、海を見た時には夕方だった。
友人は翌日に仕事があるものだから、帰っていった。
俺も、弟に駄々をこねているだけでなくて、職にそろそろ就かなければならないと改めて気づいた。
海へと顔を隠していく夕日を見ていたら、もう夜が来ていた。
ここ近隣は、あまり住宅地とかが無かったりするものだから、星が綺麗に見えた。
海と星。最高だ。
俺はその最高の景色をカメラで捉えた。
思った通り、カメラで撮っても最高だ。
しかし、その写真を見て不思議に思ったことがあった。
海の中に、何かの服の影が見えたのだ。
きっとそういう錯覚だろうと思ったが、ついつい気になって、海の中を服を着たまま見てしまった。
今思うと、あれは見てはいけなかったものなのかもしれない。
その影が見えたところには、人が居た。
いや、人ではない。幽霊だ。
スーツを着た、小太りの男。弁護士バッジを胸元につけていた。
思わず、顔を見てしまった。
すると、その男の顔は横に曲がっていた。
そこで目が覚めた。
夢だった。
起きた場所はその海岸だった。
なぜ、眠ってしまったのかは自分でも思い出せない。
しばらくすると、ポケットに紙切れが入っているのに気づいた。
すこし濡れていた紙切れにはこう書かれていた。
「海の中にいる弁護士がいます。」
そうか、あの男は、
今でも自分を探してほしかったんだ。
そう思うと、俺は少し悲しくなった。
俺も、社会中に伝わらなくとも頑張らねばと感じるようになった。
そして、俺は底辺から下克上をするために、努力をした。
執筆、プログラミング、科学、勉強、作曲。
できそうなものは何でもした。
その努力が報われたからか、海外の企業にスカウトされた。
俺は、この日本を去り、アメリカへと旅立った。
そして、今日。俺は面接をする。
とても緊張していて、動悸が感じられる。
そして、俺の名前が呼ばれた。
「長谷川亮太くんかな?入って。」
「失礼致します。」
それは、逃げ続けた自分から離れることだけではない。
今年で30近くになるオッサンが、新たなスタートを切る時でもあった。

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