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「唐澤貴洋Wiki:検索避け/テクノロジーと差別 ネットヘイトから「AIによる差別」まで/本文」の版間の差分

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====①事案の概要====
====①事案の概要====
 在日朝鮮人の学校を設置・運営する法人である学校法人京都朝鮮学園が、2009年12月4日、2010年1月14日および同年3月28日の3日にわたって複数名が行った街頭での示威活動およびその映像をインターネットを通じて公開したことが不法行為に該当し、これにより同学園が被害(1日分1,000万円)を被ったと主張し、その複数名(関連する任意団体も被告とされている)に対し、その損害の賠償金の連帯支払を求めるとともに、その複数名に対し、法人の人格権に基づき、同様の活動の差し止めを求めた事案である。<br>
 在日朝鮮人の学校を設置・運営する法人である学校法人京都朝鮮学園が、2009年12月4日、2010年1月14日および同年3月28日の3日にわたって複数名が行った街頭での示威活動およびその映像をインターネットを通じて公開したことが不法行為に該当し、これにより同学園が被害(1日分1,000万円)を被ったと主張し、その複数名(関連する任意団体も被告とされている)に対し、その損害の賠償金の連帯支払を求めるとともに、その複数名に対し、法人の人格権に基づき、同様の活動の差し止めを求めた事案である。<br>
 示威活動の内容としては、学校周辺で、同校関係者に対し、拡声器を用いて、「『我々はX公園を京都市民に取り戻す市民の会でございます』『主権回復を目指す会及び在特会関西の有志でございます』『(本件学校は)公園を50年も不法占拠している』『日本国民が公園を使えない』『この学校の土地も不法占拠だ』『我々の先祖の土地を奪った。戦争中、男手がいないとこから、女の人をレイプして奪ったのがこの土地』『戦後焼け野原になった日本人につけこんで、民族学校、民族教育闘争、こういった形で、至るところ、至る日本中、至るところで土地の収奪が行われている』『日本の先祖からの土地を返せ』『これはね、侵略行為なんですよ、北朝鮮による』『ここは北朝鮮のスパイ養成機関』『犯罪者に教育された子ども』『ここは横田めぐみさんを始め、日本人を拉致した朝鮮総連』『朝鮮やくざ』『こいつら密入国の子孫』『朝鮮学校を日本からたたき出せ』『出ていけ』『朝鮮学校、こんなものはぶっ壊せ』『約束というのはね、人間同士がするもんなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません』『日本に住ましてやってんねや。な。法律守れ』『端のほう歩いとったらええんや、初めから』『我々は今までみたいな団体みたいに甘うないぞ』『この門を開けろ、こらぁ』等の怒声を次々と間断なく浴びせかけ、合間に、一斉に大声で主義主張を叫ぶなどの示威活動」を行い、また、「『不逞な朝鮮人を日本から叩き出せ』『朝鮮学校、朝鮮学校と言いますがこれはただ自分たちが学校という名前をつけただけであって、何ら我が国の認可を受けた学校でも何でもない』『ここに働く括弧付き教師についても単なる北朝鮮のもっとも優れた工作員である。教師とは縁もゆかりもない学校の名に値しない。教師の名に値しない』『戦後この朝鮮人は治安が整っていない時期に、なめたことに、旧日本軍の、陸海軍の飛行服を身につけ、土地の不法侵奪、金品略奪、強姦、銀行襲撃、殺戮、警察襲撃など、暴れまくったんです』『朝鮮人として、その自分の土地として勝手に登記し、現在に至っている』『朝鮮人を保健所で処分しろ』『犬のほうが賢い』等の発言を繰り返」す、「『はーい、京都府民の皆さん、我々はこれまで50年間、朝鮮人に不当に奪い取られたX公園をやっと日本の子どもたちに取り返すことができたのです』『朝鮮学校は、学校ではありません』『みなさん、日本の文部省の認可を受けていない、ただの任意団体、この任意団体に、なぜ我々が税金を払って、教科書無償、をする必要があるか』『ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮半島へ帰れー』『くやしいくやしい朝鮮人は、金正日のもとに、帰れー』『京都をキムチの匂いに、まみれさせてはいけない』『ゴキブリ朝鮮人、とっとと失せろー』『日本に差別され、くやしいくやしい朝鮮人は、一人残らず、朝鮮半島へ帰れー』『朝鮮学校は、自分たちの悪行を棚に上げ、ひたすら差別だ、涙の被害者面で事実をねじ曲げようと(した。こうしたやり方は)不逞朝鮮人の伝統芸能である』『日本の子どもたちの笑い声を奪った、卑劣、凶悪な朝鮮学校……。子どもを盾に犯罪行為を正当化する不逞鮮人を許さないぞ』等の発言を繰り返」すといったものである。
