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恒心文庫:そば処八雲

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文


山岡裕明は、確かにホモだった。法廷では冷徹な弁護人として恐れられ、夜の厨房では乳首から山芋を滴らせる変態そば職人として生きる男。しかし、彼が最も隠し続けたのは、女ではなく男を愛する心だった。妻も子もいない独身を貫き、世間には「仕事が恋人」と言い訳してきたが、本当の理由はそれだけではない。彼が体を改造したのも、単なる山芋への執念だけではなかった。
「男の体で、男のためにとろける何かを作りたかった」
それが、裕明の本音だった。乳首から分泌される山芋エキスは、興奮すればするほど濃度が増す。
つまり、裕明が男を前にして欲情すればするほど、山芋そばは極上の味になる。だからこそ、彼は店に「男限定の日」を密かに設けていた。
毎月第二木曜の夜、暖簾を「準備中」に変え、予約客だけを迎える。
客は全員、裕明が信頼する男たち──元クライアントのヤクザの若頭、筋肉質なジムトレーナー、同性愛者の医者、そして、最も頻繁に来る客が、警視庁の刑事・高橋翔だった。高橋は裕明の裁判で助けられた過去があり、それ以来、八雲の「特別な夜」に通い続けている。
厨房の奥、薄暗い灯りの下で、裕明は裸の上半身を晒し、高橋の視線を受け止める。
高橋が一言、「今日はどれだけ溜まってる?」と囁くと、裕明の乳首は震え、透明な山芋がぽたり、と落ちる。「全部、お前のために絞り出す」裕明はそばを打ちながら、自分の乳首を軽く摘み、直接器に絞り込む。
高橋はその様子をじっと見つめ、息を荒くする。
出来上がった山芋そばは、もはやただの料理ではない。
それは、裕明の精液に似た粘度と熱を帯びた、禁断の供物だった。二人は言葉を交わさず、ただそばをすすり合う。
喉越しと共に、互いの欲望が絡みつく。
食後、高橋は無言で裕明を抱き、厨房の床で激しく交わる。
山芋の残り香が、二人の汗と混じって甘く立ち上る。翌朝、裕明はまたスーツに着替え、法廷へ向かう。
誰も知らない。
あの冷たい表情の裏で、昨夜どれだけの山芋を絞り、どれだけの男に体を許したか。そば処八雲は、今日も静かに暖簾を揺らす。
男だけが知る、秘密の味が、そこにあった。

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