「唐澤貴洋Wiki:検索避け/テクノロジーと差別 ネットヘイトから「AIによる差別」まで/本文」の版間の差分
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1ヶ所や2ヶ所なら人間ミスをすることもあるでしょうけどこの数とは 何回同じこと言えば済むんですかね →4………今後求められる立法
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==4………今後求められる立法== | ==4………今後求められる立法== | ||
===1 発信者情報開示手続きについて=== | ===1 発信者情報開示手続きについて=== | ||
発信者情報開示手続きについては、改正法により迅速化や手続き的な利便性が向上するものと考えられるが、発信者の特定に必要な通信ログについてのプロバイダにおける統一的な規定が存在せず、通信ログの保存、発信者情報開示についての手続き外での容易性は改正法によっても担保されておらず、改正法に基づき発信者情報開示命令申し立てを行うために実質的に負担が求められる弁護士費用はどうなるのかという経済的負担の問題、権利侵害情報が発出される際に、海外のサービスが利用されることもあるといった問題は依然として残っている。<br> | |||
そして、通信ログの保存期間を定める法令が存在しない現状において、プロバイダごとに異なる保存期間に配慮しながら、被害者が弁護士を見つけ、保存期間内(大手携帯キャリアは、3ヵ月であることが多い)に、手続きに取りかからなければならないことは、被害者にとって相当な負担であろう。<br> | |||
ログイン時IPアドレスについても、侵害関連通信に関わる発信者情報に対して特定発信者情報といった概念を設け、権利侵害情報の発信の直前に使用されたIPアドレスであることが求められることから、契約者情報の開示に利用できるログイン時IPアドレスの範囲は限定的なものとなる。<br> | ログイン時IPアドレスについても、侵害関連通信に関わる発信者情報に対して特定発信者情報といった概念を設け、権利侵害情報の発信の直前に使用されたIPアドレスであることが求められることから、契約者情報の開示に利用できるログイン時IPアドレスの範囲は限定的なものとなる。<br> | ||
以上のような問題点は依然として残ったままであり、改正法の成立によって議論が留まることなく、施行までの間も必要があれば、さらに法改正を行い、被害者救済に資する対応が立法府に求められていると考える。 | |||
===2 差別的言動についての原告適格について=== | ===2 差別的言動についての原告適格について=== | ||
人種差別的言動についての違法性評価を、名誉毀損や業務妨害の違法性評価を前提とせずに、それ単独で違法性評価を行い、不法行為と認めることは、裁判所が「一定の集団に属する者の全体に対する人種差別発言が行われた場合に、個人に具体的な損害が生じていないにもかかわらず、人種差別行為がされたというだけで、裁判所が、当該行為を民法709条の不法行為に該当するものと解釈し、行為者に対し、一定の集団に属する者への賠償金の支払を命じるようなことは、不法行為に関する民法の解釈を逸脱しているといわざるを得ず、新たな立法なしに行うことはできないものと解される」と判断していることから、新たに立法を行うことが必要とされる。<br> | |||
この場合、一定のエリアに居住し、または、事業を行う者にとっては、差別言動が生活の平穏を害する程度になるまで耐えることを求めることは、その言動による法益侵害を軽視するものであり、立法的措置により、一定のエリアにおいて差別言動が繰り返し行われるような場合には、その居住者および事業者は、かかる言動に対する損害賠償請求や、差止めが行えるようにすることは必要だと考える。 | |||
===3 扇動表現について=== | ===3 扇動表現について=== | ||
一つの問題として、住所や通っている学校名など、対象者の情報をインターネット上に公開し、発信者が、対象者に対して何らかの嫌がらせ行為が起こることを企図している場合について考えてみると、このような場合は、そういった情報が対象者個人のプライバシー情報にあたる可能性が高く、プライバシー侵害で権利侵害を構成することはできる。それにより、発信者情報開示請求訴訟を行うことは可能であるが、本件投稿のように、呼び掛け行為そのものと同様の違法性が評価されるかは、その後の損害賠償請求訴訟で問題になってこよう。<br> | |||
上記行為が、単なるプライバシー権侵害としてではなく、別途権利侵害行為を誘発している側面がある点についても、法的には評価される必要がある。その場合、その情報についてどの程度の誘因力を認めるか、扇動後の事情にとって「不可欠かつ重要な原因」と言えるかが問題となってくる。この点について考察してみると、歴史的に見て、その情報が対象者への権利侵害行為を予防するために、一般に公開されていない情報であって、社会的に対象者に対して権利侵害行為が認められていた場合は、権利侵害行為を容易にするためにプライバシー情報が公開されていたと評価し得るのであり、強い誘因力が認められる。そして、プライバシー情報がなければ、新たな権利侵害行為が認められなかったと言える場合は、当該プライバシー情報は扇動後の事情にとって「不可欠かつ重要な原因」と評価し得ると考える。<br> | 上記行為が、単なるプライバシー権侵害としてではなく、別途権利侵害行為を誘発している側面がある点についても、法的には評価される必要がある。その場合、その情報についてどの程度の誘因力を認めるか、扇動後の事情にとって「不可欠かつ重要な原因」と言えるかが問題となってくる。この点について考察してみると、歴史的に見て、その情報が対象者への権利侵害行為を予防するために、一般に公開されていない情報であって、社会的に対象者に対して権利侵害行為が認められていた場合は、権利侵害行為を容易にするためにプライバシー情報が公開されていたと評価し得るのであり、強い誘因力が認められる。そして、プライバシー情報がなければ、新たな権利侵害行為が認められなかったと言える場合は、当該プライバシー情報は扇動後の事情にとって「不可欠かつ重要な原因」と評価し得ると考える。<br> | ||
今後、扇動表現により権利侵害行為が誘発された場合の、当該扇動表現の法的位置づけについては、扇動表現が内包する情報による波及効果への考察や、その情報の従前の取り扱いへの考察が不可欠であり、こういった点についての事情の収集、分析を行い、法的請求を行う必要があろう。<br> | 今後、扇動表現により権利侵害行為が誘発された場合の、当該扇動表現の法的位置づけについては、扇動表現が内包する情報による波及効果への考察や、その情報の従前の取り扱いへの考察が不可欠であり、こういった点についての事情の収集、分析を行い、法的請求を行う必要があろう。<br> |