 示威活動の内容としては、学校周辺で、同校関係者に対し、拡声器を用いて、「『我々はX公園を京都市民に取り戻す市民の会でございます』『主権回復を目指す会及び在特会関西の有志でございます』『(本件学校は)公園を50年も不法占拠している』『日本国民が公園を使えない』『この学校の土地も不法占拠だ』『我々の先祖の土地を奪った。戦争中、男手がいないとこから、女の人をレイプして奪ったのがこの土地』『戦後焼け野原になった日本人につけこんで、民族学校、民族教育闘争、こういった形で、至るところ、至る日本中、至るところで土地の収奪が行われている』『日本の先祖からの土地を返せ』『これはね、侵略行為なんですよ、北朝鮮による』『ここは北朝鮮のスパイ養成機関』『犯罪者に教育された子ども』『ここは横田めぐみさんを始め、日本人を拉致した朝鮮総連』『朝鮮やくざ』『こいつら密入国の子孫』『朝鮮学校を日本からたたき出せ』『出ていけ』『朝鮮学校、こんなものはぶっ壊せ』『約束というのはね、人間同士がするもんなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません』『日本に住ましてやってんねや。な。法律守れ』『端のほう歩いとったらええんや、初めから』『我々は今までみたいな団体みたいに甘うないぞ』『この門を開けろ、こらぁ』等の怒声を次々と間断なく浴びせかけ、合間に、一斉に大声で主義主張を叫ぶなどの示威活動」を行い、また、「『不逞な朝鮮人を日本から叩き出せ』『日本の子どもたちの笑い顔を奪った卑劣、凶悪な朝鮮学校を我々日本人は決して許さないぞ』『北朝鮮の工作員養成機関、朝鮮学校を日本から叩き出せ』『朝鮮学校、朝鮮学校と言いますがこれはただ自分たちが学校という名前をつけただけであって、何ら我が国の認可を受けた学校でも何でもない』『ここに働く括弧付き教師についても単なる北朝鮮のもっとも優れた工作員である。教師とは縁もゆかりもない学校の名に値しない。教師の名に値しない』『戦後この朝鮮人は治安が整っていない時期に、なめたことに、旧日本軍の、陸海軍の飛行服を身につけ、土地の不法侵奪、金品略奪、強姦、銀行襲撃、殺戮、警察襲撃など、暴れまくったんです』『朝鮮人として、その自分の土地として勝手に登記し、現在に至っている』『朝鮮人を保健所で処分しろ』『犬のほうが賢い』等の発言を繰り返」す、「『はーい、京都府民の皆さん、我々はこれまで50年間、朝鮮人に不当に奪い取られたX公園をやっと日本の子どもたちに取り返すことができたのです』『朝鮮学校は、学校ではありません』『みなさん、日本の文部省の認可を受けていない、ただの任意団体、この任意団体に、なぜ我々が税金を払って、教科書無償、をする必要があるか』『ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮半島へ帰れー』『くやしいくやしい朝鮮人は、金正日のもとに、帰れー』『京都をキムチの匂いに、まみれさせてはいけない』『ゴキブリ朝鮮人、とっとと失せろー』『日本に差別され、くやしいくやしい朝鮮人は、一人残らず、朝鮮半島へ帰れー』『朝鮮学校は、自分たちの悪行を棚に上げ、ひたすら差別だ、涙の被害者面で事実をねじ曲げようと(した。こうしたやり方は)不逞朝鮮人の伝統芸能である』『日本の子どもたちの笑い声を奪った、卑劣、凶悪な朝鮮学校……。子どもを盾に犯罪行為を正当化する不逞鮮人を許さないぞ』等の発言を繰り返」すといったものである。


====②本件に対する京都地裁の判断====
====②本件に対する京都地裁の判断====
 裁判所は、人種差別的言動について、「わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約上、法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うものというべきである」としながら、「もっとも、例えば、一定の集団に属する者の全体に対する人種差別発言が行われた場合に、個人に具体的な損害が生じていないにもかかわらず、人種差別行為がされたというだけで、裁判所が、当該行為を民法709条の不法行為に該当するものと解釈し、行為者に対し、一定の集団に属する者への賠償金の支払を命じるようなことは、不法行為に関する民法の解釈を逸脱しているといわざるを得ず、新たな立法なしに行うことはできないものと解される。