恒心文庫:自分語り怪獣
本文
20XX年、千葉県の海岸線に、怪獣が現れた。駆けつけた自衛隊の部隊は全滅。生き残った2人の自衛隊員である隊長と小津は、壊れた戦車の影からその怪獣を見据えていた。
「隊長、このまま街に入られたら、日本は壊滅です……」
しかし、隊長は、砂浜をゆっくりと歩む怪獣の足元――そこに立つ、一人の老婆を発見した。
「高齢女性が逃げ遅れている!」
「何言ってるんですか! 助けにいけば3人まとめて殺されてしまいます!」
「市民を助けるのが俺たち自衛隊の役目ではないのか!」
隊長は小津を叱責し、2人で走って老婆の元へ向かい、無事に救出した。老婆を抱えて逃げる隊長と小津。なんとか洞窟を見つけ、怪獣が通り過ぎるまで老婆と3人で隠れることにした。
洞窟へ入って1時間が経過した。怪獣は一向に過ぎ去る気配はない。焦る小津をよそに、老婆は語り出した。
「あいつは怪獣じゃない…人間なんじゃよ…」
そんな馬鹿なと疑う隊長と小津、しかし老婆は続けた
老婆曰く、あの怪獣の正体は、かつてネット掲示板全盛期にコテハンを付けて自分語りをしていた長谷川亮太であり、彼は炎上し、特定され、弁護士に相談するも職務放棄されてしまう。実家からも追い出され全てを失った長谷川亮太は、自殺しようと海に飛び込んだが、奇跡的に生き延び、そのままネットもデジモンもない無人島に漂流してしまった。弁護士は職務放棄による日弁連の批判を恐れてこの事実を隠蔽した。長谷川亮太はその島の過酷な環境が影響して、自分語り怪獣チンフェへと変貌し、自分を見捨てた弁護士に復讐しに現れたのだった。
千葉県を火の海に変える怪獣。洞窟内の温度が上昇し、このままだと危険だと判断した小津は、3人で別の場所へ逃げようとするも、老婆は怪獣の方角へ走り去ってしまった。老婆を助けに向かう隊長と小津。火の海になった街を見渡した老婆は怪獣を見上げ、あまりの惨状に思わず叫んだ。
「あいつ気持ち悪すぎ、死ねばいいのにくそやろー、ガイジかな、あれ」
その叫び声に一瞬、我を取り戻す怪獣。
だがその復讐の行軍は止まることはなかった。怪獣は老婆を踏み殺して東京に向かって進撃、遂に東京へ到達した。
そして田園調布の一軒家を発見し、その一軒家をめがけて自分語り熱戦を放射。
「こ、国営セコム!助けるナリよ!当職は善良な市民ナリよ!」
と悲痛な叫び声をあげる80代くらいの太った老人と共に一軒家と周囲の家をまとめて破壊、一瞬で塵に変えた。
火の海へと変わる東京。しかし隊長は、何かをひらめいたようで、怪獣の元へ向かって走っていった。もう人間の面影がほとんど残っていない無敵の怪獣に勝てるわけがないのにと絶望する小津。隊長は撃墜した米軍の飛行機の上に上り、崩壊した皇居にあった日本国旗を広げて、怪獣に向かって叫んだ。
「いつとは言わんが以前ガチで同じクラスだっただけになんとも言えないですわ!!!!!」
その言葉を聞いた怪獣は、隊長の方を向く。隊長が掲げる日本国旗には、潰された老婆が何かを握っていた紙を貼り付けていた。そう、長谷川亮太がうpした合格通知書である。
トラウマを呼び起こされた怪獣は発狂、今までにないくらい恐ろしい咆哮を上げて、隊長に向かって熱戦を放射しようとしたのだ
「今だ!」
そう叫ぶ隊長。そう、実は怪獣は熱戦を吐く瞬間だけ体が脆くなっていたのだ!
小津が全滅して無人になった基地からミサイルを発射する。放たれたミサイルが、怪獣の胸を正確に貫く。 爆発的な閃光。しかし、それは破壊の光ではなく、浄化の炎のように見えた。そして、怪獣の巨体は崩れ落ちた。
怪獣を倒したことに喜ぶ小津と一般市民達。しかし怪獣の亡骸を見た隊長は、こう呟いた
「長谷川亮太、弄るぞ。」
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。
リンク
- 初出 - デリュケー 自分語り怪獣(魚拓)