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恒心文庫:ドジョウ遊び

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

啓蟄。
ふと、そんな言葉を想起した。
肛穴からは泥鰌が顔を覗かせ、父唐澤洋は出入りする法悦に身を震わせている。
啓蟄とはこのようなことだったか。
そもそもが、なぜこのような事態が生じているのか。
すべての原因は当職の腹を撫ぜている山本祥平にあった。
彼は当職がこのビルに入居したときから入ったメンバーだった。
所謂「悪いもの」とは彼のようなものを指すのだろう。
彼ははじめて来たときから両手に大きな袋を抱えていた。
当職がそれは何かと尋ねると、取り澄ましたような表情で「精神安定剤だ」と答えた。
彼がそれをくれると言ったので、悪いものたちの攻撃により精神的負傷を負っていた当職は一も二もなく受け取った。
しかしそれが後に仇となる。
それは麻薬だったのだ。
次第に当職は彼の言うことに逆らえなくなり、当職の唯一の恋人も彼に取られてしまった。
当職の恋人は彼の子を孕んだ。しかしすぐに堕ろさせた。
堕胎を強制したのは彼ではない。当職である。当職は悪いものたちがこの惨憺たる現状に気づくのが恐ろしかったのだ。
彼は遊ぶうちに耐性ができてしまったのか、過激なプレイばかりを求めるようになった。
当職の恋人はそれに耐えきれず今は寝たきりになっている。
おもちゃは使い潰すまで遊ぶのがモットーである彼は次に当職の父親を選んだ。
その結果が今である。
啓蟄の意味を思い出した。「父なる穴から細長いうねうねとしたものが出てくる。」
やはりこれは啓蟄であった。
聖ニコラウスの日をご存知だろうか。
当職はこの時、既に身籠もっていた。
しかし誰とも性交をしたことなどなかった。医者の話では腹部を撫でられすぎたため妊娠してしまったのではないかとのことだ。
男の処女受胎などこれほど無意味で滑稽なことはない。男には処女膜がないから処女かどうかなど分かるものではない。
それに授乳はどうするのだ。男に母乳は出せない。それに粉ミルクなど言語道断だ。
しかしこれらの問題が立ちはだかっても猶当職は出産を執り行いたかった。
そこで立ち上がったのが父だった。
父は当職の子供のために母乳を出す決意をした。そして山本くんと父の日課に乳首吸引が加わった。
しかし男が母乳を出すなど並大抵のことではない。父の乳首は日に日に肥大していったが母乳が出る気配などなかった。
出産直前の12月6日。父は動けない当職の代わりに周辺の準備をしてくれた。
そして日課の母乳吸引。すると今まで出てこなかったものが嘘のようにさらさらとした白い液体が流れ出てきた。
白い水は当職の透明な水と混ざりあい運河の様相をなした。当職はその運河の流れに乗って子を生むのだ。
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