条約は憲法に優位するものではないところ、上記のような裁判を行うことことは、憲法が定める三権分立原則に照らしても許されないものといわざるを得ない」「したがって、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約2条1項及び6条の規定を根拠として、法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うが、これを損害賠償という観点から見た場合、わが国の裁判所は、単に人種差別行為がされたというだけでなく、これにより具体的な損害が発生している場合に初めて、民法709条に基づき、加害者に対し、被害者への損害賠償を命ずることができるというにとどまる。しかし、人種差別となる行為が無形損害(無形損害も具体的な損害である)を発生させており、法709条に基づき、行為者に対し、被害者への損害賠償を命ずることができる場合には、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約上の責務に基づき、同条約の定めに適合する無形損害に対する賠償額は、行為の違法性の程度や被害の深刻さを考慮して、裁判所がその裁量によって定めるべきものであるが、人種差別行為による無形損害が発生した場合、人種差別撤廃条約2条1項及び6条により、加害者に対し支払を命ずる賠償額は、人種差別行為に対する効果的な保護及び救済措置となるような額を定めなければならないと解されるものである」との判断を示した。</br>
 裁判所は、人種差別的言動について、「わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約上、法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うものというべきである」としながら、「もっとも、例えば、一定の集団に属する者の全体に対する人種差別発言が行われた場合に、個人に具体的な損害が生じていないにもかかわらず、人種差別行為がされたというだけで、裁判所が、当該行為を民法709条の不法行為に該当するものと解釈し、行為者に対し、一定の集団に属する者への賠償金の支払を命じるようなことは、不法行為に関する民法の解釈を逸脱しているといわざるを得ず、新たな立法なしに行うことはできないものと解される。条約は憲法に優位するものではないところ、上記のような裁判を行うことことは、憲法が定める三権分立原則に照らしても許されないものといわざるを得ない」「したがって、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約2条1項及び6条の規定を根拠として、法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うが、これを損害賠償という観点からみた場合、わが国の裁判所は、単に人種差別行為がされたというだけでなく、これにより具体的な損害が発生している場合に初めて、民法709条に基づき、加害者に対し、被害者への損害賠償を命ずることができるというにとどまる。しかし、人種差別となる行為が無形損害(無形損害も具体的な損害である)を発生させており、法709条に基づき、行為者に対し、被害者への損害賠償を命ずることができる場合には、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約上の責務に基づき、同条約の定めに適合するよう無形損害に対する賠償額の認定を行うべきものと解される。やや敷衍して説明すると、無形損害に対する賠償額は、行為の違法性の程度や被害の深刻さを考慮して、裁判所がその裁量によって定めるべきものであるが、人種差別行為による無形損害が発生した場合、人種差別撤廃条約2条1項及び6条により、加害者に対し支払を命ずる賠償額は、人種差別行為に対する効果的な保護及び救済措置となるような額を定めなければならないと解されるものである」との判断を示した。</br>
 裁判所は、被告らの示威活動および示威活動についての映像公開について、学校に対する名誉毀損および業務妨害と認定し、さらに、これらの行為は、在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図のもと、在日朝鮮人に対する差別的発言を織り交ぜてされたものであり、在日朝鮮人という民族的出身に基づく排除であって、在日朝鮮人の平等の立場での人権および基本的自由の享有を妨げる目的を有するものとして、人種差別撤廃条約上の人種差別に該当すると認定した。</br>
