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恒心文庫:裸のリャマ

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

艶かしいポーズとやらを取る裕明を絵の題材として小林はカンバスに筆を走らせていた。
業務命令としてヌードの俺をかけと裕明に命じられたのだ。画題としてなんら魅力もない裕明の肖像画を描かせられるのはさぞ苦痛であろうが仕方がない、これは宮廷画家の宿命である。
胸毛を生やし乳首を勃起させ、やたら自己を主張する乳首とは対照的に退化したかの如く小さな陰茎、おまけに体全体のシルエットは弛みつつある。それが40代の裕明の体だ
そんなだらしのない体の中年が枕にもたれかかりポーズをとっている。

散々八雲の面々のあからさまな痴態の数々を
筆致に留めさせられている小林にとってこの程度は朝飯前であった。数日で完成させた後裕明にお披露目した。作品名は
「裸ののマハ」ならぬ「裸のリャマ」である
裕明はこの絵をいたく気に入り、小林に同じ構図で着衣の自分を描かせた。
「着衣のリャマ」である。この二つの絵は八雲法律事務所の応接室に飾られているが少し工夫が凝らされている。
八雲の応接室に滑車式の吊り下げ装置を据え付け「裸のリャマ」の前に「着衣のリャマ」を吊り下げ滑車を操作することによっていつでも二つの絵画を入れ替えられるようにした。

採用のために面接している最中、この絵を入れ替え蠱惑的な表情を浮かべた裕明がシャツのボタンを外し出す、それを見て候補者が欲情し裕明に襲い掛かったら面接は合格である。

安定と引き換えに雇用主の依頼とならばたとえどんな注文だあろうと、どのような用途といえど望まれる絵を描かねばならない宮廷画家と
好きなものを描ける市井の画家、どちらが幸せなのだろうか。それは現代の宮廷画家である小林のみが答えを知っている。

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

リンク

宮廷画家小林シリーズ
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