恒心文庫:おじいちゃん!大好き!
本文
今日は久々に孫の顔を見ることにした。私の娘の息子である。
私が還暦を迎える頃だっただろうか、はっきりとは覚えてはいないがその頃に生まれた孫である。
小さい頃はよく私になつき、おじいちゃんお小遣いを頂戴なとねだってきたものである。まあお小遣いをねだるのは今も変わらないのではあるが。
孫には弟がいたのだが早くになくしてしまった。これには私も強く悲しんだ。
その頃から孫はふさぎがちになったが、今は立派に弁護士をやっていると義理の息子から聞いている。
今日は事務所に行き、孫と語らうつもりである。約束はせずいきなり訪問し、孫を少し驚かせもしたい。
事務所のインターホンを押すが反応がない。はて、業務時間内のはずだが、休憩でもしているのだろうか。
インターホンの前でしばし佇んでいると、一人の長身の男がやってきた。
彼に話を聞くと私の孫の事務所の人間であるという。私は身分を明かし、中に入れてもらうことにした。
事務所のドアを開ける。さて、孫はどんな顔をするのだろうか。私はわくわくしながら足を踏み入れたのだがそこに広がっていたのはあまりにもおぞましい光景であった。
孫は全裸になり、椅子で足を開いている。ちょうど足はMの字の形のように開かれている。
そんな孫の肛門をむさぼるように舐め回す、私の義理の息子。孫はときどき叫び声をあげながら糞を漏らしている。
そしてその糞を、義理の息子は舌で舐め取り満足げな顔をしているのだ。
なるほどこんなことにふけっていればインターホンが聞こえないのも無理からぬことであろう。
二人はまだ私たちに気がついていない。長身の男は死んだ目をしながら自分の机に座り書類をみている。
今まともなのは私とこの長身の男だけであるから一体どういうことなのかと尋ねようと彼の机に近づいたときである。
「おじいちゃんナリ」
息子の無機質な、冷たい声が背後から聞こえた。振り向くまもなく私は孫と息子の二人がかりで床に組み伏せられ、衣服を剥ぎ取られる。
若い頃はこれでも体の頑強さには自身があったが、平均寿命も遥かに越えた年齢ともなるとうまく体が動かせない。
「あれ?うんこ、漏らさないナリね」
そんな声が聞こえたのもつかの間、腹部に強い衝撃が走る。孫が私の腹を強かに殴りつけたのである。
息子はそんな孫をとめるでもなく、私の肛門に口をつけている。
「まだ漏らさないナリ」
そういうと孫は仰向けになった私の腹の上に乗り、飛び跳ね始めた。
ぼきばきと骨の折れる音と強い痛みが私を襲う。肛門には舌をちろちろと這わせている感覚がある。
どうにかこの状況を打開しようとがむしゃらに手を伸ばす。なにか触れるものがある。事務所の入り口脇に置かれているコート掛けであった。
懇親の力を振り絞りそれを孫に向かって振り下ろす。しかし、振り下ろしたはずのコート掛けは途中で止まる。
コート掛けの方に目を向けると、長身の男が無表情でそれを掴んでいた。
「よくやったナリ。あとで当職のうんち食べさせてあげるナリ」
孫はまだ飛び跳ねている。
私の意識は少しずつ、遠くなってゆく。
「出た!出たナリよ!」
孫のはしゃぐ声。肛門の舌先はちろちろという動きをやめ、口全体で吸い付いたことがわかる。
「あ!うんちじゃないナリ!内臓ナリ!飛び出たのは内臓ナリ!」
その言葉が、私の聞いた孫の最後の言葉である。
もう何も考えられない中、唯一私の考えたことは、私は人工肛門だよという孫と息子への助言であった。
(終了)
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- 初出 - デリュケー おじいちゃん!大好き!(魚拓)