 裁判所は、被告らの示威活動および示威活動についての映像公開について、学校に対する名誉毀損および業務妨害と認定し、さらに、これらの行為は、在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図のもと、在日朝鮮人に対する差別的発言を織り交ぜてされたものであり、在日朝鮮人という民族的出身に基づく排除であって、在日朝鮮人の平等の立場での人権および基本的自由の享有を妨げる目的を有するものとして、人種差別撤廃条約上の人種差別に該当すると認定した。</br>
 そして、裁判所は、無形損害についての評価において、「刑事事件の量刑の場面では、犯罪の動機が人種差別にあったことは量刑を加重させる要因となるのであって、人種差別撤廃条約が法の解釈適用に直接的に影響されることは当然のこととして承認されている。同様に、名誉毀損等の不法行為が同時に人種差別にも該当する場合、あるいは不法行為が人種差別を動機としている場合にも、人種差別撤廃条約が民事法の解釈適用に直接的に影響し、無形損害の認定を加重させる要因となることを否定することはできない」「原告に対する業務妨害や名誉毀損が人種差別として行われた本件の場合、わが国の裁判所に対し、人種差別撤廃条約2条1項及び6条から、同条約の定めに適合する法の解釈適用が義務付けられる結果、裁判所が行う無形損害の金銭評価についても高額なものとならざるを得ない」と、人種差別的言動に基づいて生じた無形損害についての金銭的評価について、通常の名誉毀損・業務妨害よりも損害額が加重して判断されると示した。</br>
 そして、裁判所は、無形損害についての評価において、「刑事事件の量刑の場面では、犯罪の動機が人種差別にあったことは量刑を加重させる要因となるのであって、人種差別撤廃条約が法の解釈適用に直接的に影響されることは当然のこととして承認されている。同様に、名誉毀損等の不法行為が同時に人種差別にも該当する場合、あるいは不法行為が人種差別を動機としている場合にも、人種差別撤廃条約が民事法の解釈適用に直接的に影響し、無形損害の認定を加重させる要因となることを否定することはできない」「原告に対する業務妨害や名誉毀損が人種差別として行われた本件の場合、わが国の裁判所に対し、人種差別撤廃条約2条1項及び6条から、同条約の定めに適合する法の解釈適用が義務付けられる結果、裁判所が行う無形損害の金銭評価についても高額なものとならざるを得ない」と、人種差別的言動に基づいて生じた無形損害についての金銭的評価について、通常の名誉毀損・業務妨害よりも損害額が加重して判断されると示した。</br>
 裁判所は、上記判断のもと、被告らに対する損害賠償請求を一部認容し、差し止め請求にいても一部の被告に対するものについて認容した。
 裁判所は、上記判断のもと、被告らに対する損害賠償請求を一部認容し、差止請求にいても一部の被告に対するものについて認容した。


====③本件地裁判決の評価====
====③本件地裁判決の評価====
 裁判所は、人種差別的言動が行われただけでは、不法行為は成立せず、具体的な損害発生が必要であると判断している。この場合、具体的な損害発生をどのように認めるかで、原告適格をどのように認めるかの実質的な絞り込みが行われると考えられる。本件では、学校の周辺において複数回にわたり、執拗に、学校名について言及しながら名誉毀損行為・業務妨害行為が行われた事案であった。
 裁判所は、人種差別的言動が行われただけでは、不法行為は成立せず、具体的な損害発生が必要であると判断している。この場合、具体的な損害発生をどのように認めるかで、原告適格をどのように認めるかの実質的な絞り込みが行われると考えられる。本件では、学校の周辺において複数回わたり、執拗に、学校名について言及しながら名誉毀損行為・業務妨害行為が行われた事案であった。
 本件判決では、裁判所は、名誉毀損の成立について、「本件学校を経営する原告が、1960(昭和35)年(本件学校が本件公園北側に移転した時期)から2009(平成21)年まで50年の長きにわたり、本件公演を不法占拠したこと、原告が本件学校の敷地も暴力で奪い取ったこと、本件学校が北朝鮮のスパイを養成していること、本件学校の児童の保護者は密入国者であることを、不特定多数人に告げるという行為あり、原告の学校法人としての社会的評価たる名誉・名声(以下、単に「名誉」と言う)を著しく損なう不法行為である」として、対象事実を原告についての社会的評価を低下させる事実に限定し、示威行為に伴う差別的言動については、別途の検討のうえ、人種差別に該当するとし、名誉毀損および業務妨害によって発生した無形損害の評価での加重事由として用いてる。</br>
