「恒心文庫:運虎武龍」の版間の差分
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>Ostrich (ページの作成:「__NOTOC__ == 本文 == === 月永帝の放蕩と諌言 === 8世紀初頭、唐は繁栄を謳歌しながらも、北方の遊牧民系集団、中華思想で言う狄による度々の襲撃に悩まされていた。 しかもそれまでは押して押されての均衡した状況であったのが、'''月永帝'''(げつえいてい)が皇帝に即位するとこの状況…」) |
>化学に強い弁護士 細 (ムヨペへのリンクをwplテンプレートを用いた物に修正) |
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=== 月永帝の放蕩と諌言 === | === 月永帝の放蕩と諌言 === | ||
{{wpl|8世紀}}初頭、唐は繁栄を謳歌しながらも、北方の遊牧民系集団、中華思想で言う{{wpl|狄}}による度々の襲撃に悩まされていた。 | |||
しかもそれまでは押して押されての均衡した状況であったのが、'''[[月永皓瑛|月永帝]]'''(げつえいてい)が[[wikipedia:ja:皇帝|皇帝]]に即位するとこの状況は更に悪化してしまうこととなる。 | しかもそれまでは押して押されての均衡した状況であったのが、'''[[月永皓瑛|月永帝]]'''(げつえいてい)が[[wikipedia:ja:皇帝|皇帝]]に即位するとこの状況は更に悪化してしまうこととなる。 | ||
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この為、内政が混乱するようになった上に異民族の軍事行動への対処が後手に回り、国境( | この為、内政が混乱するようになった上に異民族の軍事行動への対処が後手に回り、国境({{wpl|万里の長城|長城}})付近の町や村が大損害を被る事が常態化してしまったのである。 | ||
そしてある日、危機感を覚えた臣下の一人、'''谷 川亮'''(コク-センリャウ)は彼に進言をした。 | そしてある日、危機感を覚えた臣下の一人、'''谷 川亮'''(コク-センリャウ)は彼に進言をした。 | ||
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自分より優秀な人材の抜擢を命じられた谷川亮は、困って悩んだ挙句に | 自分より優秀な人材の抜擢を命じられた谷川亮は、困って悩んだ挙句に{{wpl|官僚}}のタマゴ、すなわち{{wpl|科挙}}の合格者をあたってみる事にした。 | ||
科挙という激烈な試験を潜り抜けてきた物ならば優秀なのは当然であったし、まして組織に入っていない段階での人間であれば上下関係などを恐れた硬直化などなくまだ十分理想に燃えている為、柔軟な答えが出ると考えたのだ。 | 科挙という激烈な試験を潜り抜けてきた物ならば優秀なのは当然であったし、まして組織に入っていない段階での人間であれば上下関係などを恐れた硬直化などなくまだ十分理想に燃えている為、柔軟な答えが出ると考えたのだ。 | ||
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'''澤 貴洋'''(タク-キヤウ)の生没年は不明であるが、恐らくこの故事が生まれた時には既に三十台半ばであった可能性が高いということが後の歴史家の研究により明らかにされている。 | '''澤 貴洋'''(タク-キヤウ)の生没年は不明であるが、恐らくこの故事が生まれた時には既に三十台半ばであった可能性が高いということが後の歴史家の研究により明らかにされている。 | ||
貴洋は三十二歳にしてようやく科挙に合格した肥え太った男であったが、しかし地元(現在の | 貴洋は三十二歳にしてようやく科挙に合格した肥え太った男であったが、しかし地元(現在の{{wpl|河南省}})では、彼は親の七光りを身に纏い「'''[[臥薪嘗胆]]'''」と称し道楽の限りを尽くす、貴族の馬鹿息子として有名であった。 | ||
彼の科挙合格は不正によるものであるというのが現代の通説であり、今で言う | 彼の科挙合格は不正によるものであるというのが現代の通説であり、今で言う{{wpl|カンニング}}をした(実は科挙ではカンニングがかなり横行していた)という説と、弟の澤 厚史(タク-コウシ)に{{wpl|替え玉受験|替え玉}}で試験を受けさせた後に厚史を{{wpl|黄河}}に突き落とし口封じをしたという説の二つが存在するが、確たる裏付け資料は未だ見つかっておらず、歴史は決して語らない。 | ||
何はともあれ科挙に合格し | 何はともあれ科挙に合格し{{wpl|長安}}に上った貴洋は、程なくして谷川亮に声を掛けられることとなる。 | ||
=== 推挙と皇帝の試問 === | === 推挙と皇帝の試問 === | ||
谷川亮は | 谷川亮は{{wpl|省試}}(科挙の最終試験)の合格者に「皇帝の補佐をしてみるつもりは無いか」と聞いて回っていたものの、そのことごとくが謝絶されていた。その為彼は焦っていた。 | ||
彼らはいくら科挙に合格したとはいえ未だ実績の無い若者たちばかりであり、国家の命運を握るなど恐れ多いと考えるのも当然のことであった。ましてや失策を奏上してしまった場合死刑は免れないのだ。 | 彼らはいくら科挙に合格したとはいえ未だ実績の無い若者たちばかりであり、国家の命運を握るなど恐れ多いと考えるのも当然のことであった。ましてや失策を奏上してしまった場合死刑は免れないのだ。 | ||
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貴洋は答えた。 | 貴洋は答えた。 | ||
<blockquote>'''「恐怖による治世であります。 それまでいかに善い施政を行い名君と呼ばれていようと、民衆の間に一度反抗心が生まれてしまえばその心はあっという間に中華全土を覆い、やがては | <blockquote>'''「恐怖による治世であります。 それまでいかに善い施政を行い名君と呼ばれていようと、民衆の間に一度反抗心が生まれてしまえばその心はあっという間に中華全土を覆い、やがては{{wpl|革命|易姓革命}}へと繋がることでしょう。 そんなことをさせないために官吏と兵をつかい皇帝の権力というものを人民の心の中にきざみ恐怖心を植え付ければ人民は王朝にもっと協力的になるのではないかと思います。」'''</blockquote> | ||
月永帝はさらに問うた。 | 月永帝はさらに問うた。 |