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恒心文庫:最終レース

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

とある競馬場にて負けが越した老馬が処分されるかされないかの瀬戸際だった
若い頃は美しい白馬だったその馬も歳には勝てず
その衰えた姿は哀愁を漂わせていた
老馬の調教師である老馬の息子は頭を抱えて悩みながら嘆く
このままでは父はお肉にされてしまう
体毛はバイオリンの弦に骨は細工物の材料にされる事だろう
「あぁ、どうしたらいいんだ・・・誰か、誰か知恵をくれ」
息子は父に跨ると尻を鞭で叩く
老馬はピクッと反応したが覇気も闘魂も感じられなかった

ついに明日は父の処遇を決める最終レースだ
調整に奮起しているがやはりもうどうにもならないと感じていた
幼い頃を思い出し父の乳を吸う
そう涙していると後ろに気配を感じた
「明日のレースに勝ちたいですか」
驚き振り返るとこの世の全てを牛耳っていそうなロマンスグレーがいつのまにかそこに居た
「私にその老馬の運命を委ねないかね?」
私は無意識に「はい」と答えていた

さていよいよレースがスタートだ
父にはあの男が乗っている
合図が鳴り一斉に逞しい馬達が走る走る走る
一頭出遅れた馬がいた、父だ
父はムシャムシャと芝生を食べているではないか
あぁ、あの詐欺師め、やっぱり無理だったんだ
しかし何やら様子がおかしい
乗り手のあの男が鞭を弄っている
と、父の身体に電気が走る!
ブヒィィィィン!!
物凄い速さで父が行く!!
前の馬を追い抜き強豪達に追いついた!
なるほど、父の前立腺に電気を流す事で馬の身体能力を極限にまで高め颯爽と駆け巡る事が出来る訳だ
先頭を走る強豪達に追いつく
男は今度は針を取り出した────父の前立腺に突き刺した!
ブヒィィィィン!!ブヒィィィィン!!!!
Sランク馬達を追い越した!!
しかしながら先頭を走るサラブレッドにはあと一歩だ
当職は父と共に会場のモニターに映る男がニヤリと笑うのを見た
男は焼いた火かき棒を取り出した
それを父の前立腺にジュッと押し当てた!!
ブヒィィィィィィィィィィィィィ

ピュッ ピュッ

父は射精するとそこにヘナヘナと沈む
これには男も予想外だった様で
静かに父から降りると棄権を申し立てた

・・・
豆知識だが馬の屠殺方法は銃殺である
ライフルを握るはあの男
父と当職は縛られて身動きが取れずにただ震えていた
「あのまま気持ちよく一等だったら嘸気持ちよかったでしょうねぇ」
「勝てるレースだったのに、貴方がとんでもないマゾ馬だなんて予想外でしたよ」
「前立腺に焼ゴテを押し付けられて射精するだなんて…」
汚いモノを見る目で父を見つめると男は引き金を引く
父の頭が弾け飛ぶ
「と、当職は関係ないナリィ…」
泣きながら命乞いをすると男が答える
「やぁやぁ、もうそんな事関係ないんですよ」
「私が"負けた"のを見てしまったって事が問題なんです」
「私は生涯無敗を誓ってましてね」
「あの会場に居た人間は全員漏れなく殺します、何年掛かろうが、どれだけ費用を払おうが」
その顔は笑っていた
それはまるで新しいテレビゲームを買ってもらった子共の様だった

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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