 本件判決では、裁判所は、名誉毀損の成立について、「本件学校を経営する原告が、1960(昭和35)年(本件学校が本件公園北側に移転した時期)から2009(平成21)年まで50年もの長きにわたり、本件公園を不法占拠したこと、原告が本件学校の敷地も暴力で奪い取ったこと、本件学校が北朝鮮のスパイを養成していること、本件学校の児童の保護者は密入国者であることを、不特定多数人に告げるという行為あり、原告の学校法人としての社会的評価たる名誉・名声(以下、単に「名誉」と言う)を著しく損なう不法行為である」として、対象事実を原告についての社会的評価を低下させる事実に限定し、示威活動に伴う差別的言動については、別途の検討のうえ、人種差別に該当するとし、名誉毀損および業務妨害によって発生した無形損害の評価での加重事由として用いてる。</br>
 では、本件と異なり、ある者や集団が特定のエリアを周回する形での示威活動を行い、学校名と言った具体的な言及がなく、人種差別的言動が繰り返される場合に、その言動の対象とされる集団に属する者が、損害賠償請求を行うことができるのかを考えることが、本判決により保護の対象となる者、そうでない者の限界が見えてくると考えている。</br>
 では、本件とは異なり、ある者や集団が特定のエリアを周回する形での示威活動を行い、学校名といった具体的な言及がなく、人種差別的言動が繰り返される場合に、その言動の対象とされる集団に属する者が、損害賠償請求を行うことができるのかを考えることが、本判決により保護の対象となる者、そうでない者の限界が見えてくると考えている。</br>
 この場合、本件判決の判断は、原告名に対する言及があることを前提として、原告に関連する個別的な社会的評価を低下させる事実を認定し、名誉毀損と評価している。人種差別的評価に値する言動は、名誉毀損による無形損害の発生の加重事由として判断されており、人種差別的言動のみからの無形損害発生を認めているわけではない。<br/>
 この場合、本件判決の判断は、原告名に対する言及があることを前提として、原告に関連する個別的な社会的評価を低下させる事実を認定し、名誉毀損と評価している。人種差別的評価に値する言動は、名誉毀損による無形損害の発生の加重事由として判断されており、人種差別的言動のみからの無形損害発生を認めているわけではない。<br/>
 となると、特定のエリアで個別名称に言及することなく、人種差別的言動が繰り返された場合では、不法行為上の名誉毀損といった評価が発言内容からできないときは、不法行為としての評価がなされない可能性が多分に認められる。となると、特定エリアに居住ないし事業を行うものに対して人種差別的言動が繰り返されるような場合において、何も争う手立てがないのかが問題となってくる。この場合は、人種差別的言動が行われている態様をとらえて、平穏に生活する利益を害するとして主張を構成していくことは一つ考えられるだろう。音の大きさが日常生活において受忍すべき外音と比べてどうか、人を畏怖させるような活動であったか等をとらえて、人種差別的言動についての違法性を評価し、不法行為として構成していくのだ。</br>
 となると、特定のエリアで個別名称に言及することなく、人種差別的言動が繰り返された場合では、不法行為上の名誉毀損といった評価が発言内容からできないときは、不法行為としての評価がされない可能性が多分に認められる。となると、特定エリアに居住ないし事業を行う者に対して人種差別的言動が繰り返されるような場合において、何ら抗う手立てがないのかが問題となってくる。この場合は、人種差別的言動が行われる態様をとらえて、平穏に生活する利益を害するとして主張を構成していくことは一つ考えられよう。音の大きさが日常生活において受忍すべき外音と比べてどうか、人を畏怖させるような活動であったか等をとらえて、人種差別的言動についての違法性を評価し、不法行為として構成していくのだ。</br>
 この場合においては、人種差別的言動による継続的な被害が評価となってくるため、単に特定の集団に属しているといっただけで、一時的な被害しか発生していない場合は、当該人種差別的言動の違法性は認められず、具体的な損害の発生も認めれない可能性は否定できない。
 この場合においては、人種差別的言動による継続的な被害が評価となってくるため、単に特定の集団に属しているといっただけで、一時的な被害しか発生していない場合は、当該人種差別的言動の違法性は認められず、具体的な損害の発生も認めれない可能性は否定できない。


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