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恒心文庫:安藤

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

狭い個室。人間一人座るのがやっとの小さな小さな部屋。そこが今の私の居場所だ。
社会の歯車に囚われ、巨大な組織に閉じ込められ、常に誰かから監視される。
そんな私にとって「居場所」はもうここくらいしかないのだ、という比喩的な表現でもあるのだが、
いや、単に用を足し終わって少しの間考え事をしているだけなのかも知れない。
冷たい陶器の座に腰を下ろして。
(陶器ちゃうで、合成樹脂やで)(陶器やぞ)(オスやぞ)
(最近の安物オーナメントは合成樹脂製が多いです、とりとり)(陶器やぞ)(オスやぞ)(合成樹脂やぞ)
そんな声なき声が頭の中を去来する。

以前の私はもっと自由だった。
欲しいものを手に入れるためであれば、手段を選ぶ余裕も、その必要もなかった。
そのために幾人かを傷つけ、多くの人に迷惑をかけた。
それを振り返ることすらあれども、決して反省しない私は、あるいは異常者なのだろうか。

今のこの状況は、私の行いに対する罰なのだ。
いや、いずれ来るべき時に審判が下されるまでの猶予期間なのかもしれないが。

私は何をなし得たのだろうか。
特定の弁護士の評判を知ってもらいたかった。これはまあ、部分的に達成したと言えるだろう。
利用できるものは全て利用し、例の騒動をマスメディアに取り上げさせることに成功した。
それで?
私は本当にこんなことをしたかったのか。誰かからの賞賛を得たいためだけにやったことではないのか。
いや、賞賛すら何かの埋め合わせのためだけに欲したものではないのか。

「安藤さん、そろそろ収録始まりますよ!安藤U子さん!」
不躾な声が私の思考を阻害する。
パンツを引き上げ、有能ニュースキャスターの顔を作り上げてから、私はトイレを後にした。

この作品について

安藤優子の項目を参照

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